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大切にしていきたいこと

駅からちょっと歩いた街はずれにある
小さなサーカス小屋のようなちょっと不思議な雑貨店
cirque・quete(シルクケット)。
今日も色んなお客さまが来る。


ある日、何回か遊びに来てくれている
ご近所に住むおしゃれなマダムが
天然石の素敵なネックレスのパーツたちを
箱に入れて大事そうに抱えてやってきた。

「このネックレス、急にワイヤーが切れてバラバラになっちゃったの。
困ったなあ~って思ったときにね、
あ!こちらに持ってきたら直してもらえるかも!って思ってね」

よくみたらワイヤーが変色していて、金具のつなぎ目のところで切れてしまっている。しかも留めるときに何とも着けづらそうな金具を使っていた、昔のデザインのネックレス。
これはワイヤーも細かいパーツも総入れ替えしたほうが良さそうだな・・・
しかしこんなワイヤーが千切れるほど、すごく大切に使われてたんだろうな。ちょうど他の依頼仕事も落ち着いていて時間があった私はこのネックレスのお直しを承った。

さてパーツ類を全部外して総入れ替えをするので
天然石の順番はどうしますか?と聞くと
あなたのセンスに任せるわ~とおっしゃったマダム。それは若干緊張するな。

ベースは落ち着いたダークカラーの天然石ばかりだがひとつだけ赤い石がアクセントで入っていて、マダムもそこが気に入っているようだったのでそこの配置はあまり変えず。
あとはバランスみて組み直して、ワイヤーがまたすぐに切れてしまわないように金具部分を補強して…

気づいたらこの作業、夢中になっていた。
あー、楽しい!!!
今まで自分でオリジナルのアクセサリー作ってきたけど、アクセサリーをお直しするのも楽しい。


それで、はたと気づいた。
これ私が大事にしたいことだ。
こうやってお気に入りのものを直して直して
ずっと大切にしていくっていうこと。

何で私は古いものが好きなのかなあって考えたときに
いま現在ここに来るまでにいろんな人の手に渡ってきた
傷や擦れ、色の変化やシミなんかも、そのものが見てきた、色んな人たちのいろんな物語を感じてすごく愛おしく、魅力的に見えるのだろう。
古着も然り、もっと古い時代のアンティークとかもそんな魅力がいっぱい。だから古いものたちを一度手に乗せ眺めて、思いを馳せる。
君はどこから来たの
そしてこれからどこへいくの

そんなことを考えながらネックレスのお直しは完了。
後日無事にマダムへ引き渡しました。
いままでもお気に入りだったけど、より一層素敵になったわ!
という最高の言葉をいただいて。

お直し完了


#シルクケットのお客さまシリーズ
これは実際にご来店いただいたお客様をモチーフにしたフィクションのお話です。


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