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円相場 一時1ドル=155円台まで値上がり 円高の要因って何?

7月18日の東京外国為替市場は、為替をめぐる日米の要人の発言などを背景にドルを売って円を買う動きが広がり、円相場は一時、およそ1か月ぶりの水準となる1ドル=155円台半ばまで値上がりしました。

外国為替市場では、日本時間の7月17日、アメリカのトランプ前大統領がドル高・円安を懸念する発言をしたと報じられたことや、河野デジタル大臣が日銀の利上げの必要性に言及したと伝えられたことを受けて、ドルを売って円を買う動きが強まりました。

さらに、FRB=連邦準備制度理事会の高官が利下げの時期が近づいてきているという認識を示したことが伝わり、7月17日のニューヨーク市場でも円を買う動きが広がりました。

こうした流れを受けて18日の東京外国為替市場では、円高ドル安が進み、円相場は、一時、1ドル=155円台半ばまで値上がりして、およそ1か月ぶりの円高水準となりました。

午後5時時点の円相場は、17日と比べて83銭、円高ドル安の1ドル=156円24銭から26銭でした。

また、ユーロに対しては17日と比べて55銭、円高ユーロ安の1ユーロ=170円79銭から83銭でした。

ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0931から32ドルでした。

市場関係者は、「政府・日銀による市場介入への警戒感もあり、投機筋の間でドルを売って円を買い戻す動きが出ていると考えられる」と話しています。

円高の要因は 市場関係者の見方

市場関係者は、円高が進んだ背景には主に4つの要因があると指摘しています。
1 トランプ前大統領の発言
まず、アメリカのトランプ前大統領がドル高・円安を懸念する発言をしたと、日本時間の7月17日午前に報じられたことです。
トランプ氏はメディアのインタビューで「私たちは大きな通貨の問題を抱えている。強いドルと弱い円、弱い人民元で、これはとんでもないことだ。アメリカは非常に悪い立場にある」と述べ、ドル高の是正を示唆しました。

2 河野デジタル相の発言
2つめは、日本時間の7月17日昼すぎ、河野デジタル大臣がアメリカのメディアのインタビューで日銀の利上げの必要性に言及したと伝えられたことです。
投資家の間では、日本の閣僚がこうした発言をするのは異例と受け止められ、日銀が今後、利上げを進めるという観測が広がりました

3 FRB高官の発言
3つめが、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会高官の発言です。
FRBのウォラー理事が7月17日の講演で、利下げの時期が近づいてきているという認識を示したことが伝わりました。
また、この日に公表されたFRBの最新の経済報告で、2024年11月の大統領選挙などによる不透明感から、今後6か月は成長が鈍化するとの予想が示されました。
こうした点も背景に市場ではFRBが9月にも利下げに踏み切るとの見方が強まっています

4 政府・日銀による市場介入への警戒感
さらに、日本政府・日銀による市場介入への警戒感があります。
外国為替市場では、先週7月11日に円相場が4円以上円高方向に動く場面があり、政府・日銀による市場介入が行われたとみられます。
この日、アメリカで発表された経済指標の結果などを受けて円相場が円高方向に振れたタイミングで、介入が行われたのではないかとの見方が出ています。
7月12日にも急速に円高方向に振れる場面があり、市場では2日続けて市場介入が行われたのではないかという見方が広がっています。
過度に円安方向に動いた場合だけでなく、円高方向に振れた場合でも市場介入があるのではないかという警戒感が高まっていることが、円高が進んだ要因の1つと指摘されています。

一方、足元の円を買い戻す動きについて市場では、短期的な取り引きを繰り返して利益を得ようとする「投機筋」の動きもあるとみられています。
ヘッジファンドの動向を示す、CME=シカゴ・マーカンタイル取引所の「IMM通貨先物」のデータで投機筋のポジション(持ち高)とされる部門をみると、2021年3月以降、投機筋は一貫して円を売り越し、このところ続いてきた歴史的な円安局面に大きく関わっているとの指摘がありました。
こうした中で、日銀の金融政策を決める会合を今月7月30日と31日に控え、日米の要人による為替をめぐる発言や、市場介入への警戒感などから、投機筋がドルを売り、円を買い戻してポジションを調整する動きが出ているとの指摘があります。

専門家「トランプ前大統領発言がサプライズに」
外国為替市場で円高が進んでいる要因について、三井住友銀行は、アメリカでの早期の利下げ観測、トランプ前大統領がドル高・円安をけん制した発言、それにバイデン政権による半導体業界への規制強化に対する警戒感を背景にした日米の株安の3つの点をあげています

