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現役編集者によるライティングの基礎。 ①自分の常識を疑う②一つの意味になること

「伝えたいことがあって文章を書きはじめたはいいものの、途中で何が言いたいのだったか迷子になってしまう……」

「ようやく書き終わったはいいものの、投稿してもあまり読まれない……」

企業で情報発信を担当されている方は、さまざまな悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

CINRA, Inc.の編集者が所属するコンテンツユニットでは、自社メディアだけでなくさまざまなクライアントのオウンドメディアやウェブサイトの記事・テキストの制作を行なっています。

編集力を活かしたオウンドメディアの実績について
(資生堂、森ビル、三井化学など)

今回の記事では、社外に向けた文章執筆や記事制作を手がけていらっしゃる方々に参考にしていただけるような、ライティングのポイントを紹介したいと思います。

読者ターゲットはどんな人で、何が知りたい? 自分の「常識」を疑うこと

こんにちは。編集者の原です。私はこれまでCINRA, Inc.の仕事で、自社メディアの「CINRA」にはじまり、ビジネスメディアや旅メディア、シティガイド、化粧品メーカーや結婚式場のウェブサイトなどなど、さまざまな媒体の記事制作を行なってきました。

媒体が異なれば、読者層や、読者が求めるものも違います。そのためつねに、「今回つくる記事の読者ターゲットはどんな人で、何が知りたいのか?」をまず初めに考えて記事をつくるようにしてきました。

自分とは違う思考を持ったターゲットに寄り添うためには

たとえば、私がかつて編集を担当していた森ビルさんのオウンドメディア「HIP」は、さまざまな新規事業の取り組みを扱うメディアです。読者ターゲットは「新しいことに挑戦したいマインドを持つビジネスマン」。

そのため、ほかの新規事業系メディアでは商品やサービスそのものに関する記述が多い傾向にありますが、「HIP」では立ち上げまでのストーリーや具体的なコツ・ノウハウなどを掘り下げます。また、記事内に登場する用語についても、上記のターゲットを踏まえたうえで、注釈が必要なもの、そのまま使えるものの振り分けを検討していました。

森ビル株式会社のメディア「HIP」より。現在もCINRA, Inc.で毎月記事を更新しています

そのメディアでは、どんな人に向けて記事制作をしているのか? かれらはどんな情報を求めていて、どんな知識を持っていて、普段どんな語彙に触れているのか……こうしたあれこれはメディアによってまったく違うものです。

また記事のターゲットは、かならずしも自分に近い存在ばかりではないかもしれません。そうしたときは、ターゲットが読みそうな本や雑誌を読んでみたり、SNSを検索してみたりして、相手の気持ちや知りたいことを想像するように心がけています。

炎上回避のためにも。誰が読んでもひとつの意味にとれる文章をつくること

原稿をつくる際には、「誰が読んでもひとつの意味にとれる文章をつくる」ことを心がけています。読みにくい文章が続くと、最後まで読まずに途中で離脱する読者が増える可能性が高まりますし、最悪の場合は意図と違う解釈がされて炎上するリスクにもつながってしまいます。

ひとつの意味にとれる文章をつくるコツは、下記のように細分化できると思います。

・ひとつの文章に対して、多くの情報をつめこみすぎない
・「誰が何をどうした」が明確に読み取れる文章に
・曖昧表現や多義語、「こそあど」の多用を避ける
・最適な語順に並べる

4つのコツをもとに、読みやすくわかりやすい文章にするには?

例を見てみましょう。

私は警察署で働いているのですが、同僚に山田くんという人がいて、真面目で責任感は強いのですがたまに周りが見えなくなることがあります。今日も、私は犯人をあげることに必死で顔を真っ赤にしながら聞き込みをする山田くんに「冷静になろう」と伝えました。

では、この文章を読み解いていきます。

一文目:私は警察署で働いているのですが、同僚に山田くんという人がいて、とても真面目で責任感は強いのですがたまに周りが見えなくなることがあります。

・私は警察署で働いている
・同僚に山田くんという人がいる
・(山田くんは)真面目で責任感が強いが、たまに周りが見えなくなることがある

この三つの情報が、ひとつの文章にまとまっています。三つ目の情報の主語は「山田くん」であると推察されますが、「私」である可能性も捨てきれません。さらに、「警察署で働いているのですが」の「ですが」は、ここでは「前提」を示すために使われていますが、ほかに「逆接」の意味もある単語であるため、意味のとり方に複数の可能性が生まれています。

