夜な夜な酒場#2 「ジャガナスのラザニア」
蝉の鳴き声が、街のセミゼミまで、ごほん、隅々まで響き渡る、ジリジリと肌が焼けていく夏もそろそろさよならバイバイ、ここはマサラタウンですか?いやいや、今更ダウンですか。季節の変わり目ですね。
夏休みはやっぱり短いだなんてどこぞの赤と緑のモンスターが歌ったり、アバンチュールな夏の恋に、あら、ナニ!あなたのナニ何!?やっぱり短いわねだなんてどこぞのこんがり焼けたビキニさんに言われたり、
恋焦がれ、汗を拭うが、涙かな。
チュールチュールチャンチュール!
アバンチュールにチャンチュール!
いいんですよ、なんだっていいんです、夏が過ぎれば秋が来て、冬がきます。
春は曙、夏は舞の海、秋にも冬にもどすこいどすこい、まわしまわして、49手目でもみんなで考えましょうではありませんか。
人間というものはわがままなもので、暑い暑いと言っているかと思えば寒い寒いと、結局人肌が恋しくなり、一人では生きていけないのだと実感するのです。知りませんが。何を言ってるんですかわたしは。
わたしは、わがままなのです。
ありのままでいいのです。
レディーゴッサム!!!!!!
雪の女王が存在するのなら、太陽の王様が存在するのなら、
レディーゴッサム!!!!!!
わたしは今、文章を打ちながら自分自身、頭がどんどん悪くなっている気がします。いや、元からなのか。
本日のオススメは自家製ミートソースのジャガイモとナスのラザニアです。
夜な夜な酒場#2 「ジャガナスのラザニア」
いつものようにギラギラガールズを通り過ぎて路地裏に入る。
狭い階段を登ると歌舞伎町にいることを忘れてしまう様なこじんまりとした空間が広がる。
歌舞伎町のオアシスになりたい。息詰まっても楽しい時でも仲間とでもふらっと入れるようなお店にしたい。
そんなことをたまに真剣に考えたりしながら、たまにね、真面目ね。
さて、仕込みしますか。
今日は豚バラが余るほどたくさんあるから、つまり、前日発注をミスったということで、それはそれは店長呼んでこいとなるわけで、何を隠そう!わたしが店長なのである。
玉ねぎ、人参、セロリ。野菜達をじっくりと火にかけ水分を飛ばしていく。
ソフリット。
育った環境なんて人それぞれ違うんだ。そう言ってた。セロリ。
その間に誰が間違えたのか、大量の豚バラを木っ端微塵に切っていく。わたしだ。自分でおしり拭き拭きするんだから。
この時豚バラを半冷凍しておくと切りやすい。
まあわたしは包丁は使わずちちんぷいぷいのエイ!で木っ端微塵にする。
その後の過程は想像通り、気づけばミートソースになっている。
今日も元気にオープンし、楽しい時間が過ぎていき、気づけば片付けの時間になっていた。
そろそろお店でも閉めはじめようか、なんて頃携帯が鳴った。
「いまからいくねー!」
ハチコさんだ。
私「お待ちしてまーす!」
ウチは営業時間があってないような、お客さん次第なところがある。
オアシスになりたい。
「ただいまー!」
ハチコさんいらっしゃーい!おかえりー!
ハチコさんは兎に角生ビールが大好きだ。
ハチコ「よかったら店長も飲んでね!」
私「いただきます!!」
頂けるものは頂きます精神。
ふたり「かんぱーい!」
ハチコ「今日なにがオススメー?」
私「あっ、ミートソース作ったんですけど、ラザニア食べます?」
ハチコ「それいただきまーす!」
アツアツ、ほくほくと頬張りながら食べてくれた。
ハチコさんとはわたしがお店に入った時からの常連さんで、わたしよりもお店歴が長い。
5年も経てば水商売、流れるように雰囲気も変わり、また新しい雰囲気になる。
それでもこうやって変わらず通ってくれる、ふらっと来てくれることが本当に嬉しく思い、有難い。
昔話をしたり、最近の話だったり、楽しく一緒に飲んだ。
だけど、わたしはずっと気になっていた。
ハチコさんが終始ソワソワしていることを。
なあに、5年以上も繋がっているんだからソワソワしていることぐらい分かりますとも。
私「ハチコさん、どうしたの?」
ハチコ「ソワソワしちゃって、、、」
私「落ち着いてないもんね、なんかあったんですか?」
ハチコ「ナザール置いてきちゃったの!!!」
ナザールかあああああああい!!!!
