おがた

自分用の感想備忘録

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最近の記事

猿若祭二月大歌舞伎 昼の部 籠釣瓶花街酔醒

初日に幕見。あまりにも良かった。まず、勘九郎の声があまりにも勘三郎で、父の大ファンだった息子が姿を追うところを見てしまって、それだけで涙が出た。 だけど、単純に父を追うのではなく、彼の形になっていたところがさらに泣けた。容貌が悪くても腐らず真面目で勤勉で優しいが故に人に好かれ、だけれども、真面目で優しいからこそ色男の強烈な魅力に勝つことのできない男。その性質故に一人で静かに傷つき、それでも周りに気を遣い、歪み、妖刀の力に後押しされる形で狂っていく様がなんとも良かった。そして、

    • 壽 初春大歌舞伎夜の部 歌舞伎座感想

      右近が大当たり!京鹿子娘道成寺になった途端めちゃくちゃ客も大向こうも入ったのも納得だよ! 世阿弥の花を考える。今回見たものは、20代後半から30代にかけての年代でしか出せない、ナルシスティックで挑戦的で強引な踊りだった。だけど自信に実力が伴っててすべってない。それら両輪がうまく噛み合ってる勢いのある踊りだった。客も喜んで、踊り手も乗って、でも客のペースに乗せられず、ぐいっと引っ張って客を振り回す踊り。 40以上になると体力というより気持ち的に無理だろう。ある程度自分の力を盲信

      • 外地の三人姉妹 KAAT感想

        なにしろ本がいい。翻案以外での改変もしっくりきたものが多かった。例えば、チェブトゥイキンの3人姉妹の母に対する愛情の削除。ではなぜあの男は3人姉妹の家に今だに居続けるのか?が疑問として浮かぶんだけど、お父さんが好きだった?とか邪推をしてしまう。すると、3人姉妹ではなくアンドレイに向ける視線も意味深なものに思えてくるんだよな。朝鮮人は怖いぞ、と言いつつ最後に朝鮮人の下女に手を出すところとか、自分への抑圧や仕事で受けたストレスの吐け口として、気に入らない(けど自分よりも立場が弱い

        • 中村京蔵 爽涼の会『フェードル』

          2023/08/20 国立劇場 小劇場 夜の部観劇 よ、よかった〜〜〜〜〜〜〜!!! そもそもフェードル自体が好きだけど、それにしても良かった。 やっぱり歌舞伎って現代と隔たった場所にある大きな物語を語る時の形式が確立されてるから、今回みたいな作品をやっても違和感がないというかしっかりくるんだよな。もちろん歌舞伎ではないし、どちらかというとこれはニナガワ演出の延長線上にある作品だと思ったけど、ビジュアルにしろ女形というシステムにしろ様式を借りることで現代劇でありながら歌舞

        猿若祭二月大歌舞伎 昼の部 籠釣瓶花街酔醒

          川上未映子『黄色い家』感想

          3日くらいでどーっと読んでしまった。 ぐんぐん読み進めさせる力がすごい。厚めの本なのに「まだこの辺か」って疲れない。 Twitterの感想でも帯でも書いてあったけど、一気読みさせる本なんだな。出来事が面白いんだろうか。社会の闇ってみんな覗いてみたくなるけどそんな感じ?って思ったが、東村山での生活とかれもんの頃はそうでもないしな。疾走感? 東村山での黄美子さんとの生活を描いた二章の魅力は生まれた環境に対する鬱屈感とそれを吹き飛ばすような、視界が開ける感じ。 でも、トロスケにお金

          川上未映子『黄色い家』感想