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齢五十にして農業は化学、自然農法は哲学と知る

プランターでプチトマトを育てた経験値で、4反の田んぼの主となったおかもとです。簡単に経歴を申し上げると、コロナ離婚して横浜から長野の田舎に猫9匹と移住し、泊まれる猫カフェ「クラシコ」を開業。大量購入大量消費をする為に働き続ける都会生活から、稼がない代わりに使わない、ミニマムなライフスタイルへ180度転換。プチ自給自足街道へのろのろ歩み始めたところです。

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50も過ぎれば人生3分の2以上が終わったと思っていて、「あと3分の1ならどうにでもなんじゃね?」という更年期女性にありがちな制御不能な感情と行動で自分でも予想しなかった現況に至っておりますが、お陰様で人生史上、今が一番幸せと言っても過言ではない位、日々楽しく過ごしています。とは言え、老化現象は噂に聞いていたより著しく、特に体力と知能の低下は想定の範囲を軽く3倍超え。足掻いても嘆いても仕方ないので、最近は「受け入れる」に落ち着きましたけどね。多分、もうすぐ「忘れる」に移行し、そのうち「何も覚えてない」で終結すると思います。

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そんな熟年独身女性が初めての農業、しかも自然農法で作農を始めたのが昨年末。目の前に広がる田んぼをどうしたら良いのか分からず、YouTubeで一から学び始めました。そして初めて農業が化学である事を知る訳です。いやだって、農業って土を掘って苗植えて、育ったら収穫する肉体労働だと思うじゃないですか? ところが、「田んぼを畑にする」→「土づくり」→「土壌改良」とか調べていくと、「団粒構造」とか聞きなれない言葉が出てくる。土の中の菌の話になると30年以上前に見かけた化学式なるものが出てきて驚く。私は最初から自然農法と決めていましたが、一般的な化学肥料を使う農業にしても、リンや窒素など、基本的な事はやはり化学。学生にありがちな「こんなの覚えて何になるんだ」が、長い人生いつ役に立つか分からないので、老婆心ながら学生の皆さんは取り合えず勉強しといた方がいいと思うよ。

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そして更にYouTubeでの検索と動画での勉強は深みを増し、いよいよ「自然農法」へと入っていくのですが、これはもう「作物をどう育てるか」という枠を超えて「どう生きるか」みたいな哲学になってくるんですね。前の記事にも少し書きましたけど、「畑という小さな世界で全てを循環させる」のが自然農法の基本。収穫物を食べて生きる人間も、当然その循環の中にいる訳です。そう考えた時、人間にとって本当に必要な物、余分な物は何なのか、とか。雑草の宿根を見ては、「これは人間社会と同じ。1本づつ別々に生えてはいても根っこの部分では全て繋がっている」とか。季節ごとに繰り返す植物や自然の営みを見て、「人間は先ばかりを見て今を生きていないのではないか?」とか。何かもう野菜の育て方よりお坊さんの説教みたいなところが多いのです。まぁ、それはそれでいいんですけど。

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そして、自然農法は確固とした決まりがある訳ではないので人によって解釈が様々な部分があるようです。例えば、畑に石油製品を持ち込まないというのもその一つ。実際、黒マルチ(ビニールシート)やマイカー線(紐)など、畑で使うプラスチック製品は多いのですが、直接野菜に影響がある訳ではないので、こうした石油製品を使う人もいれば、黒マルチの代わりに草マルチ、マイカー線の代わりに麻紐と、土に落ちてもいつかは自然に帰る天然製品しか使わない人もいます。また、肥料は自然農法で「補い」と呼ばれ、これも畑の中で循環させる物なので、外から持ち込んだ物ではなく、畑に生えた雑草や残渣(収穫した後の野菜くず)が基本なのですが、田んぼもやっている人であればもみ殻や糠も使います。同じ流れで、養鶏をやっている人であれば鶏糞を使い、薪ストーブのある人は灰を撒く。つまり、「外から」というのが厳密に畑なのか、自分の敷地なのか、或いは自分の生活範囲なのかという解釈が曖昧だったりします。

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そんな話を踏まえ、自然農法1年目の私がどうしているかと言うと、石油製品は使っています。何故なら、草マルチにしたくても圧倒的に草が足りないから黒マルチを使うしかないのです。そして、糠は最初の土づくりをする上で精米所から貰ってきて撒きました。同じく、土づくりをする為に必要な落ち葉は近くの山から搔き集めてきました。5月になって雑草が勢いよく伸び始め、誰もが草刈りに辟易する時期ですが、私は雑草が伸びるのを心待ちにしては、刈り取ってせっせと畑に運び、黒マルチを排除しています。野菜に影響がなかったとしても、私もやはり心情的に石油製品は畑に入れなくないと感じるので。

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そんなこんなの素人による自然農法初年度。土にどれ程の栄養があるのか、どれ程の野菜ができるのか、全くの未知数です。トラクターで土を起こし、肥料や除草剤を撒いて野菜を作る農家さんからは、肥料も与えず、雑草を生やし、枯草を畑に撒く私は奇異に映っている事と存じますが、肥料の味ではない本来の味がする美味しい野菜を作ってちょっとだけ驚かせてやりたいと思いながら、過去でも未来でもなく、今ここにいる自分を心の底から楽しんでいます。

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