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note「CIZEN design」はじめます。

ごあいさつ。

はじめまして。札幌に本社をおく、デザイン会社・株式会社自然農園の常務取締役の村瀬です。デザイン部門の統括、事業推進の責任者をしています。自らもデザイナー・ディレクターとして実務に関わることもあります。
自然農園は1983年創業。2023年に40期目を迎えました。
企画から制作、イベント運営まで、札幌と東京の2拠点で企業のデザイン活動を幅広くお手伝いしています。
 
長く培ってきたマーケティングデザイン領域に加え、昨年からもうひとつの事業の柱・広報事業部を立ち上げました。このnoteでは新たな領域に向かう自然農園の試行錯誤やリアルな悩みなどもご紹介していこうと思います。
よろしくお願いいたします。


なぜ今、noteなのか。

日頃から社員のみなさんとの対話をたいせつにしようと心がけていますが、それでも、言葉は発した瞬間に過去のできごとになっていきます。全員と
十分なコミュニケーションの時間を取れているかというと...まったく足りていないと言わざるを得ません。
村瀬が立ち上げた新規事業って、今の広告制作とどう違うの? この頃、会社がなにをめざしているのかわからない。そんなふうに感じる人がいて、当然なのです。
みなさん一人ひとりにじっくり語りかける機会がほしい、と悩みながらも、時間ばかりが過ぎてきましたが、それならまずはnoteで想いを伝えてみてはどうだろう、という考えに至りました。
イキイキとした自然農園や、村瀬の頭のなかをお伝えする場づくりとして、このnoteを社員の方々に届けたい。そんな強い気持ちで、このごあいさつ文を書いています。
 
通勤時間に。ランチや仕事の合間に。時々思い出しては、眺めてください。そのたびに、きっとなにかを受けとって、またひとつ想いがつながるはず。そう信じています。
この場がすくすくと育ち、外の方とのご縁もつながるようになったとき、noteでこんなこと言ってたね、から始まる会話が生まれたとしたら、とてもうれしいです!
 
デザインに希望が持てたり、デザインがますます好きになるようなきっかけがつくれたり。なによりわたしたちが、デザイナーになってよかった!と、心から思えるような場に育っていくことを、願っています。

デザイン業界、これからどうする?からの、あくなき妄想。

昨今のデザイン業界ではAI、DXが加速する環境で人々の生活様式がくるくると変わっています。そして広告市場は、ますます厳しい状況です。
 
今期で40期を迎える自然農園ですが、最近までマーケティング領域の広告デザインを中心に、活動を推進してきました。紙媒体からweb、デジタル広告へのシフトは大きな変革でしたが、すでにコモディティ化が見られますね。デザインはいつの時代でも社会において重要な役割を担いますが、AIの自律が加速する世の中で、人は、人がつくるデザインに何を求めるようになるのでしょう?
 
これはわたしたち人間デザイナーにとって、ちょっとホラーな話題なのかもしれません。でも同時に、人間らしさってなんだろう、という探究でもあるのですね。また、40周年の節目として「新たな時代に合わせて、自然農園のデザインを再定義しよう!」という試みも今ならばできそうです。ちょっとわくわくしませんか? そんなことを一人で妄想していたら、新たな自然農園のはじまりを予感するできごとがあったのです。そのときのことを、すこしお話ししたいと思います。

気づきのきっかけは、大学でのデザイン講義。

今後のデザイン、自然農園の未来をどう描けばいいか、妄想をふくらませていた頃、地域の大学からキャリアデザイン授業の講師をしてください、とのご依頼がありました。現場のデザイナーとして、学生の方々に、デザインについてお伝えする場をいただくことになったのです。学生のみなさんに、厳しさを増す広告デザイン業界やその未来をどうお話しするべきか。
悩みながら、講義の資料づくりに取りかかりました。
 
大勢の人に話す、しかもデザインを学ぶ方々に向けた授業の一コマとして、今のデザインを伝えるための言葉や考えを整理することは、自身のデザインへの考えを見つめ直す、有意義な時間となりました。
 
