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ファッション的視点で捉える音楽6選③

僕は10代の頃からロックミュージックが好きだったり、その後クラブにも良く通ったり。ファッションにインスパイアを与えた音楽なども常にチェックしていましたが、音楽へのアプローチ、考え方に大きな影響を与えてくれたのは、2000年代初頭に出会ったパリのセレクトショップ、COLETTE(コレット)のコンピレーションアルバムでした。(ご存知の方も多いと思いますが2017年12月に惜しまれつつ閉店してしまいました。)

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2001年にVol.1がリリース。カルチャー好きの先輩にその存在を教えてもらい、代官山のボンジュールレコードで新しいナンバーが出るたびよく購入していました。型にはまらないジャンルのセレクトで、当時の自分にとっては難解な曲も多く、初めは戸惑いましたが、これが最先端の音楽なんだと感じながら聴いていくうちに、音楽の嗜好や見え方が格段に広がっていきました。

当時、まだまだ前衛的でアンダーグラウンドだったポストパンク・リバイバルやエレクトロ・クラッシュ等を大胆にフューチャー、現代音楽、クラシックポップ、ハウスなどをブレンドした独特のセレクションは、ハイファッションからストリートカルチャーまでを網羅するコレットの世界観を余す所なく表現。数年後に初めて訪れたコレットは、そのコンピレーションアルバムのイメージそのもので、ショップにとってやはり「音楽」は重要なんだなと確信した瞬間でもありました。

コレットの閉店を追ったドキュメンタリー映画
『COLETTE, MON AMOUR』予告編

さて今回もファッショナブルだなと思う音楽や、ショップのサウンドトラックとしてもおすすめな6枚をセレクトしました。皆さまの空間演出などのお役に立てれば幸いです。

1.Whispering Sons(ウィスパリング・サンズ)/Image

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自身が影響を受けた音楽やアートへのリスペクトをファッションで表現し続けているデザイナー、ラフシモンズ。2019-20年秋冬はカルト映画界のスーパースター、デヴィッド・リンチへオマージュを捧げたコレクション。ブルーベルベットやワイルドアットハートのスチールが不均衡にコラージュされ、ショーのダークサイドを際立たせます。
そしてサウンドトラックにはブリュッセル出身のポストパンクバンド、ウィスパリング・サンズの生演奏が披露されました。Joy Division直系の退廃的なサウンドにアグレッシブなパフォーマンス。エレガンスな装いに反逆性を添える素晴らしい名演でした。

ヴォーカリストの存在感が強烈で、ファッションやビジュアルも非常にかっこいいバンドです。6月に新作が出るのでそちらも楽しみです。

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2.Celeste(セレステ)/Not Your Muse

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2018年頃からハスキーでクラシックな歌声で注目を集めてきた英国のシンガーソングライター、セレステ。彼女の待望のファーストアルバムがいよいよ発売されました。僕もその歌唱力に魅力され、これは逸材だなと思っていましたが、アルバムの内容も本当に素晴らしいものでした。
ソウル、ジャズ、ブルース、フォーク、ラテンなど様々な背景を感じられる洗練されたサウンド、歌声はエイミーワインハウスを思い出してしまうんですよね。まあとにかく素晴らしい、心が洗われるよう。そしてお洒落なサウンドです。

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3.Stimulator Jones(スティミュレーター・ジョーンズ)/La Mano

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続いては夏を先取りするようなメロウな一枚を。ヴァージニア州出身のマルチ・ミュージシャン、スティミュレーター・ジョーンズの3枚目。
ギター、鍵盤、ドラム、管楽器塔をなどを自ら演奏し、ジャズ・ファンク〜ソウル的なインストゥルメンタルを紡いでいく驚きの才能です。海の薫りもしますが、都会的で上品な雰囲気。程よくゆるいグルーヴと甘いサウンドが癖になります。

2016年にリリースされたコンピ『Sofie’s SOS Tape』に収録された"Soon Never Comes"がジャイルス・ピーターソンなど世界中のキーパーソンやメディアから話題沸騰。そしてピーナツ・バター・ウルフのハートを射止め、"Stones Throw"とアルバム契約。2018年にデビューアルバム『Exotic Worlds and Masterful Treasures』をリリース。

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4.Darius(ダリウス)/Utopia

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少し前の作品ですが、とても気に入っているので今回セレクトしました。FKJのヒットでも有名なパリの人気レーベル、Roche Musiqueより2017年に発売されたダリウスのファーストアルバム。
個人的にはここ数年で聴いたエレクトロ〜ダンスアルバムで最高の一枚に選びたい名作。エモーショナルで浮遊感のあるサウンドは、一瞬で別世界にトリップしたような感覚を与えてくれます。

ダリウスのサウンドを聴けば、エレクトロ・ミュージック・シーンも新たな時代に突入したということが分かる。
FKJのヒットでも知られるパリの人気レーベル、Roche Musique、そして話題の新鋭レーベルであるAnimal 63に身を置き、ダリウスはまるで彼らの感情や時の流れを代弁するかのように、サウンド・マシンを操ってみせる。J・ディラ以降のヒップホップ・スピリット、デジタル・ダンスホール、2000年代初期のUKブレイクビーツに90年代のブリストルの香りも漂うサウンドを、ひと息にそして爽やかに描き出す。

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5.Julien Baker(ジュリアン・ベイカー)/Little Oblivions

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さて、話題作の登場です。一曲目「Hardline」の素晴らしさに感動し、さらにスケールアップしたなと驚きました。この曲を聴いて個人的に思い浮かんだのは、Arcade Fireのデビューアルバム『Funeral 』の一曲目「Neighborhood # 1 ( Tunnels)」。この曲と同じように、叙情的でメランコリックな世界に思わず引き込まれてしまいました。
全編を通して彼女の人生経験や哲学が歌詞やサウンドに反映され、そのストーリーテリングに圧倒される一枚です。

新たに公開された「Hardline」のビデオは、ジュリアンが自作した彫刻にインスパイアされたストップモーション・アニメとなっており、ザ・ルーツなどのMVの製作でも知られる、ジョー・ボーグマンが監督を務めている。60年代から70年代の雑誌や地図、新聞などを参考に、スタイルに合う色や形、素材で埋め尽くしたというMVはポップでキッチュな雰囲気と共にどこか物悲しさを感じさせる。
「600時間かけて「Hardline」に没頭し、曲を何千回も聴いた後でも、私はこの曲に感動させられる。このような切実な曲のためのビデオを作るのは、楽しく、僕にとって野心的な挑戦だった。」
-ジョー・ボーグマン

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6.Perfume Genius(パフュームジーニアス)/IMMEDIATELY Remixes

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最後はパフュームジーニアス。昨年発売されてとても素晴らしかった5枚目のアルバム『Set My Heart On Fire Immediately』の全曲リミックスアルバム。Boy Harsher、Actress、Planningtorockなどダークエレクトロ系のアーティスト達がリミキサーとして名を連ねています。この手のリミックス作で言うと、かつてBloc Partyが名盤の誉高いデビューアルバム『Silent Alarm』の全曲リミックスアルバムを出していて、とても満足いく内容だったのを覚えています。原曲とはまた違ったアプローチが楽しめて良いですね。

ローファイなインディサウンドで2010年のデビューから変わらず高い評価を得ていますが、その美しいヴィジュアルも注目の的。同性愛者、壮絶な生い立ち等カミングアウトしていますが、その存在自体がアイコンとして輝きを放っています。タンクトップに短い丈のボトムを合わせ、身体をくねらせるあの仕草はとてもエレガントでセクシー。ファッション界からも常に熱い視線が注がれる存在です。

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