選択の外にも世界が広がっている
あまり選ばせてもらえなかった過去、そして、遠慮しがちだった過去の反省から、今の僕は、【自分が選んだもの】を大切にしてる。
〈いいじゃん〉
うん。僕も気に入ってる。
だけど、この信念がちょっぴり揺らぎそうになっちゃって。
シャル
主人公
〈ロミルダ〉
妖精
ピザを食べたの。複数人で。
そこにさ、それまでの僕だったら絶対に選ばないようなピザがあったの。
〈どんなピザ?〉
醤油ベースの、餅がトッピングされたピザ。
何回も言うけど、それまでの僕だったら選択肢にすら入らないようなピザ。
それがね、めちゃくちゃ美味しかったの。
もうびっくりしちゃって。
特に、最近、このときの経験を思い出して、醤油ベースのハンバーガーを食べてみて、これもまたものすっごく美味しかったから、なおさら。
あのとき、あのピザを偶然食べていなければ、僕は和風の良さを知らないままだったのかって。
この出来事がちょっぴり不安を呼び起こしていて。
〈不安?〉
世界は広い。
僕の選択の外にも、素晴らしいものがある。
だったら、なまじ下手な選択はしない方が良いんじゃないかって感じちゃう。
冒頭で言ったように、最近やっと「自分で選んだもの」を大切にできるようになってきたのに、それを頭から否定してしまうことを考えちゃって。
この気持ち、うまく言葉にできないんだけど、たぶん、不安が近いと思うんだ。
選ぶことが、ものすごくこわいことに感じてきて。
〈んー…こう考えてみたら?〉
〈選択肢の外にも世界は広がってる。だから、選択し直し放題だって〉
〈シャルはさ、一度選択したことは変えちゃいけないって、ちょっと強く考えすぎるところがあるんじゃない?〉
〈だから、選択に真剣なの。それは良いんだけど、考えすぎると、視野が狭まっちゃうし、今みたいに選択そのものがこわくなっちゃう〉
〈広い世界に触れたとき、状況が変わる。そんなときは、選択肢も変わって当然でしょ?〉
〈だから、新しい世界を見つけたら、選択を変えてもいいし、変えなくてもいい。そんな風に思えれば、もっと気楽に、【選ぶ】ってことができるんじゃないかな〉
……無責任すぎないかな?
〈それは……うん、その気持ちはわかる〉
〈でも、やっぱり、おそるおそる選ぶよりは、楽しく選んだほうが、楽しいと思うな〉
それはそう。
んー……もうちょっと気楽に、かぁ。
一番むずかしいことかもしれないや。
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