このうちトランプ前大統領の発言については「市場参加者の中では、トランプ氏が大統領に再選するという思惑が強まりつつある。トランプ氏は従来から自国の産業と雇用保護などの観点からドル高に対する警戒感を示してきたが、人民元安に加えて円安についても言及があったことが市場参加者にとってサプライズとなった」と指摘しています。
また、先週、政府・日銀による市場介入が行われたとみられることについて「為替介入があったとされる時間帯は非常にサプライズなものだったので、市場参加者としてはいつ為替介入があってもおかしくないという一定の警戒感が残り続けている」として、いわゆる投機筋などの円売りに歯止めがかかっているとしています。

その上で、今後の見通しについて「過度な円安は一時的に止まったが、このまま円高に進むのか、円安に戻るのかは同じくらいのリスクがある。今後もアメリカの経済指標が下振れていき、利下げが織り込まれることで円高が進むシナリオが考えられる。一方、トランプ氏の発言が市場で織り込まれて、また、株式市場も安定を取り戻すと、再び円安基調に戻る可能性もある」と述べて、円相場の先行きは不透明だという見方を示しました。

また、今後の注目点については「今月末には日米の中央銀行で金融政策を決める会合が開かれるので当面は日米の金融政策の動向が最も注目されている。11月のアメリカの大統領選挙まではまだ時間がかなりあり、今後何が起こるかを市場参加者も注目して見ている状況だ」と述べました。

林官房長官「日銀には適切な金融政策運営を期待」

林官房長官は午後の記者会見で、「足元の為替相場の動向に関してはコメントは差し控える。為替相場はファンダメンタルズ=経済の基礎的条件を反映して安定的に推移することが重要であり、政府としては為替市場の動向をしっかりと注視していく」と述べました。

一方、河野デジタル大臣がアメリカのメディアのインタビューで日銀の利上げの必要性に言及したと伝えられたことに関連し、記者団から「金融政策のあり方に閣僚が注文をつけたことをどう考えるか」と問われ、「日銀の金融政策は為替誘導が目的ではなく、物価安定目標の持続的・安定的な実現のために行われており、その具体的な手法については日銀に委ねられるべきであるという立場に変わりはない」と述べました。

そのうえで「日銀には引き続き政府と密接に連携を図り、適切な金融政策運営を行うことを期待している」と述べました。

円高 大手企業の経営者からは円相場の安定求める声

日立製作所の東原敏昭会長


外国為替市場で円高が進んでいることについて、大手企業の経営者からは円相場の安定を求める声などが聞かれました。

日立製作所の東原敏昭会長は、「円高に振れたり円安に振れたり非常にボラティリティーが高すぎる。誰がどういうことを言ったとかひと言ひと言が円相場にリンクするようなそういうことは望ましくない形ではないかと思う。安定的な為替相場が重要で、根本的には日本の経済が強くなってある程度の円高にいくことが自然だと思う」と述べました。


日本製鉄の橋本英二会長

また、日本製鉄の橋本英二会長は、「政府や日銀にはしっかりと安定化策をとっていただきたい。一方で、急激に円安が進んできたのも事実なので、円安によってコスト高になった業種と輸出で恩恵のある業種との間で正しい価格調整が行われるべきだ。それで円安の効果が行き渡り、逆にデメリットも分散される」と述べました。


三井住友銀行の高島誠会長

一方、三井住友銀行の高島誠会長は、「足元ではトランプ氏が再び当選する確率が高まったということを材料にいわゆるトランプディールのような影響も半ばあるのだろうが、年末にかけては一定程度、円高方向に進むというイメージで思っていたので、夏を前にして前触れ的な雰囲気が出ているのではないか」と述べました。

全銀協 福留会長「潮目が変わる可能性も」
全国銀行協会の福留朗裕会長は円高が進んでいることについて、「トランプ氏が、『大きな通貨問題を抱えている』という趣旨の発言をしたことで、これまでの円安方向のトレンドから、この一週間ぐらいで潮目が変わる可能性がでてきたと思う」と述べました。

そのうえで、「アメリカ経済の動向によって、相場が上下に振れやすい状況は続くと思うが、今後、アメリカは利下げ局面に入り、日米の金利差は縮小していくのが基本のシナリオなので、時間の経過とともに緩やかな円高方向のトレンドに移っていくのではないか」と考えられるでしょう。




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