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コンセプトアーティストAlighiero Boettiの作品を鑑賞する

ある木曜の会社帰り、美術館の営業時間が延長されているのをいいことに、2つの展示を梯子したシマ子。
本当はメインの展示をNoteで紹介しようと思っていたのだが、全くピンとこず、意地になって2つ見た部分もある。

2つ目の方は、特に説明を加える、というタイプではないが、明るくて元気が出る作品が多いので、皆さんの疲労回復の足しになるよう、さらっと載せておこうと思う。

今回のアーティストは、Alighiero Boettiという、割と近年まで生きたイタリア人だ。この展示の裏には銀行がついているため、銀行の特上顧客だった方の遺産を親族から借り出し、展示したという流れでは、と推測する。

Alighiero Fabrizio Boetti (16/12/1940 Torino – 24/04/1994 Roma)
イタリアの芸術家。最も有名な作品は、彼が考案したフレーズやモットーがグリッドに分割されて挿入されている様々な形式のタペストリーである。

「コンセプトアーティスト」の展示とはいえ、ただただ、この特上顧客さんの私物の一部が展示されているだけなので、展示自体には「コンセプト」はないようだ😂
それゆえ早速、作品案内へ移ろう。

まずは「DA UNO A DIECI(1から10) 1980年」という作品から行こう。
作品には、10本の指と、イタリア語の1から10までが描かれている。

1=UNO
2=DUE
3=TRE
4=QUATTRO
5=CINQUE
6=SEI
7=SETTE
8=OTTO
9=NOVE
10=DIECI
単語が話せるようになった子供に見せるとよさそうな作品ですよね。

次に、「I VEDENTI(有視者) 1972-73年」へ移ろう。
こちらは合計で4点あったのだが、I VEDENTIの文字の刺繍糸の色が若干異なる以外は、大きな差異はなかったので、1点、ライトが当たっているものを撮影した。

全景
文字のみ、近景
無題
「AIIEOOEI LGHRBTT 1975年」
 文字には、正直意味があるのかはわかりません。
筆というか刷毛の動きが、近くから見るとそれぞれ異なり、興味深いです。
「PACK 1979年」
近景
よく見ると全て刺繍で、人型や動物型が隠されていて面白い。
こんなのが会社のトイレにあったら、じっと眺めてしまってなかなか出られず、「あれっ、あの人、さぼってるんじゃない?」とか「居眠りしてるんじゃない?」と思われそうなので、会社にはない方が良いですね😆
自分の姓名をぐるりと一周刺繍しているわけですね
左右とも「IL SILENZIO E' D'ORO(沈黙は金) 1987-88年」

説明はなかったけれど、「IL SILENZIO E' D'ORO」は、19世紀イギリスの歴史家・評論家のThomas Carlyleの諺"Speech is silver, silence is golden"から取られているものと思う。
「あれこれ弁解するより、時には黙っていたほうが良いこともある」という意味合いのフレーズの、"黙っていた方がいいこともある"だけを抽出して2年に渡り2つ(以上)の作品を制作したところを考えると、恐らくこの時期、アーティストの人生には何かそう思わせる出来事があったのだろうな、と想像するが、もしかしたら、黙りきれずに溢れてくる部分を、この色で暗喩として表現しているのかなぁ、だとしたらきっと、辛かっただろうなぁ、といらぬ憶測までしてしまった。

それほどまでに静かな、私以外には誰もいない、夜の展示室だった。


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