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ペットボトルキャップを素材に1からキーボードを作ってみた話

こんにちは。ヤフーのオープンコラボレーションハブ「LODGE」です。

LODGEでは、自治体DXシリーズの取り組みに加え、デジタルファブリケーションを用いたローカルなものづくりの実験を行っています。

先日は、課外活動として、自作キーボード好きな社員と一緒に、ペットボトルキャップからキーボードを自作する(!)実験をしてみました。

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きっかけ

LODGEのfabスペースには、使われていないけどものすごくポテンシャルを秘めた機材がたくさんあります。

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今回利用したORIGINALMIND社のINARIもその1つです。家庭用の射出成形機で、型を用意すれば、プラスチックを熱して溶かして、思い通りの形に成形することができます。

せっかくこんな面白い機材があるのだから、毎日使う道具の中で、自分たちでも成形できそうで、愛着が湧く、キーボードを選んで作ってみることに。


金型は1日にしてならず

キーキャップは、形状としてはシンプルなものだし、すぐできるかなと思ってたのですが、これが大きな間違いで、いざ作ってみると失敗の連続。

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失敗した型の数々
(左)ランナーが細くて全体に素材が行き届かない
(右)射出の度に型が壊れてく

最初はコストを浮かせようと、3Dプリンタで印刷したレジン型で制作していたのですが、一回使うとすぐ型が割れてしまったり、素材が中まで充填されなかったりでなかなかうまくいきません。結局はアルミ型を発注することにしました。

メーカー会社のパートナーの方にヒントをいただきながら、エジェクタピンコールドスラグウェルなど、少しづつ型作りのノウハウを貯めていきました。

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(左)最初に作った型
(右)最終的にできた型
機能も品質も全然違います!(T_T)

制作の細かいプロセスについては、こちらで公開しています



一番手間がかかるのは破砕と回収

今回のプロジェクトで一番コストがかかったのは、廃材を加工できる状態に持っていく部分でした。素材を集め、色別に分け、洗浄し、5mm角に破砕する…… 単純ですが大変な労働です。

以前海岸で拾ったプラスチックを破砕したことがありましたが、洗浄などにかなり時間をかけて行いました。

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今回はペットボトルキャップをニッパで細かくするだけでしたが、それでも指が痛くなってきました。



プラスチックに対する見方が少し変わる

今回のワークショップに参加してくれた子が後日こんなことを呟いていました。

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それまで、ただ捨てるだけのものだったキャップが、いいキーボードを作るための素材として見れるようになっている。その変化に喜びを感じてくれていたようでした。

プラスチックは暮らしの中でも最も身近な素材の1つであるにもかかわらず、その加工プロセスはあまり身近ではありません。自分の場合は、指先で1日に何百回も触れているはずのキーボードのキーの素材がどんな種類のプラスチックであるかすら知りませんでした。

そんな状態からでも、自分で持ち込んだ素材を目の前で成形することで、プラスチックを見る目が変わり、少し違った視点で消費サイクルを見つめ直すことができます。

金型からキーキャップを自作したことの一番大きなインパクトはここにありました。

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家で使う道具の素材を、家で調達する

LODGEで作ったキーボードを自宅で使っていますが、なかなか手に馴染み、快適に使うことができています。

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今回この取り組みにチャレンジした目的の1つに、

身の回りの道具の素材を、家で調達する

というテーマがありました。あらゆる人・モノの移動が制限され、否が応でも移動の必要性を意識せざるを得なかったこの1年半、庭で作物を育てたり、身の回りのものを自分で調達することにチャレンジした人も多かったのではないでしょうか?

食べるモノで自給自足ができるのであれば、身の回りの道具においても自給自足はできるだろうということで、今回は家で調達できる身近なプラスチックのペットボトルキャップを使ってみたのでした。

デジタルファブリケーションの世界でも、世界規模の製造サプライチェーンを見直し、半径1-10km以内で素材の調達から製造までが完結することを目指すFabCity構想の機運が高まっています。

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FabCity構想が目指す、様々なスケールでプロダクトライフライクルが回っていく図。 (Fab City Whitepaperより)

世界中で広がる「プレシャス・プラスチック」の取り組み

このような取り組みを先んじて行ってる方は、世界でも日本でも、たくさんいらっしゃいます。

国内

ダイナミックラボさん

プレシャスプラスチック鎌倉さん

プレシャスプラスチック唐津さん

RePLAMOさん

国外

Prescious Plastic(オランダ・本家)

. . .などなど。

↓ ダイナミックラボさんでは、上で話したような破砕の手間を少なくするシュレッダーを作って、設計を公開してくださったりもしています。(いつか制作したい……!)

↓ 大元となるプレシャスプラスチックの運動についてはこちらの記事がとてもわかりやすいです

上でご紹介したような先輩方に比べると私たちはまだまだですが、「何を作るかではなく、何から作るか」を考えたデジタルファブリケーションの可能性を今後も模索していきたいと思います。

さいごに

この記事の反響がよかったら、他の金型のデータも、もう少し手を加えて、データ公開しようと思います。進捗があれば、Instagram, note等で発信しますので、ぜひフォローをお願いします。

https://www.instagram.com/toaster_zine/

LODGE(およびそこで活動するToaster)では、サービスデザインとデジタルファルリケーションを基軸としたさまざまな実験を行っており、協同して下さるパートナーを探しています。興味を持たれた方はぜひご連絡をお願いします。