ヴィヴィアン・マイヤーを探して
この記事は、2019年1月28日19:47にTumblrに投稿した記事を転記したものです。
ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」を鑑賞した。
アマチュア写真家ヴィヴィアン・マイヤーの人生に焦点を当てた実話ドキュメンタリー映画だ。
ここでアマチュアという言葉を使うのは、彼女は写真を生業としてお金を稼いでないから。
写真業界においてプロとアマチュアの境界線が不明確なところがあるけど、僕はそういうところで区別してる。
で、なぜアマチュア写真家なのにドキュメンタリー?と思う人もいると思うけど、この人まじですごい。
以下ざっくりとしたあらすじ
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2007年、ある青年が市民オークションでトランクを購入。中には大量のネガが入ってて、現像した写真をネットにアップしたら好反響。
撮影者の名前である「ヴィヴィアン・マイヤー」しか情報がなく、特定できなかった。
2009年にたまたまGoogleで検索したら、数日前に彼女が亡くなった記事を見つける。
そこから青年が調べに調べた結果、ヴィヴィアンは写真を一度も公表したことがない無名の乳母ということが発覚。
映画は生前ヴィヴィアンと関わりのあった友人や世話になった子供達のインタビュー動画になってる。
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画像はヴィヴィアンの写真を発見・拡散した青年ジョンマルーフ
これだけでも凄い話だよね。
事実は小説よりも奇なりとよく言うけど本当にそれ。
鑑賞中に、嫌われ松子の一生が過った。
嫌われ松子の一生はフィクションだけど、本当にそんな人生を歩んでる。
ヴィヴィアンは乳母で生涯子供がおらず、晩年は乳母時代に世話をした子供達に養ってもらってて、借りてた貸し倉庫の維持費が払えずに、中の備品を市民オークションにかけて青年が購入したってオチ。色々奇跡が重なってるよね。
で彼女は独学で写真をしてたんだけど構図や被写体に凄いパワーがある。
二眼レフ、ローライフレックスを使ってた。
このカメラだからこそ撮れた写真なんだと思う写真がたくさんある。
中判フィルムで写真がスクエアだから無駄な情報がなくすんごいスマート。
(二眼レフはファインダーがプリズム式になってて上から覗いて写真を撮るタイプだから、一般的な顔に構えて撮るカメラと違って、被写体が構えず自然体で撮れていた)
以下、写真
凄くない??
インタビューのとき印象だったのが
「もし彼女が生きていても作品を世に出すことは拒んでいただろう」って言葉。
彼女は一般的には奇人変人の部類と思う。
わざとフランス訛りで喋ったり、自分をスパイだと名乗ったり、偽名をつかったり。
出身はニューヨークなのにそこを何故かひた隠しにして家族友人のことを知ってる人はほとんどいない。
映画の中で、彼女がニューヨーク出身ということを生前関わりがあった人たちに告げるシーンが印象的。誰も信じてなかった。
彼女には収集癖があって、新聞やガラクタ、ゴミ箱のゴミを好んで集めた。そういったコレクションの一つとして写真を撮っていた。
その点については僕も(烏滸がましいが)共通点を感じる。
自分が「良い」と思った瞬間に焦点を当ててシャッターを押す。写真の良いところはその一瞬の絵を完全に切り取ることができるところだ。と思っている。
ヴィヴィアンの写真は、写真をしているものにとっては完成されつくした常軌を逸した作品と感じた。
自分も写真を撮る瞬間に「言葉」はない。
が、彼女の作品は見る側にまで、言葉はなく、感覚に直接突き刺さる作品が多い と思う。
気になった方は是非見てください。