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企画の成立とは裏返すと面白いものだと行間でよく学べる一冊をご紹介します。

名優・松田優作に名ライター・丸山昇一あり。この刎頸の交わりとは言い難い、それでいて主従関係でもない、ただ面白い企画をそして世間を驚かせたいという一念の共通項のみが、そうした形容を感じられても可怪しくない共同作業の軌跡がまとめられています。
と言ってもタイトルにもある通り、未発表集なのですべて不成立の作品群です。
かつてNHK教育テレビ番組──「知るを楽しむ」第3回目の「イノセントデビル」というテーマタイトルにおいて、松田優作主演予定の幻の企画について、こちらのシナリオ集が採り上げられ、その中から『荒神』を影絵アニメーションで紹介していました。その番組がきっかけでこのシナリオ集を購入したのです。
『荒神』は中上健次原作の短編が元になっています。作品のもつ深い闇を映像への置き換え方、脚本化への技術的アシストでもあり、松田優作をあて書きとして作品世界観に表現者の優作氏を没入させる意味があったと思われました。その点で全く万人受けしない企画をポピュラリティを完全に得ていた松田優作が演じる期待値の振り幅は二分されるものになっていたのは間違いのない企画でした。

当時の80年代半ばから90年代について感じる、資金回りがそれなりに円滑化し、作品供給がある程度し易い制作環境がありました。これはメジャーにおける売れるか、または一概に言いきれなくても意義を見い出せるか否かという価値判断が現在よりも健全な時代があった背景も欠かせません。
優作氏が存命であれば、当時の勢いをもってして成立した可能性は高いかもしれなかった、そのポテンシャルは高いシナリオであったのは確かだと思います。

ちなみにその他収められていた未発表集として、以下5篇がありました。
「たった一人のオリンピック」
「船頭・深谷心平」
「プロデュース」
「チャイナ・タウン」
「緑の血が流れる」

これは私見でしかないのですが、何故成立しなかったのか、分かる気がするのです。体裁は整えられシチュエーションは練られているのに、何かが足りないのです。つまり不成立になるにはなる理由があるのではないかと思います。
このシナリオ集が80年代に書かれたものである点、時代風俗に工夫を仮に推敲しても難しいものを私は感じました。

得てして形になりやすい企画に共通するのは、
・第三者を唸らせる強烈な引きがある。
・人物描写の細かさ、人格までが想像できる設計が仕組まれている
・背景のリアリティ、実現性ありでの訴求力
・ターゲットが見える、意図が明確
・オマージュやモチーフを下敷きにしても何か越えてきそうなモノがある。

言い古された、これは有効な枕文句か分かりませんが‘斬新性’というポイントなのでしょう。
例えば、私が何か企画したいと思うとしてふと思うのは、見たことのない景色で起きる物語です。概ねドラマツルギーの範疇で具現化されていないものはなくなったかもしれない中で、最後に残るアイテムはやはりロケーションの選び方、何処で何を撮りたいか、そこに注力することがベターな考え方ではないかと思うことがあります。

若干シナリオの成立云々とは異なりますが、様々世に成立していく為に第三者への説得力の鍵はそうした部分にも隠されているかもしれません。

【インフォメーション】
下関名画座 第12回上映会
クリスマスはモンロー🧑‍🎄🎄
マリリン・モンロー没後60年記念上映「百万長者と結婚する方法 吹替版」
■日程 2022年12月17日(土)
■場所 シーモール下関2Fシーモールシアター 
■作 品「百万長者と結婚する方法 吹替版」(1953/アメリカ/95分)
監 督 ジーン・ネグレスコ
出 演 ※吹替版上映となります
ローレン・バコール(大谷育江)
マリリン・モンロー(Lynn)
ベティ・グレイブル(ファイルーズあい)
キャメロン・ミッチェル(落合福嗣)ほか    
■内 容 愛のための結婚なんて時代遅れと決め込み、大金持ちとの結婚を夢見るニューヨークの3人の美女モデル。超豪華マンションをなけなしの金で借りて、百万長者を掴まえようとするが、結局3人とも思わぬ恋に落ちてしまう。
■上映時間①10:30 ②13:00 ③15:30 ④19:30
1日4回上映。それぞれ上映後は5分程度の作品解説あり。        
■チケット 前売り1,000円 当日1,200円
シーモール1階インフォメーションカウンターにて取り扱っております。3時間無料駐車サービスあり。
■協賛 公益財団法人下関市文化振興財団公益社団法人
下関市シルバー人材センター
元祖瓦そば たかせ
金田博美
■後援 下関市
■提供 株式会社モービーディック
■協力 株式会社cinepos
■問合せ 山中プロダクション(090-8247-4407)
36歳で亡くなったモンローが存命なら、96歳でした。没後60年の節目で、彼女の生き方も再注目されています。クリスマスムード一色のとき、魅力溢れるモンローのロマンティックコメディを劇場でお楽しみ下さい。

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