【短編小説】 「フタツ氏の、じゃがいもと夢の時代」 (3400字)
煮える頃だ。ふつふつと音で分かる。空の、水色と黄色の混ざった箇所だけ描き終わりたい。集中力を要する過程だった。もしかしたら、今回は勝負できるかもしれないという予感があった。一筆ごとに確信へと変わる。そうしたら、肉じゃがでもしようか。なんも要らないかと、笑う。自分を納得したかった。
母がここを去ってもうすぐ半年になる。忘れられない味を再び、思い出す。それでもう悲しくもならない。今はそんな気がする。季節は確かに巡った。母は僕の前に姿を現さなくなっただけで、まだどこかで呼吸す