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CINRA編集者の印象に残った5つのソーシャルイシュー

CINRA, Inc.の note編集部です。

昨年リニューアルしたメディア「CINRA」は、芸術文化をルーツに持ち、あらゆるクリエイティブな意思を届けることを目的に運営しています。また、一人ひとりの情熱や違和感、問題意識に耳を澄ませ、社会や文化に好奇心を抱く人に向けて、思いを媒介するメディアとして、ソーシャルイシューに関する記事を多く取り上げています。

https://www.cinra.net/

日本に限らず世界中で日々多くの情報やニュースが発信されていますが、CINRA編集部のメンバーは、社会の出来事にアンテナを張り巡らせて、メディアで取り上げるべきことをつねに議論しています。

編集者同士による情報交換の場

CINRAには10人以上の編集者が在籍。それぞれの興味関心事はさまざまで、音楽、映画、演劇などのカルチャーだけでなく、政治、ジェンダー、環境問題など多岐にわたります。そのため、編集部員とCINRAのメディアプランナーが各々にキャッチアップしたソーシャルイシューを持ち寄り、互いにシェアする時間を定期的に設けています。

また、シェアするだけでなく、CINRAとして記事にするならどのような切り口が良いかといった話し合いをすることで、企画化のヒントを得ることもあります。情報のキャッチアップ方法は部員によって違いはありますが、国内外のニュースサイト、SNSの分析ツール、個人のSNSアカウント、新聞社サイト、専門情報サイトなどを見ることが多いそう。その後の企画決定までのフローについては、あらためて記事にする予定です。

今回は、社内でシェアされた情報やニュースのなかで印象的だったものを、いくつかシェアしたいと思います!


1)消滅の危機にある言語

世界には7,000以上の言語が存在しています。しかし、時代とともに消滅しうる言語もあることをご存知でしょうか。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)が2009年に発表した「Atlas of the World’s Languages in Danger(第3版)」によると、世界で約2,500の言語が消滅の危機に瀕しているといいます。

日本国内でも消滅危機のある言語・方言は存在していて、極めて深刻なのは「アイヌ語」、重大な危機は「八重山語(八重山方言)」「与那国語(与那国方言)」、続いて「八丈語(八丈方言)」「奄美語(奄美方言)」などがあります。また、東日本大震災による影響で被災地のコミュニティーの在立が危うくなることが、現地の方言の衰退を加速させかねないという調査結果も発表されました。

当たり前にあった言語さえも、部族や情勢、環境などによって消滅する可能性がある。つまるところ、日本の公用語が「日本語」であることさえ、これから先も絶対に続くとは言い切れないのかもしれません。未来を生きる子どもたちがどんな言語を多用するのかーー思いを馳せるような事案でした。

参照元:文化庁「消滅危機にある言語・方言」

2)漫画原作者が同性婚実現のための団体に寄付

原作漫画が200万部を突破し、2020年にテレビ東京にてドラマ化された『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』)。男性同士の恋愛を描いた内容で、4月8日には映画版が公開されたばかりの大人気作です。その原作者の豊田悠さんが、映画化に伴う原作使用料の一部を、同性婚を実現するための団体「Marriage For All Japan - 結婚の自由をすべての人に」に寄付すると、Twitterに投稿しました。

作品の題材にとどまらず、現実の世界で生きる当事者の暮らしが良くなるための行動に、多くの反響が集まりました。BL漫画が好きな女性の市民権は得られつつある昨今。しかしLGBTQの権利などに関する議論も同時に行なう必要があると、この情報を取り上げたCINRA編集者は言及していました。

参照元:豊田悠さんTwitterより

3)マイノリティーのキャラが普通に登場する『モザイク・ストリート』

マイノリティーのキャラクターが「普通」に登場しているドラマが、日本のお茶の間で流れていたらーーそんな思いのもと制作された探偵ドラマ『モザイク・ストリート』がYouTubeにて公開中です。

同作の特徴は、登場人物の人種、民族、障害の有無、性同一性などがストーリーの展開要素として特別視されることなく描かれていて、それぞれの属性が「すでに社会に受け入れられた状態」で登場していること。また出演している俳優たちはマイノリティーの当事者だといいます。

今年の『アカデミー賞』で作品賞などを受賞した映画『コーダ あいのうた』も、当事者であるろう者の俳優が演じています。その舞台裏では、作品づくりのあらゆる場面で手話にまつわるサポートを行なうDASL(ディレクター・オブ・アーティスティック・サイン・ランゲージ)が採用されるほか、日本でも、映画やドラマなどの性的シーンの撮影現場で演者と製作側のあいだでコーディネートする役割のインティマシー・コーディネーターのお仕事が注目され始めています(CINRAではDASLの視点で『コーダ あいのうた』を記事化)。

参照元:企画・脚本・制作総指揮の松崎悠希さんのTwitterより

4)国内の「婚姻数」2年連続で過去最低

厚生労働省が2022年2月に「人口動態統計速報(2021年12月分)」を公表しました。それによると、2021年の婚姻件数は51万4,242組で、これは戦後最少であり昨年比は4.3%マイナスの結果に。

