覇権争う米中 外交の武器は何か

 米国と中国は自陣営に引っ張りこうと各国に接近を図っている。ただし覇権をめざす米中のやり方は同じではない。3月2日の日本ジャーナリスト会議(JCJ)と日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会が共催したオンライン講演で慶応大・京都大学名誉教授の大西広氏は、両国の外交の違いを解説した。
「米国にはグローバルサウス(インド、ブラジル、タイ、南アフリカのような南半球に位置するアジア、アフリカ、中南米地域の新興国・途上国の総称)に手を突っ込みコントロールする力はもはやありません」と前置きしうえで大西氏はこう語った。
 「米国は軍事的な関係を深めることで親米圏を拡大しようとしています。狙いは2カ所。ひとつはロシアがウクライナに侵攻したことによるEUの軍拡です」。
 その象徴的な組織が米英主導のNATO(北大西洋条約機構)だ。ロシアに脅威を感じたフィランドとスウェーデンはNATOに新加盟した。加盟国は32に増えた。フィランドとスウェーデンは軍事費をNATOが目標とする国内総生産(GDP)比2%に増額、米国の戦術核を国内に配備し共同運用する核共有も実施する。
 もう1カ所はアジア太平洋地域で、台湾がその拠点となる。中国と対峙する民進党政権に「独立は支持しない」と釘を刺さすバイデン大統領だが、一方で中台戦争の危機を煽り、台湾への軍事支援の増強に走る。日本もその尻馬に乗る。経済では親中の韓国も安全保障の面で親米にならざるを得ない難しい立場に立つ。
中国進出を阻止するため米国は日韓台と軍事的に強い基盤を構築しつつある。
 片や中国の覇権は習近平国家主席が2013年に提唱した世界各国を巻き込む広域経済圏構想「一帯一路」の推進だ。「ロシアやグローバルサウスを含む諸外国への経済援助によって親中圏の勢力を広げようとしている。そういう意味では米国より平和的なやり方ではないかと思います」(大西氏)。
 米国は軍事戦略、中国は経済戦略を主武器に覇権を争っている。米中による新冷戦は加速中だ。

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