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生まれてはみたけれど

ハリウッドの古典コメディが続いていたので、今回は邦画から。1932年封切りの巨匠・小津安二郎の大人の見る絵本『生まれてはみたけれど』です。

小津作品というと、伝統的とか、遅いとか言われますが、私はユーモアたっぷりだと思っています。時にはブラックやらピンクだったりしますが、クスクス笑えます。そして一周回って新しい。子どもたちの間で広まる妙な流行も現在とは一味ちがうワイルドさを醸し出してます。いつか姉妹作品の『お早う』も紹介しますね。

5つのおすすめポイント

1.「お父さんはすごい」という子どもが、しがないサラリーマンの父親をぶったぎる。抵抗の末に出した結論がまたいい。子どものほうが大人です。

2.ドラえもん的なガキ大将制度。喧嘩が強いやつが一番?頭がいいやつ?それともブラックホース的にあいつ?

3.だだっぴろい郊外の空き地。道を歩くことになれている私からすると、道でなく空き地を道として歩いているだけで変な感じ。

4.映画上映シーン。上映の仕方や楽しみ方も歴史的な観点から興味深いですが、観客たちの間でかわされる視線が尖すぎて痛い。

5.小津なのにトラベリング撮影などカメラが動いている。この作品だけじゃなく、戦前のものは意外と躍動感あります。

小津の大ファンであるフィンランドの監督アキ・カウリスマキは、自分の墓には「生まれきてはみたけれど」と掘ると小津生誕100周年を記念したインタビューの中で言っています。この映像を見ると、カウリスマキの世界観と小津の世界観の交わりが垣間見れて面白いです。



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