わたしの信条の一つに「できるだけ難しくしない」ということがあります。壇上に立つ自分を想像するにつけ、何やらカッコよさげなデザインをネタに業界用語で難しく語るのは、ぜったいにやめときたい。
「新たな時代に合わせて、自然農園のデザインを再定義しよう!」
その答えを求める旅のプロセスは、ここからはじまったのです。

東海大学様でのキャリアデザイン講義(2022/1020)

「課題解決」への違和感。

課題解決って、ずいぶん上から目線だと思いません?
わたしたちは、これで完了!とばかりにデザインをお渡ししますが、企業が抱える課題は、ほんとうに解決できているんでしょうか。その課題はクリアできても他の課題が浮上したり、別の角度から見ると前の方がよかった?!なんてこともあったりしませんか? もっと根っこの部分に深い問題が潜んでいることだってあります。
解決という言葉に、わたしたちを頼ってくれたたいせつな人を、置き去りにするような冷たさを感じるのです。デザインって、そんなものでしたっけ?
 
確かにデザインは課題に向き合い、解決をめざすものです。ただ、ほんとうに解決できた?との問いを、どこまで持ち続けることができるのか。そこにデザインの本質があると思うのです。
デザインは、おそらく「解決」ではなく、「改良」です。つまり、ちょっとよくするプロセスなんです。前よりずっといいね!と喜んでいただけるし、きっと使うのが楽しくなる。でも今後もっとよくなる可能性も秘めている。それでいいのです。
そう思えたとき、学生に向けてデザインのすばらしさを自信をもってお伝えできる!と確信することができました。

デザインは「つなげる」「うごかす」「よくする」こと。

「つなげる」
人と人、あるいは人とモノ、人とコト。それをつなぐのが、デザインです。心地よくつながったり、気づいたらつながっていたり、つながりたい!と、思ってもらえることをめざすのも、デザインです。
 
「うごかす」
つないだところをよく「うごかす」ことも、デザインにできることです。
よくうごくとわかれば人は集まってきます。よくうごくのは、丈夫で安全な証拠です。心もつながってうごくから、宣伝しなくても広がります。するとステキなコミュニティが生まれます。
 
「よくする」
よくつながって、よくうごくことで、人の暮らしはよくなります。なかなか解決できない課題があっても、全体がすこしよくなれば、課題もすこしよくなります。よくなった部分が、気になる課題を補ってくれるかも!
たとえ解決できなくても、克服する方法や折り合う位置の模索も、デザインにできることなのです。
 
このシンプルな3つの言葉に、デザイナーとしての意志を、
力いっぱい込めました。
 


自然農園のデザインの再定義「つなぐ」「うごかす」「よくする」は、まだ社員の誰にも話していないうちに、自信をもって、最初に学生のみなさんに伝えてしまいました。
「デザインとはコミュニケーションそのものです。つないで、うごかして、よくするプロセスそのものです。これが、自然農園が考えるデザインです。そして本日のこの授業も、わたしがデザインしてみなさんにお渡しした、
コミュニケーションの場と時間のかたちです。みなさんの心はよくうごいてくれたでしょうか」
 
後日、受講後の学生のレポートでは、たくさんのアツいコメントをいただきました。
自然農園の制作部門統括としては完全なフライングでしたが、以降、役員の理解も得られ、社員の方々にときに熱く語ったり、じんわりと伝わるよう、さりげなく日々の言葉に織り込んでみたり、さまざまかたちで浸透させようとしています。
 
学生のみなさん、そして自然農園の社員の中には、「デザインって課題解決じゃなかったのか...」とがっかりされる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、デザインには限界を知る辛さもあります。デザインを仕事にすると思い悩むことも多いのです。しかし過去を振り返ると、技術革新という希望があることに気づきます。新しい技術を大いに歓迎してきたデザインの未来を楽しみにし、あたたかく人間くさい問いのまなざしを持ち続けること。
これは、人間のデザイナーにしかできないことだと、わたしは思っています。