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京都移住とホームシックとイギリスの戦利品

ついに京都に移住した。

まさか本当に自分が京都に住むことになるとは……
引っ越してまだたったの一週間。
たったの一週間。
その「たったの一週間」に、やはり来た。
恐れていたホームシックだ。

何を隠そう私は、京都には縁もゆかりもない。初めて訪れたのが中2の修学旅行で、大人になってからは大好きなバンドのツアーの遠征で1年に一度ほど来るのみ。
京都の食べ物が好きとか景色が好きとか人並みにはあるけど、これといって何が何でも京都に住んでやるぞ!みたいな気持ちはまったくなかった。

そんな私が京都に来てからの「たった一週間」。
……慣れない。すべてが慣れない。
道行く人々の関西弁の響きや、知らない電車、初めて見るTVの番組。
自分が知らない新しい日常が、ただそこにはあった。

友達もほとんどいないし実家も遠いし、会いたい!と思ったときにすぐ会える距離にいられないのもつらい。

でも待てよ、このしんどさ知ってるぞ?前にも体験したぞ?とはたと気づいたら、それはどう考えてもかつてイギリスに移住したときだった。

数年前、20代後半の歳で生まれて初めて実家を出た。実家を出て、ひとりでいきなりイギリスに住んだ。一年間も。

そのときの、渡英してから最初の3週間くらいのホームシックたるやすごかった。すさまじかった。

まず渡英してたった数日後に、お気に入りのSONYのデジカメをスリに盗られた。これから毎日たくさんの思い出を残しておこうと思い切って日本で買っておいたデジカメだ。
そこでいきなり出鼻をくじかれて落ち込むも、話を聞いてなぐさめてくれる友達も家族もはるか海の向こうの遠い国。あんなに長年憧れてやっと来られた念願のイギリスだったのに、とにかく私は毎日日本での暮らしや友達の顔を思い出してわんわん泣いていた。本気で日本に帰りたかった。

それがどうしたことか、渡英して1か月後位から突然毎日が楽しくなった。友達もどんどんできた。やりたいことが次から次へと出てきた。
一年後日本に帰国するときは、あと数年はイギリスにいたい!と心から思ったものだ。あんなに毎日わんわん泣いていた私が、だ。

このとき、何が明確な理由だったかは今もわからない。ただ、私は確かに「戦利品」を得た。長年慣れ親しんだ場所から、まったく見知らぬ土地で楽しく生きていくための気の持ちようといろいろなコツを。そしてちゃんとそれを自分の力で乗り越えたという事実を。

その戦利品を使うなら、それはもうまさに今しかないのではないか。
知り合いもほとんどいない、今まで暮らした場所とはまったく異なるこの新たな地で、どうしたら一年後に「まだもっとここに住んでいたい!」と思えるまでになるのか。

これからこの新天地でどんな毎日が待っているのか、どんな人に出会えるのか。
まだ「たった一週間」の私には、心から楽しみでいる余裕はまだない。でもせっかく京都に住めたんだ。それはすでにまぎれもない幸せだ。
イギリスにいたころの私が残してくれた貴重な戦利品を、これから大事に使わせてもらおう。




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