見出し画像

ハイブリッドスタイルの真髄〜kolorとsacai

今回は日本を代表するブランド、kolor(カラー)とsacai(サカイ)について。メンズに特化してお伝えします。カラーは2004年(前身と呼べるPPCMは1994年)、サカイは1999年設立(メンズは2009年春夏より)。
デビュー当時から商品を拝見していましたが、両者とも本当に凄いブランドになりました。

ご存知の方も多いと思いますが、お二人はご夫婦でどちらもコムデギャルソン出身。そういった環境もあると思いますが、デザイン的にやはり重なる部分はあります。
現在で言うと、両者ともいわゆるハイブリッドなスタイル「2つ以上の全く違う要素を融合させること」で人気を集めています。
しかし、根本は全く異なった個性を放つブランドです。

2021-22年秋冬コレクションとそのルーツを辿りながら、カラーとサカイのハイブリッドスタイルの真髄を見ていこうと思います。

1.kolor(カラー)/阿部潤一

画像22

カラーは立体感や動きが生まれるこだわり抜いた素材を駆使し、トラッドをベースにしたリラックス感あるテーラードスタイルを確立。特に2010年頃から異彩を放ち多くのフォロワーを生みました。

今でこそ当たり前になったダンボールやボンディング、コンブナイロンのようなハリのある素材を当時からよく使っていて、肩の力が抜けた立体感のある雰囲気を作り上げていました。
一方で独特のシャリ感とドレープ感があるジャージ素材(主にナイロンカバリングという素材)のジャケットがものすごくヒットして、当時後を追うように多くのブランドが同じようなものを作っていました(それに合わせたクロップドやパッカリングのパンツも人気爆発)。

その少し前までは細身でカチッとしたジャケットが流行っていましたが、この頃になるとリラックス感のある雰囲気が時代全体のキーワードになっており、国内のメンズで見るとカラーの影響力はかなりあったと思います。

画像21

Kolor 2012年春夏コレクション

2012-13年秋冬からはパリコレクションに進出。このショーを実際に観に行きましたが、これまでのカラーの集大成的な内容で、世界に向けてその存在を知らしめる素晴らしいものとなりました。
ブランドのイメージカラーでもあるブルーの絨毯が敷き詰められた会場は、日本からのバイヤーや関係者も多く、緊張感がありながら、どこかアットホームな感じのする良いコレクションでした。

その後パリで躍進を続け、根底にあるこだわり抜いた素材使いやスタイルはそのままに、デコラティブな要素を高めさらに進化していきます。

画像21

Kolor 2020-21年秋冬コレクション

そして今シーズン。パリで開催した2017-18年秋冬コレクション以来、約4年ぶりとなるランウェイショーを東京・白金台の八芳園で開催。

変わらず提案している抜け感のあるテーラードやフォーマルを主軸として、そこに独特のミクスチャー=ハイブリッドが展開されていきます。ベースになるアイテムに脈絡のないアイテムの付属をくっ付けたり、アシンメトリーな構成で全く別のアイテムの一部を付けたり、レイヤードしているようなものだったり、ぱっと見て驚くようなデザインも多い。そのハイブリッドの手法は、単なる衣服の継ぎ接ぎを超越した、モダンアート的な「コラージュ」という言葉が思い浮かびます。

それはランダムなようで緻密に計算されたものであり、一見不協和に見えるデザインも、実際袖を通してみると完成されたスタイルに圧倒され、その魅力に取り憑かれます。スタイリング全体で動きを表現、カラーリングも絶妙。時代の空気を読みながら、その確固たる美学やモード感を振れずに提案し続けるスタンスは、本当に見事としか言いようがありません。

画像24

画像26

画像26

画像27

個人的にいいなと思ったのが、カーディガンやジャケットにさらに半身のジャケットをくっつけたデザイン。どうやって着るんだろうと一瞬躊躇いましたが、とてもエレガントになりそうな予感。是非着てみたいです。

画像30

画像28

画像29

2.sacai(サカイ)/阿部千登勢

画像22

ちょうどカラーがヒットした頃に誕生したのがサカイのメンズ。同じようにリラックスムードをコンセプトにしており、似ている部分はありました。
しかしサカイの方がやはりフェミニンで「女性が作るメンズ服」というムードがひしひしと感じられました。良い意味で角が取れた、どこか可愛いらしい部分があるメンズ。

サカイの登場で、それまでになかった新たな価値観のメンズ服に注目が集まったのは事実です。
日本でカルヴェン、マルニ、トーガのようなウィメンズの要素を取り入れたメンズブランドが注目を浴びる火付け役になったのは、やはりサカイの登場だったのだと思います。

そしてカラーはメンズらしいジャケットが主力、サカイはフェミニンなカーディガン。この違いは大きなポイントでした。

画像21

sacai 2011-12年秋冬コレクション

もともと異素材の組み合わせや、リブや付属に別テイストのものを使うデザインが多かったですが、あくまでもアクセント程度でした。それが2010年代中盤くらいからデザインの主軸に変わっていきます。これが良い方向に進み、ハイブリッドスタイルのイノベーターとして魅力的な商品を量産し、多くのフォローワーを生みました。

画像22

sacai 2020年春夏コレクション

シグネイチャーと言えるこのハイブリッドスタイルは今シーズンも健在。サカイの場合、デザインのベースになっているアイテムは、ワークやミリタリーと言った普遍的でカジュアルなものが中心。袖を別のアイテムに変えてみたり、重ね着しているように見せかけたり、裏返したパーツを使ってみたり。こちらはいわば「ドッキング」という表現が近いかもしれません。

今回はパンクやヒップホップなどのストリートカルチャーからインスパイアされたコレクションで、パンク〜テディボーイ風なムードにヒップホップの影を重ね合わせたスタイルが新鮮。スリットの使い方、Aラインのシルエットなど、ウィメンズの要素もやはり垣間見れます。

既成概念を超えるようなアプローチを用いながらも、どれも丁寧に作り込みされており、上品でまとまった雰囲気に仕上がっています。カラーとは対称的に、着た時のシルエットもスタンダードでウエアラブル。「日常の上に成り立つデザイン」というコンセプトの通り、個性的でありながらカジュアルに取り入れやすいのが嬉しい。

画像32

画像33

今シーズン注目なのが、現代アーティストKAWSとのコラボレーション。KAWSの作品に見られる独特のカラーリングをオリジナルのパターン柄に落とし込み、アブストラクトアートのような雰囲気を表現しています。ブラックカラーとのコントラストで、鮮やかなムードが際立ちます。

画像34

画像20

ミリタリーアイテムのハイブリッドは、もはやサカイの代名詞的アイテム。今回はキルティングを使ったシリーズがすごくいいなと思いました。
ジョージコックスとコラボしたシューズもいい雰囲気。

画像36

画像37

画像38

画像39

2021-22年秋冬はどちらもブランドの個性が色濃く発揮された素晴らしいものでした。全く異なる要素を取り入れたハイブリッドなスタイルは、まだまだビッグトレンドとしてシーンを牽引していくでしょう。両ブランドのこれからがますます楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?