✩ 文学夜話 ✩ 中原中也の「サーカス」は、なぜ名詩なのか? 音の面から徹底分析!
この記事では、中原中也の詩「サーカス」について、音(言葉の響き)の側面から分析したいと思います。
というのも、図書館を渡り歩いてこの詩を扱っている本の章や論文や記事を覗いても、ネットでくまなく検索しても、私には浮きだって見えるこの詩のあらゆる音の効果について、指摘がなされていないからです。
一般的によく言及されるのは、「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」のオノマトペのことや、七五調のところがある点や、同じ言葉が繰り返されるリフレインの部分です。それらも勿論この詩の重要な特徴ですが、その他にも言及すべきところがたくさんあります。
これほど有名な詩であっても、それらの重要な部分が百年近く気づかれずにいるというのは驚きです。中也もあの世で「え、まだ気づいてないの?」と、びっくりしていることでしょう。
もしかしたら多くの人は詩の意味の解釈の方に気が向いてしまうがために、細かな音の面での技巧を見逃してしまうのかもしれません。私は普段から音に細心の注意を払って詩を書くタイプなので(詩を書く人にも色々なタイプがいます)、気づきやすいのかもしれません。
では分析をする前に、どういう詩だったか、振り返ってみましょう 。
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「サーカス」 中原中也
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処ここでの一と殷盛り
今夜此処での一と殷盛り
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒さに手を垂たれて
汚れ木綿の屋蓋のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの白い灯が
安値いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
屋外は真ッ闇 闇の闇
夜は劫々と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
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どうでしたか? 音の面で気づいたことがありましたでしょうか。
では以下では私の分析方法とその結果を書きます。
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