常用者だとは知らんかったわい!!!!
ナザールとは点鼻薬。わたしは使った事がないから分からないけど、ナザール常用者にとっては常に手元にナザールがないと落ち着かない、らしい。つい最近聞いた事がある。
私「ナザールはやめた方がいいですよー」
詳しく調べてないけど友達がナザールやめて病院の薬にしたら楽になったと丁度聞いたばかりだったからやめた方がいいんじゃないかと言ってみた。
ハチコ「分かってるの、回数も減らしてるの」
私「それはいい事なんじゃないですか」
ハチコ「でも手元にないと落ち着かないの!寝室にもあるしリビングにもあるし持ち運び用もあるの!」
私「そんなに持ってるの!笑」
ハチコ「バックにいつも絶対はいってるはずなのに、、、だめだ、だめだ、、、」
私「まあないなら仕方ないですよ」
ハチコ「だめなの、あれがないと、、、ああ、もう、、、」
私「禁断症状みたくなってるじゃないですか」
ハチコ「だめもう!買ってくる!!!」
私「そんなにいい!?!?」
ハチコさんは駆け出した。
勢いよく扉をあけて、階段を走って降りていった。
親友が待っているのだ、走れ!走れ!ナザールにメロメロスの如く、ハチコさんは走った。
わたしにはナザールの重要性が分からないけど、お店を飛び出すほどのものなのか、考えているとすぐにハチコさんは戻ってきた。
ハチコ「良かったああああ買えたあああああ」
私「おかえり、ハチコさん。買えて良かったね」
ハチコ「ゔん、よがっだ、、、(涙目」
ブシュ
私「ここでやるんかあああああい!!!!!!」
ハチコさんはカウンターに座って、一息ついてからナザールを鼻にぶっ刺した。
ちなみにカウンターには他のお客さんもいる。
私「買って、わざわざカウンターでやる必要ある!?!?」
ハチコ「いやああ、すっきりしたあ!」
私「それは、良かったですけど、外でやるとかお手洗いでやるとかあったでしょうに」
ハチコ「店長、ビールちょうだい!」
ハチコさんはナザールをバックに大切そうにしまい、
心機一転一杯目、
生ビールを注文した。
片穴だけかい!!!!!!!!!
ハチコ「そだよ、片方だけ詰まってるんだもん」
カウンターのお客さんがみんな笑った。
ハチコ「ナザールがないとだめなんだもん」
私「まさか、じゃあ、その片穴のためだけに今買いに行ったの?」
ハチコ「そだよお」
わたしは、まあスッキリできたなら良かったよと思いながらビールを注ぐ。
ん?
私「ちなみにハチコさん、ナザールいくらすんですか?」
ハチコ「1000円だよー!」
片穴のためだけに!!!!それもいま買う!!!!!
もういいわ、もういいわハチコさん、、、
生ビールわたしももらうね、、、
ハチコ「いいよのものもー!」
うふふとハチコさんは鼻の下に白いお髭を作って、鼻で大きく息を吸った。
今日も愉快な日だった。
それ以降ハチコさんはナザールを忘れたこともなければ、1度やったらもう慣れたのか、いまだにカウンターでナザールを刺す。
これはこれで、名物だ。
皆様も笑って飲んでよいよい酔い夜を!
少しでもニヤリとなれたなら幸いです。 よろしくお願いします☺️