FASHIONとART/フォトグラファー タイラー・ミッチェル
ファッションとアートの関連性についてお伝えするこのシリーズ。今回は若くしてその才能を発揮する、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍するフォトグラファー兼映像作家、タイラー・ミッチェルをご紹介します。
Tyler Mitchell (タイラー・ミッチェル)
僕が彼を知るきっかけとなったのは、大きな話題となったUS版「VOGUE」2018年9月号での仕事でした。その号はビヨンセを表紙に起用し、当時23歳だったタイラー・ミッチェルがフォトグラファーとして参加します。それは創刊126年(2018年当時)のUS版「VOGUE」史上初めて、黒人フォトグラファーが表紙を撮影するという新たな歴史が生まれた瞬間でした。
タイラー・ミッチェルをフォトグラファーに選んだのは、ビヨンセ本人。今まで表紙の写真家はアナ・ウィンター編集長が指名し、経験と実績がある人が選ばれてきました。
歌や演奏はもちろん、自身のイメージの打ち出し方に関しても強いこだわりを持つビヨンセの希望がなければ、タイラーは起用されなかっただろうと関係者は話していたそうです。
「21年前、私がメディアに出始めたころ、雑誌の表紙は私には無理だと言われた。
黒人が表紙だと『売れないから』と。
それを過去の話にすることができた。
ービヨンセ
US版「VOGUE」2018年9月号のビヨンセ
タイラー・ミッチェルの作品は黒人を被写体にしたものが中心なのですが、とにかくその切り取り方が素晴らしいです。背景とのコントラスト、主に豊かな自然や緑の中に浮かび上がる黒人の美しさは、クリーンで力強い印象を受け、グッとその世界に引き込まれます。
昨年発売された自身初の写真集『I Can Make You Feel Good』では「黒人のユートピア」をテーマに掲げ、夢の世界と現実の狭間にあるような不思議な空気感を、ダイナミックな構図で描いた見事なものでした。
ファッションフォトにもその「ユートピア」的アプローチを引用し、自然との調和の中にエレガントな洋服を着たモデルが際立つ、夢の世界のような美しさを作り上げています。
ロエベやコムデギャルソンとの仕事を始め、写真のほか映像作品も素晴らしいので是非ご覧になってみてください。
1.LOEWE/2019年秋冬コレクション
2.LOEWE PERFUMES/Botanical Rainbow
3.US版「VOGUE」2020年12月号/HARRY STYLES
4.COMME des GARÇONS PARFUMS/COPPER
5.Simone Rocha and H&M
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