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Kōki出演のアイスランド映画「Snerting(英: Touch)」を鑑賞する

日本からミラノに戻ってきて、8末に3本の映画を映画館で観た。
機内でも何本か映画を観たが、去年公開されて見逃していたFrançois Civil主演の「Les Trois Mousquetaires: D'Artagnan(三銃士)」を除いては、これといって印象に残る作品がなく、早く映画館の大画面でじっくりと映画が見たいなぁ、という思いが膨らみ、公開されるごとに続けざまに見る日々(そこまでではないか…😅)を送っていた。

今回感想を書こうと思った「Snerting(英: Touch)」は2本目に観た作品で、アイスランド映画だが、主演のEgill Ólafsson演じるKristóferの若かりし頃の恋人役をKōkiが演じた作品だ。日本ではまだ公開されていないようなので、今後、日本で公開されれば、いつぞやの時のように「すき」が満載になるのでは、といういやらしい計算をしつつ😂、1本目に観た是枝監督の「怪物」を差し置いて触れてみたわけだ。

ポスター「Touch(2024年)」

まず、あらすじの簡単な意訳を付けよう。
但し、ネタバレを避けるため、Kristóferの渡日からの情報は割愛した。

1960年代後半、LSEに通うアイスランド人の青年Kristóferは学校の運営側と対立していた。中退すると言って大学の友人たちに馬鹿にされ、衝動的に本木雅弘演じる高橋シェフが経営する日本料理店「Nippon」の皿洗いに応募し、そこでKōki演じるシェフの娘ミコと出会い恋に落ちる。

彼は日本語を学び、Nipponで懸命に働き、高橋からの信頼を得る。高橋は彼をシェフとして育て、練習のために早出することを認める。彼の料理を食べるのはミコで、料理を食べに行くうちに二人の距離は縮まり、秘密の交際を始める。彼女は彼に自分の家族が広島出身であり、母親が原爆投下時にミコを身ごもっていたことを打ち明ける。「被爆者」としての差別に直面し、二人はイギリスに渡ったのだ。

休暇から戻ったKristóferは、レストランが閉店し、高橋親子が無言で去ったのを知りショックを受ける。

50年後、Kristóferはアイスランドで男やもめになっていた。彼の記憶力は衰えつつあり、主治医は時間と余力があるうちにやり残したことを片付けるべきだと勧める。彼はレストランを閉め、世界のコロナ禍にミコを探す旅に出る。コロナ規制の真っ只中のロンドンに到着した彼は、当時Nipponで一緒に働いていたヒトミの居場所を見つけ、高橋が他界したことを告げるミコからの唯一の手紙から、彼女の現住所を知る。

そして・・・

Wikipediaより抜粋・意訳

全編で、過去のフラッシュバックが現在を挟む非線形の物語で描かれているため、この手のつくりを好まない方にはお勧めはできないが、まだ粗削りで物足りなさを感じさせるKōkiの演技を除いては、日本でKristóferが出会い仲良くなるクタラギさんを演じる中村雅俊の味わい深い演技や、奈良橋陽子演ずる50年後のミコも、個人的には良かったなぁ、という印象がある。
ただ、この味気ないKōkiの演技では、勿論、年齢やきちんとした家庭に育ったという経緯も影響しているとは思うが、ラブシーンにも経験値を含めることができず、それがかえって非常に初々しく、ぎこちなくて、若かりし頃のKristóferを演じる、監督の息子の美青年Palmi Kormakurの爽やかさと絶妙にマッチしており、結構な分数のシーンがあったにもかかわらず、いやらしさの全くない仕上がりになっていた。

物事にはいつでも、メリットとデメリットはあるものなのだ。

ダンスもやっていたであろうから、欲を言えば、もう少し指先の色っぽい演技をお願いしたかったなぁ、というのと、父親似の眼差しにもう少し粘り気を付けてほしかったなぁ、というのはあるかもしれない。

いずれにせよ、Kristóferが作っていた和食は、日本の旅館の朝食で出てくるそれに遜色ない見た目だったし、本木雅弘の厳しいオヤジの演技も魅力的だったし、何より、アイスランド映画で「被爆」という題材を取り上げてくれた(そしてイタリアでの公開が8月だということも)ことに、いまだに終わらない世界の2つの戦争への想いや、忘れてはいけない事実、決して繰り返してはいけない過去がもたらした負の遺産について、優しみと憂いと少しのコミカルさを加えながら描くことで、世界の人々が一丸となってこれからも心に留めるように、という願いを込めて作られた作品なのかな、と思わされた。

Kōkiの演技はさておき、この作品を多くの国で上映してもらえたら、世界はもう少し、戦争がもたらすものについて、平和であることついて、真剣に考えるようになるかもしれない。

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