ファッション的視点で捉える音楽6選 注目のニューリリース
ファッションと音楽の関連性を巡る連載「ファッション的視点で捉える音楽」。今回はここ最近ニューリリースされた注目の作品をご紹介していきます。
紹介する作品がファーストアルバムというアーティストも多く、今回は音楽トレンド最先端をいくサウンドが出揃いました。ファッションのトレンドと同じように、少しゆるい雰囲気でヒップホップやR&Bの影響を感じるものが特に注目ですが、気鋭のオルタナティブバンドなどもおすすめです。
お店のサウンドトラックとしても最適なもの6枚をセレクトしています。皆さまの空間演出などのお役に立てれば幸いです。
1.Mustafa(ムスタファ)/When Smoke Rises
トロント出身の天使のような歌声を持つシンガーソングライター、ムスタファ。
一曲目に収録されている「Stay Alive」を聴いて僕もその歌声に圧倒されました。この曲は彼の才能に強烈に魅了されたジェームス・ブレイクがプロデュースを買って出たという珠玉の名曲。
全体的にブラックカルチャーが根底にあるサウンドでありながら、ピュアでイノセントな美しさがあり、個人的には彼が影響を受けたというジョニ・ミッチェルの影を強く感じました。
とにかくとんでもないマスターピースが誕生しました。是非おすすめします。
トロントのリージェント・パークで荒れた思春期を送り、詩人としてそのキャリアをスタートさせたムスタファはアフリカや地元の貧困をテーマにした詩で注目を集め、ポエトリー・リーディングやドキュメンタリー制作活動を行うも、友人たちの不運な死をきっかけに都市のコミュニティに住む若い黒人たちの語られざる非情な人生を伝えるためにシンガーソングライターに転身。ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディラン、そしてリッチー・ヘブンスに感銘を受け、共感覚の手段として自らの歌唱スタイルを磨いていった。
2.Easy Life(イージーライフ)/Life’s A Beach
イギリス注目の新人、イージーライフがいよいよファーストアルバムをリリース。
お洒落でゆるい雰囲気のサウンドは、オルタナティブR&Bといったところでしょうか。
ジャンルを横断した複雑なサウンドですが、どの曲も聴きやすく、心地よい爽快感があって魅力的です。彼らのファッションも、90年代を経由したような今どきなストリートスタイルで好感持てます。
夏のファッションシーンにぴったりな一枚。
2017年に地元のパブで結成したEasy Lifeは、結成後わずか2年という驚異の速さで、UKの新人登竜門として知られる「Sound of 2020」で2位を獲得し、英・NME Awards 2020では最優秀新人UKアーティスト賞(Best New British Act)を受賞。また、昨年1月に発表した『Junk Food』EPが全英チャート初のTop 10入りとなる7位を獲得するなど、現在話題を呼んでいる実力派バンド。
3.Current Joys(カレントジョイズ)/Voyager
アメリカ出身のシンガー・ソングライター/マルチインストゥルメンタリスト、ニコラス・ラティガンによるソロ・プロジェクト。
ローファイなロックサウンドにオーケストラのようなサウンドトラックを被せるスタイルは、インディペンデントでありながらドラマティックかつダイナミック。
繊細で感傷的なサウンドに魅了されました。とてもお気に入りの一枚。
Current Joysは現代の10代のティックトッカーの入り口となっている。初期のTame ImpalaやMac Demarcoと同様、Current Joysは特異であり、そのファンベースは伝統的なインディ・ファンのはるか外側に広がっている。DSPや業界のレーダーの監視下、奇跡的にインディとメインストリームのオーディエンスを確立。TikTokによってその立ち位置が作られ、固められた最初のインディ・バンドの一つである。
4.Erika De Casier(エリカドカシエール)/Sensational
デンマーク・コペンハーゲン出身の新世代R&Bシンガー。ジャネットジャクソンやアリーヤに影響を受けた歌唱力が大きな魅力。またハウスやテクノ、アンビエント、エレクトロニカ、ジャングルなどを消化したデンマークの異能集団、Regelbauを出自にもつクリエイティブな才能の持ち主でもあります。
90年代のR&Bに影響を受け、それを現代的な感覚で表現してみせたエレクトロR&B最先端。
アルバムは、2019年に自主制作したデビュー作『Essentials』の世界をさらに拡張し、恋愛をテーマに愛を求める独身女性のステレオタイプを解体していく物語に加え、盟友DJ CENTRALことネイタル・ザックスを共同プロデューサー/エンジニアに迎えたプロダクションはAORやブラコンの艶も見事に取り入れた作品。
5.Elori Saxl(エローリソウ)/The Blue of Distance
ニューヨークに拠点を置く、プロデューサー/映像作家。音数を抑えたアンビエント〜バレアリックなサウンドは、とても心地が良く白昼夢のような世界に自然と身を委ねてしまいます。
ミニマリズムを追求した映像美も見事で、サウンドと一体となって映画の一場面を見ているよう。品格のある素晴らしいサウンドトラックとなる一枚です。
風と水の音を加工して録音したサウンドと、アナログ・シンセサイザーや室内オーケストラを組み合わせた作品。
組曲の半分は夏のアディロンダック山脈の湖、川、苔の生えた森の中で制作され、残りの半分は深い冬のスペリオル湖の凍った島で構想した、二つの極端な設定を盛り込んでいます。
美しく、淡い情景を想起させる穏やかなアンビエント。
6.Squid(スクイッド)/Bright Green Field
今イギリスではブラック・カントリー・ニュー・ロードやブラック・ミディなど新感覚のオルタナティブ・ロックがとても注目されていますが、このスクイッドも素晴らしいです。
このデビューアルバムでは、あのワープと契約したことでさらに話題を呼んでいます。
クラウトロック、電子音楽、ジャズなどさまざまな音楽性を融合していますが、やはりギャング・オブ・フォーのような硬質なギターとグルーヴが際立ちカッコいいです。是非ライブで見てみたい、強烈なエネルギーを放つアート・パンク。
「ロックダウン中に僕らはオンライン上にファイルを作って、そこにアイデアを自由に書き込めるようにした。それがアルバムのイメージを決めるのに役立ったんだけど、そこで〈設定を架空の都市にしたらいいんじゃないか〉ってことになったんだ。歌詞の一部はJG・バラード(英国のSF作家)などのSF小説から影響を受けている。架空の都市という設定を軸にして曲同士に繋がりを作り、アルバムに一貫性を持たせたんだ」
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