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<保全ニュース>南米ペルー 、新たな保護区の設置で息を吹き返す重要な漁場

漁業はペルーの生活の一部です。

ペルーで消費される魚のうち、3分の2は南米有数の漁場であるマル・トロピカル・デ・グラウ(the Mar Tropical de Grau)で獲れています。この海域は、潮流が合流するため豊富な海洋生物を育んでおり、クジラ、ウミガメ、ジンベエザメなどが生息しています。

しかし、この海域もまた、石油、ガス採掘、乱獲、沿岸開発、規制なき観光といった人為的な圧力にさらされており、生態系が脅かされる恐れがあります。

そんな中、この漁場に新たな活路が生まれています。

今年4月26日、ペルー政府は同海域に海洋保護区を設立しました。採掘を禁止し、漁業を規制することを発表しました。保護区の規模としては、わずか1,155平方キロメートル(約446平方マイル)と、ニューヨーク市よりも少し大きい程度と小規模ですが、約70%のペルーの海洋生物が生息する密度の高い海域なのです。

当然ながら、保護活動家たちは今回の決定を称賛しています。

「私たちは10年間待ち続けました」

CIペルーの海洋部門責任者であるシンシア・セスペデスは語ります。「この大胆な保護措置で、マル・トロピカル・デ・グラウはまた海洋生物の繁栄の場となるでしょう。」


ペルーの伝統的零細漁師は、国内で消費される魚の80%を供給している © GUSTAVO CARRASCO

セスペデスによると、保護区の創設には、石油・ガス業界や漁業業界からの強い反対があり、保護区設立への支持を得るために地元の漁師たちと協力する必要があったとのことです。当初、1万5千人以上の漁師を抱える地元の漁業コミュニティも、保護区設立が自分たちの漁業権を侵害するものと捉えて反対していました。

そこで、コンサベーション・インターナショナルは長年にわたり、地元の漁師たちと交流し、協力し、海洋保護区の恩恵を説明してきました。コンサベーション・インターナショナルの調査によると、適切に管理された海洋保護区は魚類の回復だけでなく、食料安全や地元コミュニティの収入向上にも役立ちます。調査では、最高レベルの保護がなされた海洋保護区は、制限のない開放水域より、魚種がほぼ3分の1多く生息していることが示されました。また、世帯収入の相対的な指標である平均富裕度指数は、保護区に近接するコミュニティの方が、33%高くなっていました。


ザトウクジラは毎年、出産のためにグラウ海域を訪れる © SARAI CORTEZ CASAMAYOR


ペルーの漁師たちは法律上、海岸から8キロメートルまでの海域で漁業を行う権利が与えられていますが、今回の規制は、これまでたびたび規則を無視してきた商業漁業の侵入からも彼らを守ることになります。

地元漁師の支持を得ることが重要だった、とセスペデスは言います。「地元コミュニティと連携する海洋保護区は、より効果的です。今回の保護措置により、この地域は今後何世代にもわたって健全な魚類の個体群を維持することができるでしょう。」


投稿 :Mary Kate McCoy  ※原文はこちら
翻訳編集: CIジャパン
TOP画像:ペルーのマル・トロピカル・デ・グラウ国立保護区で、ボートの上を飛ぶ鳥 © Sarai Cortez Casamayor

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