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現役時代×退職後 第8回 ■私の身近で起きている少子・高齢化の影響     

先進諸国において少子・高齢化及び人口減少が進行中である。我が国においても状況は全く同様、或いは先陣を切っており、それに伴って様々な社会的問題が発生している。ここ最近、私の身近で起こっており、感じていることを書きたいと思う。

定年退職後も社会に出て活躍し続けるためには、自分自身が大病せず元気でいることが第一条件である。但しそれだけではない。家族、親戚もまた元気であることが重要である。冒頭に少子・高齢化と記載したが、日本の合計特殊出生率は1.36[1]であり、いわゆる一人っ子家庭が増えてきた。生涯未婚率についても、男性のおよそ23.4%(4~5人あたり1人)、女性のおよそ14.1%(6~7人あたり1人)が「未婚」ということである[2]
一人っ子家庭が多く、核家族化が進んでいる社会では、一人の子が両親を介護することが必要となってくる。当然のことながら、誰しも父親と母親がいて、みな平等に歳をとる。何時しか介護に関わるときが来ると思われ、介護に関わらない人の方が少なくなると考えられる。さらに独身の親戚がいれば、通院や介護の面倒はどうするのだろうか。入院するにも保証人が必要、手術するにも基本的には親戚の立ち会いが必要である。そのため、生涯独身を貫こうとしても、親戚・家族がいないと何かと不便なことも多い。

介護業界では2040年問題が発生するといわれている。2040年問題とは、第二次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア世代」が65~70歳を迎え、2025年問題よりもさらに高齢化が進むことで起こる問題のことである。2040年には、高齢者1人を1.5人の現役世代が支えなければならないと指摘されている。私の働いている職場でも介護休暇もしくは介護を理由とした年休を取得している職員が増えてきている(私のいる部署で1割程度)。今後も増え続けるだろうと予測される。いわゆるビジネスケアラー問題である。介護休暇を取得している職員はテレワークを駆使しつつ、働く時間と介護の時間を分単位で管理して、周りの職員のサポートも受けつつ何とかこなしている。プロジェクトや納期がある仕事において、周りの職員のサポートは不可欠である。一方で、サポートしている職員もまたビジネスケアラー予備軍かもしれない。

経済産業省は、2023年3月に働きながら家族を介護する「ビジネスケアラー」の増加による経済損失額が2030年に約9兆円余りにのぼるとする試算[3]を出した。この主な内訳は、仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額、介護離職による労働損失額、介護離職による育成費用損失額、介護離職による代替人員採用に係るコストとなっている。
あまり実感がわかないかもしれないが、私の部署で言えば、ビジネスケアラーとなっている方に対して多くのエフォートを割けないので、日頃の人手不足に拍車がかかり、必然的に部署として外からの仕事をお断りすることが出てきている。

このような事態を打破する方法について、私にはアイディアがまだない。ただ、身近に感じる問題として、人手不足から仕事を一人に任せていることはないだろうか。今後仕事を一人のみに担当させるのは、職員の負担も大きくビジネスケアラーにとっては、仕事と介護の両立においてプレッシャーが大きくなると感じる。幸いなことに私の職場では、ある程度の持ちつ持たれつで互いがサポートし合う体制が構築されつつある。この波及が有給休暇の取得に繋がっている。当然、介護休暇を取得する職員は他の職員にその日の仕事の対応をお願いするわけであるが、これが逆にお願いされた側が今度は有給休暇の取得の際に仕事をお願いするという持ちつ持たれつの関係が構築されつつある。
しかし、まだできない問題もある。例えば決裁については、その人しかできない。決裁権をもつ人を複数配置し、情報共有を図りながら進めることが重要なのではないだろうか。また自然に担当が決まってしまっている仕事について、仕事を早く処理することに集中し、他の人に教えるという時間が十分にとれない、などの問題はまだ存在している。

介護の問題は、現役世代の働き手にまで影響が及んできている。私自身はいくつかの学会活動や委員会活動に携わっているが、殆どがボランティア組織としての学会となっている。学会は関連分野の効率的な情報収集や人脈形成、問題意識の共有や情報発信など重要な役割を担っている。しかし、多くの人が本業を担っている中でボランティア活動を行っている。今後、自身に本業、介護、ボランティアの選択を迫られた場合にどうするのだろうか。今後の学会活動のあり方も問われてくると思われる。

夢の無いことを書いたが、日本の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳、健康寿命[4]は男性72.68歳、女性75.38歳で[5]と年々伸び続けている。平均寿命と健康寿命の差は不健康な期間と定義されており、その差も縮小傾向にある。健康寿命延伸のためには、「たばこは吸わない」「節酒」「バランスのよい食事」など当たり前のことも書かれているが、「日頃から活発な身体活動を心がける」「社会関係を保つ」ということも提言に盛り込まれている[6]。健康寿命延伸のためにも、定年退職後もなるべく元気に過ごしてもらい、何かしら社会と関わっていくことが現役世代をサポートすることにつながるのではないだろか。
                      2023.3.29 執筆:TARO

[1] 令和2年版厚生労働白書より
[2] 国立社会保障 人口問題研究所/2021年度版「50歳時の未婚割合」より
[3] 経済産業省経済産業政策局:第13回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 資料3:新しい健康社会の実現、https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/013_03_00.pdf(2023年3月17日閲覧)
[4] 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
[5] 厚生労働省e-ヘルスネット:平均寿命と健康寿命、https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.html(2023/03/17閲覧)
[6] 厚生労働省e-ヘルスネット:疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)、https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-005.html(2023/03/17閲覧)

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