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休日の朝ごはん

早起きして、パジャマのまま冷蔵庫からお米を取り出した。半合を計って小鍋に入れる。多めの水を加えてひと煮立ち。鍋のふたを切って、弱火でしばらくコトコトしててもらう。

別の小鍋にはお椀二杯分の水を入れる。はさみで昆布を小さく切り、出汁を取る。お米の鍋からぶくぶくと溢れそうだったのを、ふたをずらしてかろうじて凌いだ。

余っていた大葉とねぎを野菜室から取り出し、まな板の上に広げる。時計を見るついでにリビングの窓へ目を向けると、木立から抜け落ちてきた朝日がカーテンの上で揺れていた。明るさには、まだ夏の気配が漂っている。

先の青い部分が少し残っていただけのねぎ。内側のぬるぬるに負けないよう、礼儀正しくまな板へ垂直に立てた包丁で小口切りする。大葉は千切りにした。きれいな緑色がよく見えるよう、表を外側にして巻いてから。

昆布の鍋が煮立ったところで火を止め、味噌を溶いた。赤みの強い仙台味噌。ぷんと立つ奥深い香りに誘われ、お酒をひと口飲みたくなるのを我慢した。お玉の上でかき混ぜられた味噌が少しずつ出汁に広がっていく姿に、台所の小さな平和を思った。

お米の様子をうかがい、ひと混ぜする。水をたっぷり吸ってやわらかくなってきたが、もう少し。隙を見てお味噌汁に納豆を一パック加える。味噌も納豆も火の加減には気をつけてあげないといけないと知ったのは、日本酒を楽しむようになってからだった。どのおいしさも微生物の頑張りがあってこそ。自然の力は偉大で、尊い。

納豆が粒に分かれたら、卵を割り入れる。細かな味噌が浮かぶ出汁の真ん中に、ふよふよと透き通った不思議な世界が生まれた。味噌と納豆に気を遣いつつ、世界に輪郭が生まれるくらいまでもう一度弱火を通す。最近はスーパーで値札を二度見しそうになる卵だけど、この子はお財布にやさしかった。

お米もいい塩梅になっていたので、二つの鍋の火を揃って消した。卵は頃合い。仕上げに散らした大葉の色に、窓の外の緑が重なる。白く透き通ったおかゆは瑞々しく、立ちのぼる湯気が改めて朝を告げている。

昨晩塩で揉んでおいたキャベツの浅漬けを、菜箸で小鉢に移す。細かく刻んだ昆布が名脇役。ほんのりと彩りを豊かにしているのは、千切りにしたにんじん。少し塩がきつかったような気もするけど、おかゆと一緒なら、きっとすべて良し。

栗の箸置きに、向きを合わせた箸を揃える。おかゆ、お味噌汁をよそったお椀を手前に、漬け物の小鉢を奥に置いて三角形を作る。どうしてか今朝はおかゆを食べたかった。お味噌汁と漬け物と一緒に。何の変哲もない食卓の光景に、心がほっとしているのがわかる。

豊かな朝ごはんは一日をきれいにしてくれる。毎日は難しいけれど、できるときは丁寧に。いただきますは、感謝を込めた祈り。

今日も良い一日でした。
明日も良い日になりますように。


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