しまぷんぷん

会社員です。簡単に読める超短編小説、エッセイ、写真など、不定期に更新しています。

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マガジン

  • 超短編小説集

    どの小説も、2〜5分で読めます。 軽い気持ちで読んでみてください。

  • エッセイ

    思いつくままに書いています。

  • 【連続小説】しおり

    全5話からなる連続小説です。各話とも短いので簡単に読めると思います。読んでくださると嬉しいです。

  • 【連続小説】オリジン

    最初の物語を読み切りの超短編小説として書きましたが、連続小説の形に変え、全9話で完結となりました。

  • 写真

    日常の風景を撮っています。

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【超短編小説21】無限のオーガスト

マモルは本を読むのを止め、静かに走るオーガストの窓から産業廃棄物の森を眺めた。 ◇◆◇◆◇◆◇ K市には、人工の島が存在している。K市の北にある山を削ってできた土砂を、南の海岸の沖に運んで埋め立てて造られた島だ。 その人工の島〈テクノアイランド〉は、科学技術系企業のビルや高層マンションが建ち並び、K市の繁栄を象徴する島だった。 また、市の中心部とテクノアイランドを結ぶ高度自動運転旅客輸送交通(Automated Guideway Smart Transport)は、通

    • 【超短編小説29】岬にて

      雪が降ってきた。 私が住んでいるR県では雪が降ることなんてないから、車のタイヤはスタッドレスではない。このまま北へ進んで、凍った路面でスリップして事故を起こすことは避けたい。それは私の望んだ形ではない。それに、他人を巻き込む可能性もある。 遠くまで来た。 もう北へは進めない。 小さな灯台のあるこの岬に決めた。 フロントガラスの向こうに暗灰色の海が広がっている。 さっき岬の先端まで歩いてみた。眼下に見えた荒々しい波は、いとも簡単に私と車を吸い込むだろう。 決断したはず

      • 【超短編小説30】もう一つの季節

        この惑星には春夏秋冬に加えて、もう一つの季節が存在する。 その季節の名は、幽(ゆう)。 春が終わり、夏が始まる前、大いなる海から少し湿った風とともにやって来る束の間の季節だ。 私は忘れかけていた思念を、薄れつつある情動を、メモリに呼び覚まし、幽を迎える。 それは私である〈知体〉が、まだ人間として、個々の〈肉体〉を持っていた時代の名残りだという。 遥か昔(もしかしたらつい最近かもしれない)、人間とAIの境界が曖昧になり、徐々に人間とAIは融合し、緩やかに統一されていっ

        • 【超短編小説28】ひび割れる日々

          冬の朝の凛とした空気が好きだ。 電車を降りて、指定道路を歩きながら僕はひび割れのことを考える。 この世界では日常的にひび割れが発生する。何か月も発生しないときもあれば、1週間に数回発生するときもある。ひび割れの深刻度は〈CDC:Critical Degree of Crack〉という単位で表される。今日のひび割れはCDC-4だから、結構大きいひび割れだ。指定道路から外れないように気をつけよう。 ひび割れが発生する場所は決まっている。だから人間は、ひび割れの発生しない土地

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        【超短編小説21】無限のオーガスト

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          29本
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          2本
        • 【連続小説】しおり
          5本
        • 【連続小説】オリジン
          9本
        • 写真
          21本
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          1本

        記事

          【超短編小説27】惑星ユークレイン

          クリム半島の南端にある小さな都市アルプカの少し高い台地からは黒海が一望できる。黒海は今日も穏やかで、その名とは異なり、どこまでも鮮やかな青だった。そして黒海の上空には、アレが浮かんでいる。 □□□□□□□ 22世紀現在の地球は、政治も経済もユークレインを中心に回っている。 ユークレインは21世紀までウクライナと呼ばれていたが、今では英語名のユークレイン(Ukraine)という呼び名が定着している。全地球連邦(GF:Global Federation)の本部はユークレイン

          【超短編小説27】惑星ユークレイン

          【超短編小説26】小さい秋

          暑い夏が終わり、やっと秋になったと思っていたら、いつの間にか冬の足音が近くまで迫ってきている。 毎年、お気に入りのパーカを着ることなく冬を迎えてしまう。けれども今年は10月に入ってすぐに、お気に入りのパーカを衣装ケースから出して、スーツの隣のハンガーにかけていた。 10月も中旬を過ぎたその日、僕は在宅勤務が終わると、久しぶりにそのパーカを着て散歩に出かけた。 外は思っていた以上に寒かった。パーカのポケットに手を入れると、紙きれが入っていた。なにかのレシートだろうか。僕は

          【超短編小説26】小さい秋

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          僕だけが知っている夜

          僕だけが知っている夜

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          【超短編小説24】ウル追い

          北の森の奥深く、コレムトとイトナがじっと息を潜めている。 ウルを追って8日、やっとウルの巣を見つけた。 春はウル追いの季節だ。ウル追いは村の若い男の仕事とされている。ウルを捕まえて村に持って帰らなくてはならない。今年はコレムトとイトナがウル追いをすることになった。 コレムトとイトナは、ウルが巣穴から出てくるのを待っている。近づきすぎるとウルに警戒されてしまう。遠くに離れすぎると矢の勢いが弱くなる。 「コレムト」 「なんだ?」 「なんで俺たちは瞳の色が違うんだ?」 コ

          【超短編小説24】ウル追い

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          夜になると街は

          夜になると街は

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          【超短編小説23】幸せのトポロジー

          僕はドーナツを食べていた。 「コーヒーカップとドーナツは同じなのよ」 目を上げると、向かいの席に座っているハルコがコーヒーカップを見つめている。 僕はハルコが言った言葉を頭の中で繰り返してみたけれど、なんと応えていいのか分からなかった。とりあえず、ドーナツの美味しさを味わう。 「位相幾何学的に。あるいはトポロジー的にね」 「トポロジー?」 「そう、トポロジーが同じなの」 大学で数学を専攻していたハルコは、ときどきこういうことを言う。目に入る物を数字に置き換える。建物

          【超短編小説23】幸せのトポロジー

          【超短編小説】さよなら、カモデモア

          今日の海は穏やかだ。 太陽はまだ海の上に見えていて、空はブルーからオレンジのグラデーションに染められている。 僕はカモデモアと一緒に、防波堤の先端にある灯台の下に座り、長いあいだ海を眺めていた。 「俺は旅に出る」 「カモデモア、僕はずっと君と一緒に居られるものだと思ってた」 「俺も以前はそう思ってた。でも今は違う」 「どこへ行くの?」 「海へ」 「海?」 「ああ、ミスチルの『Paddle』のように」 僕は『Paddle』の歌詞を思い出す。 「つまり、未来へ行くってこ

          【超短編小説】さよなら、カモデモア

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          海辺の町、夜、光。

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          【超短編小説22】原極にて

          昔は、30か国以上の国に500箇所以上の原子力発電所があったらしい。僕の生まれるずっとずっと前のことだ。 現在、地球上の原子力発電所は、ここ南極にすべて集まっている。原子炉が全部で240基。発電効率は飛躍的に向上し、全世界の約40%の電力が南極から供給されている。残りの電力は、ほとんどの国では太陽光発電と風力発電、そして日本やインドネシアのような火山国では地熱発電によって供給されている。 そして、原子力発電所が集まるこの南極(Antarctic)は、いつしか原極(Atom

          【超短編小説22】原極にて

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          散歩(蜜を避けて静かに)

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