二文目:今日も、私は犯人をあげることに必死で顔を真っ赤にしながら聞き込みをする山田くんに「冷静になろう」と伝えました。

「犯人をあげることに必死で顔を真っ赤にし」ているのは、一文目で述べられている情報を踏まえると「山田くん」である可能性が高そうですが、文章の構造上は、「私」であるようにもとれてしまいます。また「犯人をあげる」の「あげる」は、ほかのさまざまなシーンでも使われる動詞のため、もう少し具体的な動詞に置き換えたほうがわかりやすそうです。

上記をふまえて整理してみると、たとえば以下のようになります。

私は警察署で働いています。同僚の山田くんは、真面目で責任感が強いのですが、たまに周りが見えなくなることがあります。今日も、犯人を検挙することに必死で顔を真っ赤にしながら聞き込みをする山田くんに、私は「冷静になろう」と伝えました。

一文目をふたつの文章にわけ、「真面目で責任感が強い」の主語が山田くんであることを明示しました。また、二文目については「私は」という主語を「冷静になろう」の直前に移動したほか、読点を使うことで文章のなかの「意味のまとまり」がわかりやすくなるように工夫しました。

(ポイント)
・文章を短めに区切る
・主語を明示する
・関連性の強い単語同士を近くに置く
・読点を効果的に使い「意味のまとまり」をわかりやすく示す

ここに挙げたものはほんの一部ですが、このように小さな工夫を積み重ねることで、読みやすくわかりやすい文章をつくることができます。また、一度書いたものを上から読み直してみることで、知らず知らずのうちに使っていたわかりにくい表現などに気づけると思います。

ライティングの基本は「外国人とのコミュニケーション」にあり?

記事制作のポイントは、挙げようと思うとさまざまな角度からたくさんのものが挙がりますが、今回は下記の二点をメインにお伝えしました。

① 自分の常識を疑うこと
② 誰が読んでもひとつの意味にとれる文章をつくること

じつは、これらの心がけの重要性は、私がとあるジャンルの記事制作を行なうなかでとても強く感じたことでもあります。そのジャンルというのは、「インバウンドの観光客向けに、日本の地域の魅力を伝える記事制作」。

私はこれまで、岩手県や秋田県、愛媛県などさまざまな自治体の、他言語情報サイト制作に関わってきました。

岩手県観光ポータルサイト「VISIT IWATE

岩手県観光ポータルサイト「VISIT IWATE」より。岩手県の魅力を海外に発信し、観光客を誘致するのが目的。CINRA, Inc.ではウェブサイト、動画、コンテンツを制作。(実績ページはこちら

「外国人に向けたライティング」というと、少し変わった作業に思われるかもしれません。けれど私はこうしたサイト用の記事を制作しながら、むしろ「外国人向けのテキスト制作には、読みやすいライティングのコツが凝縮されているのではないか?」と感じてきました。

たとえば、最初にお伝えした「常識を疑うこと」の大切さ。「The Travel」という海外のサイトに掲載されている、「初めて日本を訪れた人がおどろく20のこと」というタイトルの記事を見ると、20位「神社や寺がたくさんある」にはじまり、「自動販売機が街中至るところにある」「時間を守るのが当たり前」「トイレにウォシュレットがついている」「コンビニエンスストアが素晴らしい」などの項目が並んでいるのですが……どれも、日本に住んでいる人からしたら当たり前のことばかりですよね。でも、初めて日本を訪れる人にとってはおどろくべきこと。

「The Travel」のサイトより

「初めて日本を訪れる人」は、「自分とはまったく違う常識を持つ人」の最たる例ですから、こうした人たちに向けて記事をつくることは、「読者は自分とは違う」という意識づけをするためのとてもよい練習になりました。

また、誤解の余地のない文章をつくることの重要性も、「まず日本語で原稿を書いてから、英語や簡体字、繁体字、韓国語などの各言語に翻訳を行なう」というフローをとる海外向けの記事制作のなかで強く意識したことです。

たとえばひとつの記事に対して英語、簡体字、繁体字の三言語を制作する場合は、三人の翻訳者さんに発注することになるため、「誰が読んでも同じ意味にとれる」ことがとても重要なのです。

おわりに

このようにCINRA, Inc.の編集者たちは、自社メディア / クライアントのオウンドメディアの垣根や、ジャンルや読者ターゲットの垣根を超えた記事制作を行なうなかで、本質的な記事制作の力を磨いてきました。

オウンドメディアは、その企業の広報や人事、新規事業部など、記事づくりのプロではない方々が運用していることも多くあります。もし、メディアでの新規立ち上げ、運用、記事づくりに悩んでいらっしゃる方がいましたら、私たち編集者と二人三脚でよりよいメディアや記事づくりができればうれしく思います。ぜひCINRA, Inc. にお問い合わせください。

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