牛田智大さん×飯森範親先生音楽フカボリ【第1回】6/4

パシフィックフィルハーモニア東京 第5回練馬定期演奏会の終演後に開催された「飯森範親の音楽フカボリ!!」。
飯森先生のTwitter SPACEにて牛田智大さんを迎え開催。録音が録れておらずアーカイブが残せないということでしたが、アーカイブが残るとは思っていなかったので、お話を聴きながら取ったメモを元に、お話をまとめました。


コンサートの振り返り

飯森先生:モーツァルト/フィガロの結婚  序曲
「このホールはほどほどの残響があって、よかったと思います」

牛田さん:ショパン/ピアノコンチェルト第1番
「今回は、エキエル版をオーケストラで採用したので、普段はなかなか聴けない、新鮮で特別な響きを楽しんでもらえたと思います。柔軟性を持ちながら、重厚感もある演奏になったと思います」

飯森先生:エルガー/威風堂々
「どこのオケも上手に演奏するので、やりがいのある作品」。(英国の第2の国歌とも呼ばれているエピソードについても言及していらっしゃいました)

飯森先生:ビゼー/アルルの女
「南仏を彷彿とさせる躍動感のある曲」

牛田さんとショパンの関係性について

(飯森先生からの質問)
牛田さん:人生で初めて勉強したのがショパンのコンチェルト第2番。その次に、ショパンのコンチェルト第1番を勉強。技術的なことも含め、アンサンブルを最初に経験したのがショパンだったので、音楽的なアイデンティティの原点ですね。

影響・刺激を受けたピアニストについて

飯森先生:ランランとも共演しているが、彼はダイナミックな演奏で牛田さんとは両対局にある。ショパンは若いときからあまり健康体ではなかったので、ショパンには、ど迫力の演奏は合わない。薄いガラスのような、指で触れたら壊れてしまいそうな繊細な演奏をするのが牛田さん。それが凄く好きです。

牛田さん:ショパンのコンチェルトはピアニストにとっての試金石といえる作品。敢えて挙げるとしたら・・・ショパン的な解釈からは逸脱しているかも知れませんが、グレゴリー・ソコロフ(ロシアのピアニストです)。
ショパンは、様々なピアニストが弾いていく中で慣習ができてしまう。そうしたものを全て取っ払って真っ新な状態で楽譜を見たときに、「こういう風にも読めるんだ!」という発見があって、面白かったですね。
有名な曲ほど、悪く言えば、演奏家によって歪められていくと言いますか、それはスイートスポットが定められていくとも言えるかも知れませんが、そうしたものを壊していくのが面白い。


何度も共演している2人のエピソードについて

飯森先生:最初に共演したのは、牛田さんが子どもの頃(13歳のときにチャイコフスキーのコンチェルト第1番を演奏)。当時から比べて、音楽がどんどん成熟している。共演する度に、スケールが大きくなったなと思います。

牛田さん:初共演の際は未熟者だったので、飯森先生にとても助けていただきました。飯森先生が、「今から数年間はレパートリーを増やす時期だね」など度々アドバイスをくださるので、そうしたちょっとした一言がその先の指針になっていますね。


ショパンのピアノコンチェルト第1番で一番好きな楽章について

牛田さん:2楽章の中間部、短調に変わるところ。弦楽器との絡みが天才的。(飯森先生も同意見でした)
ショパンのコンチェルトは、ショパンが不安定な時期の作品というイメージを持っていて、若さ特有の執拗に装飾のフレーズを入れるなど、くどく書いているところがあるので、若さゆえの混沌を出せたらいいかなと思っています。

飯森先生:2楽章の最後、段々あたたかくなってくる温度感を感じて、「あったかいなあ」と思いますね。


笑える失敗談について

牛田さん:(牛田さんは忘れものが多いという話を受けて)一番大きな忘れものは、衣装のズボンを忘れたことです(富山にて)。当時は15歳くらいだったので、女性マネージャーのスーツのズボンを借りてステージに出たことがあります(笑)。履いてみたら、サイズがピッタリだったという・・・

飯森先生:東日本大震災のときに東京に戻れなくなり(震災発生当時は金沢にいらしたそうです)、服がなくて、井上道義先生にタキシードを借りたことがあります。忘れ物は結構ありますよ、ワイシャツや蝶ネクタイがない、など(笑)


聴音のコツを教えてください

飯森先生:聴音に苦労したことがないので、(聴音が)できない人にとってのアドバイスがよく分からないです・・・(笑)。子どもの頃に、母親が面白がって音感教育をしていたのが関係しているのかな。だから、苦ではない。嫌なヤツだよね・・・(笑)



音楽的なお話から愉快なお話まで、多岐に亘るテーマでの対談でした。
大筋だけをまとめましたが、参考になれば幸いです。

飯森先生 Twitter @iimoriconductor
牛田さん Twitter @TomoharuUshida







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