2020年から始まったコロナ禍によって、婚活・結婚事情も変化しているという話は、当初から多くのメディアが取り上げています。上記の2022年データをもとに、最新の婚活事情をまとめた記事もあります。記事によると、この減少傾向が長期トレンドになっていることは、コロナ禍によるものだけでなく、日本全体でそもそも婚姻年齢の人口が減っていることも大きいといいます。

CINRAでは、婚姻数が減っているという数字だけを見ることはありません。「法律でつくられる信頼関係に縛られることなく、独自のパートナーシップが生まれているかもしれない」「人生のなかで結婚の優先順位が変わってきているのかもしれない」など、一つの事柄を多面的に見ることによって、新たな社会背景が浮かんでくるーーそのような視点を持ちながら、編集部員は社会課題と向き合っています。

参照元:厚生労働省「人口動態統計速報(2021年12月分)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2021/dl/202112h.pdf

5)犬猫のマイクロチップ義務化

「犬猫にマイクロチップを装着することを義務化する」というニュースが今年頭に飛び込んできました。2022年6月に動物愛護管理法が改正され、ブリーダーやペットショップの犬猫は義務に、すでに飼われている犬猫へは努力義務で装着するという制度です。

大切な家族である犬猫の体にチップを入れることについて、飼い主たちのなかで意見や考えが割れ、各所で賛否両論がなされているニュースのひとつではないでしょうか。そんななか日本トレンドリサーチの調査によると、そもそも「義務化されることを知らない」と答えた人は76.3%にも及びました。飼っていない人も含んだ調査のため、これだけで認知度は測れないものの、半数以上の人に情報が行き届いていないことがわかります。

調査アンケートでも「装着させたい」「装着させたくない」「義務化についての考え」などさまざまな声がありますが、社内のシェア時にも、愛情を持って育てること、動物の幸せと人間の関わり方など、議論が発散されました。

参照元:環境省自然環境局

【情報提供者】
生田綾、原里美、原友昭(以上CINRA編集者)
妹尾ちあき、矢澤拓(以上CINRAメディアプランナー)


ソーシャルイシューをもとに企画化した記事・案件まとめ

芸術文化をルーツに持つ「CINRA」は、カルチャーニュースの背景にある社会課題に向き合い、メディアを通して記事を発信しています。最後にカルチャーとソーシャルイシューの掛け合わせによって生まれた記事や、クライアントとともに課題解決に取り組んだ案件をご紹介いたします。

メディア掲載記事

「グラミーに代わるアワードを」ヒップホップ文化の威信をかけ『グラミー賞』ボイコットの動きが

4月4日に行われた『第64回グラミー賞』の翌日に公開された記事。近年、『グラミー賞』とブラックカルチャーのあいだで起きたさまざまな出来事を遡りながら、新たな文化をつくったJ.Princeの功績などにも触れている。
(編集者:山元翔一)

調子が悪い=怠けてる、は違う。『自転車屋さんの高橋くん』作者の「孤独を和らげる」漫画

久光製薬株式会社のタイアップ記事として企画・制作された記事。女性特有の症状「更年期障害」を、松虫あられさんが漫画化。社会的に理解されにくいこの課題を漫画にすることで多くの人にわかりやすく伝えることができたうえに、SNSのシェアでも共感が広がった。
(編集者:服部桃子)

下顎にマオリ族のタトゥーを施した女性アナウンサーが誕生。世界が絶賛する一方、日本は

昨年12月に、ニュージーランドのニュース番組に登場したオリーニ・カイパラさんは、マオリ族の民族的な下顎タトゥーを施していた。それが放送後にネット上で大きな反響を呼んだ。CINRAでは、世界のカウンターカルチャーに精通するケロッピー前田氏を筆者に起用。オリーニさんの思いや、マオリ族、タトゥーカルチャーを述べつつ、日本の現状にも触れた本記事は、他社のニュースサイトにも掲載され多くの人が知ることとなる。
(編集者:岩見旦)

クライアントワーク

森美術館『アナザーエナジー展』×Podcast制作

昨年、森美術館にて開催された『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』の展覧会に伴い、森ビル株式会社とCINRA, Inc.が運営するサイト「HILLS LIFE DAILY」でPodcastを開始。いまなお世界中で活躍を続ける70代以上の女性アーティスト16人の軌跡に光を当てた展覧会に込めた思いや、アーティストたちのエネルギーや信念を多くの人に伝えるべく、CINRAではコンテンツを制作。3名のゲストをPodcastに招き、会期終了までに全6回のインタビューを配信。展覧会と音声コンテンツの新たな関係性を生み出した。

Women’s Health Action『わたしたちのヘルシー』×オンラインイベント

現代日本における女性の健康推進の必要性とその課題について考えるWomen’s Health Action実行委員会。CINRA, Inc.は委員会とともに、その課題解決の一つとして『わたしたちのヘルシー』を実施。オンラインイベント、サイト制作、CINRA記事掲載などを行ない、まだまだ理解されていない女性特有の悩み(生理痛、PMS、妊活など)や健康について発信。専門家と著名人が正面から向き合い話す機会を設けることで、女性たちが自身の心と体をより知るきっかけとなった。その後、フジテレビ系『ノンストップ!』でも本イベントが取り上げられ、広がりをみせた。


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