ファッション的視点で捉える音楽 名盤編/ダンス・エレクトロ5選
前回に続き、僕がこれまで印象に残ってる作品や、ショップのサウンドトラックとしてお客様の反応が良かった名盤をご紹介していきます。第二回目はダンス・エレクトロ編。
このジャンルは如実に音楽のトレンドを感じ取れるものであり、ファッションとの繋がりも00年代以降はとても強かったと感じています。セレクトする際に意識していたのは、フロア向けの雰囲気が強いものは外し、リズム感やポップセンスで洋服の雰囲気とリンクするようなものを選んでいました。
先日ご紹介したドリームポップなど、できるだけ幅広いテイストの音楽と組み合わせ、一日の中でメリハリをつけ単調にならないよう意識していました。
今回はまさに名盤と呼ばれるようなものが中心になりましたが、どれもファッションと合わせて意味あるものばかりです。改めて聴いてみて下さい。
1.Justice(ジャスティス)/Cross(2007)
2000年代初頭からファッションの世界では、フランス産を中心とした新時代のエレクトロミュージックが大人気でした。
パリの伝説的セレクトショップCOLETTE(コレット)のコンピレーションや、パリのインディペンデントレーベルKitsuné (キツネ)などが気鋭のアーティストたちを多数フューチャーし、異様なほどの盛り上がりを見せました。ロック×エレクトロ的なアプローチがこの時代のキーワードになっており、ファッションも然り、エッジの効いたスタイルが注目されていました。
ソウルワックス、ティガ、ボーイズ・ノイズなど良質なアーティストがたくさんいましたが、ジャスティスの登場は本当に特別でした。
分かりやすいポップさがありながらダンサブルで歪んだサウンドは、飽和状態になりかけていたこのシーンに衝撃を与え、まだまだアンダーグラウンドだったエレクトロミュージックをメインストリームにまで一気に押し上げました。
ファッションやカルチャー全体にも強い影響を与え、先日解散を発表したダフト・パンク等とともにその後のEDMの発展にも貢献し、新しい時代の扉を開いたと言える名作です。
2.Ivan Smagghe&Chloe(イヴァン・スマッジ&クロエ)/Kill The Dj Presents: Dysfunctional Family(2006)
メインストリームとなったフレンチエレクトロの裏側で僕がとにかく好きだったのが、イヴァン・スマッジが主宰していたパリのアンダーグラウンドパーティー兼レーベルの「Kill the DJ」。
テクノミュージックに耽美的な要素を加えたダークなサウンドは、エレガントでお店のサウンドトラックとしてとてもフィットしていました。
イヴァン・スマッジはブラック・ストロボというユニットで作品も発表していましたが、こちらは「Kill The DJ」の女性レジデントDJ、クロエとの共作ミックス。ゴシック、デスディスコと呼ばれるようなものからエレクトロハウス、アシッドフォークまでセレクトし、ダークな世界を縦横無尽に駆け巡るサウンドはドラマティックで素晴らしいです。
エディ・スリマンが初期のディオール・オムで表現した世界観、サウンドとも共鳴するような無機質でエレクトリックな雰囲気。本当に飽きずに良く聴いた一枚。
3.BURIAL(ブリアル)/UNTRUE.(2007)
2006年に聴いたブリアルのファーストアルバムは本当に衝撃的でした。当時ダブステップというジャンルを全く知らなかったのですが、一聴してめちゃくちゃカッコいいなと思って一気にのめり込みました。
その興奮そのままに、翌年発表されたセカンドアルバムです。さらにグレード上がってました。
陰鬱でダークな世界観なのですが、極太のビートが非常に心地良くかつ緊張感があり、スモーキーでミステリアスなヴィジョンが全編に繰り広げられます。
ベーシック・チャンネルやリズム&サウンドが良く引き合いに出されますが、力強いビートとメロウな音像の組み合わせは、今までに聴いたことのない全く新しいものでした。後のジェイムス・ブレイクなどの登場を予感させます。
「今かけている音楽を教えて欲しい」とよくお客様から聞かれた一枚です。
4.Todd Terje(トッド・テリエ)/It's Album Time(2014)
いわゆるニュー・ディスコやバレアリック・ビートと呼ばれるようなサウンドが好きで、特にノルウェー出身のリンドストロームやプリンス・トーマス、そしてこのトッド・テリエの作品は良く聴きました。
この手のスペーシーでダイナミックなディスコサウンドは、心地良い高揚感を味わえ、程よくテンションが上がる素晴らしいサウンドトラックです。
この作品は、彼の10年来のヒット・シングルや傑作リミックスを経て遂に発表したフルアルバム。
全体を通して見事な内容ですが、中でも「デロリアン・ダイナマイト」は僕もとてもお気に入りの一曲。一風変わったポップセンスと、徐々に盛り上がる最後まで飽きさせない展開。とにかく気持ちいいです。ニュー・ディスコの歴史に残る傑作。
5.Fkj(エフケージェー)/French Kiwi Juice(2017)
最後はFKJ。フレンチ・エレクトロの系譜を新たなステージへ持ち上げた最重要人物。
7つの楽器を操るライブ・パフォーマンス、ヒップホップ的なサンプリングとビートのセンス、R&Bの要素も含むメロウネスなムードは、現代のエレクトロミュージックの大きなトレンドを生み出しました。
彼が主宰するパリのレーベルRoche Musiqueは、ファッショナブルな音楽のトレンドセッター的な立ち位置になり、その存在感をますます高めています。
近年は緊張感が解けた、リラックスなムードがファッション全体の大きな流行になっていますが、好まれる音楽もやはりそういうニュアンスのものが多いですね。まさに時代の気分を反映した一枚。
Justice Vs. Simian/We Are Your Friends
ファーストアルバムには未収録ですが、当時フロアを盛り上げたジャスティスのアンセムといえばやはりこちら。ダフトパンクの「ワン・モア・タイム」に並ぶほどのインパクトありました。いつ聴いてもテンションが上がる一曲です。
またジャスティスはかつてディオール・オムのショーの音楽も担当し、ファッション界でもその存在感をさらに高めました。カッコいいです。クリス・ヴァン・アッシュ時代。
Dior Homme 2009年春夏コレクション
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