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市民参加型プラスチック循環の実験“キャップノソノゴ”

こんにちは、HITACHI Circular Design Projectです。1本前の記事で、私たちのパーパスをお伝えしましたが、今回は、その記事の中で触れられていた「身の回りにあるモノから新しいモノを生む」のひとつの挑戦として、東京都国分寺市で市民参加型プラスチック循環の実験“キャップノソノゴ”を行いましたので、その様子についてお伝えします。(文責 デザイナー 金田麻衣子)


“キャップノソノゴ”が登場した背景

私たちの拠点は東京都国分寺市にあり、協創の森と呼び、研究者やデザイナーが在籍しています。また国分寺市では2011年から街歩きしながら地域の魅力を再発見するイベント「ぶんぶんウォーク」で、大小100以上の様々な地域発のイベントが開催される地域密着のイベントが行われています。今年2022年も11月18日から30日まで「ぶんぶんウォーク」が開催され、その中で、国分寺西エリア、通称”くにきた”と呼ばれるエリアのつくし文具店の店主で地域のプロジェクトデザイナーでもある萩原修さん、ビオフォルム環境デザイン室の帰山さんのご協力を得て、市民参加型プラスチック循環の実験“キャップノソノゴ”が実現しました。

と言っても、最初から“キャップノソノゴ”の内容が決まっていたわけではなく、萩原修さんに初めてビオフォルム環境デザイン室に連れて行ってもらった際に、居室の心地よい空間、そこで出会った帰山さんとのお話の面白さに刺激を受けて、ぜひここで「ぶんぶんウオーク」を巡る市民の皆さんに参加してもらう地域の循環の実験をやってみたい!という私たちの急な提案に対し、おふたりに柔軟にご対応頂き、なんとか実現したという経緯があります。

“キャップノソノゴ”とは?

私たちは、サーキュラーデザインについて、社内で議論を進めていく中で、私たち自身が、ひとりの生活者として「製品の廃棄から再製造までの資源循環プロセスは、生活者が普段の日常生活、あるいは身近な地域でみる機会が少なく、資源循環プロセスを実感して生活することは難しい」というひとつの課題にたどり着きました。

例えば、目の前にある飲み終わった牛乳パックがあり、近くのスーパーで回収していて、その牛乳パックが新しい製品の素材になっていることを知っていて、回収ボックスに入れるという行動をしていても、実際には牛乳パックを回収箱に入れた後のことは、よくわからないし、その牛乳パックが次の何かに活かされている体感は持てていないという感覚から生まれた課題です。

参考 : 資源循環政策の現状と課題(経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課)

そこで「生活者の不要な製品を、回収・資源化・製造という資源循環プロセスを地域内で、かつ短時間で体感することで、身近にある不要な製品を素材として認識できるようになる」という仮説を立て、「地域の市民の不要になったペットボトルのキャップを粉砕、ボタンへ成形という、ごく小さなプラスチック資源のサイクル体験から、気づきの対話を行う」という方法に挑戦することにしました。
 
プレシャスプラスチック等の様々な事例を調べる中で、ペットボトルキャップを粉砕し、手動射出成形機でキーボードキャップに成形することに挑戦されているヤフーLODGEものづくり×オープンソースプロジェクト「Toaster」さんが発信されている活動を知り、多くのインスピレーションを受け、私たちもペットボトルのキャップを素材に選ばせてもらいました。

「Toaster」さんの展示を拝見する機会があり、そこで手動射出成形機を使う様子が映されていたのですが、自分で扱うには難しいと思っていたプラスチックが、手動で一瞬でキーボードキャップに変化する様子を見て衝撃を受けました。自分たちでも、手動射出成形機を使ってみたいという一心で、実際に「Toaster」さんのファブスペースにお邪魔して、わからないことを具体的に教えて頂き、なんとか使えるようになりました。このあたりのペットボトルキャップの粉砕や手動射出成形機の挑戦は、また別の記事で詳しくご紹介予定です。成形物に関しては「参加してくださった方が使える物をつくってみたい」と、今回は簡単な形状で、小さな子どもでも使い方を理解しやすいボタンづくりに挑戦することにしました。

“キャップノソノゴ”の様子

キャップノソノゴの参加の流れはこちらの4ステップで実施しました。

1. 不要なペットボトルキャップを手放す

「ぶんぶんウォーク」に参加している5ヵ所の地域の拠点(つくし文具店、OCUYUKI、くにきたべーす、大勝工業、ビオフォルム環境デザイン室)にペットボトルキャップの回収スタンドを設置します。そのスタンドで、市民の方に不要になったペットボトルキャップを手放してもらいます。

2. ペットボトルキャップを粉砕する

ペットボトルキャップを京セラ社のガーデンシュレッダー(枝葉用のシュレッダーのため、自己責任において安全性を確認した上で使用しています)で粉砕、大きなものがあればニッパーで小さくします。粉砕したキャップはこんな感じになります。ただ、粉砕するには何度かガーデンシュレッダーにかけ、細かく粉砕しきれなかったものはニッパーでカットする必要があり30分ほど時間がかかってしまうため、今回は、粉砕したキャップを事前に用意しました。

3. 粉砕したペットボトルキャップからボタンを成形する

粉砕したキャップをオリジナルマインド社の手動射出成形機で、光造形の3Dプリンタの型でボタンを成形、型からとりだして、ニッパーでふたつのボタンを切り離し、バリがあればやすりをかけて、ボタンの完成です!(この手動射出成形機や型については、次の記事でくわしくご紹介します)

4. ボタン成形の体験について対話する

ペットボトルキャップの粉砕物を使って、ボタンを成形してみての感想や気づきを話したり、ポストイットに書いてもらって、つくりたてのボタンを持ち帰ってもらいます。

“キャップノソノゴ”の参加状況

実験は、11月26日27日の両日13:00-17:00、2日間合計8時間で、回収できたキャップ数は228個、ボタン成形に挑戦してくださったのは34組62名、地域の皆さんへお渡ししたボタン72個と、ありがたいことに、とぎれなく多くのみなさんに参加して頂きました。できあがったボタンは、こんな感じで私たちもどんな模様になってでてくるのか想像できないので、ときには大きな歓声と共に唯一無二のボタンができあがります。

キャップの色が混ざり、さまざまな模様のボタンができあがります

また、ボタンを持ち帰りやすいように、ラッピングワイヤーを用意していたのですが、わたしたちの想像をはるかに超えて、みなさん思い思いにご自身の鞄や洋服、鍵やスマホなどにつけて笑顔で持ち帰っていく様子は、忘れられない瞬間になりました。

参加者の皆さんがボタンを身に着けてくださった様子

これから

今回は、東京都国分寺市で行った市民参加型プラスチック循環の実験“キャップノソノゴ”の背景、概要や当日の様子についてお伝えしました。この実験から、どのような気づきを得られたのか、また改めて続報をお送りする予定です。また私たちは、今回の実験を起点に、いろいろな方と対話してみたいと思っており、ご興味持って頂けた方、お気軽にご連絡頂けると嬉しいです。