「家族の絆と挑戦」~「虎に翼」の寅子と花江の物語~
今年4月から始まった、第110作目の連続テレビ小説「虎に翼」は毎日欠かさず観ている。朝は7:45に家を出ることが多いので、BSで観ることがほぼ日課になっているのだが、前作「ブギウギ」同様、ストーリーの運びは違和感なく、テンポもよく、飽きることがない。
主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、女性初の弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子さんをモデルにしている。物語は昭和初期からスタートし、寅子の成長や社会進出、さまざまな事件に立ち向かう姿を描いている。
タイトルの「虎に翼」とは「強い力を持つ者にさらに強さが加わる」という意味を持つ。いわば「鬼に金棒」と同義である。『韓非子』難勢篇に「虎の為に翼を傅(つ)く」とあるのが原典である。
時代設定も前作「ブギウギ」とリンクしており、第13週「女房は掃きだめから拾え?」では「ブギウギ」にて主人子・福来スズ子(趣里)のライバル・同志であった茨田りつ子(菊地凛子)が、家庭裁判所の広報啓発キャンぺーン「愛のコンサート」の出演者として再登場するという異例の演出もあり、朝ドラファンを喜ばせた。
前置きが長くなったが、個人的に満足度の高い作品であるということはなんとなくお伝えできているのではないかと思う。それはさておき、今作において、もう一つ注目すべきは「寅子と花江」の関係性である。
主人公・寅子とその親友であり義姉でもある猪爪花江(森田望智)の関係性は、二人の関係性は単なる親友から、まるで夫婦のような分業関係へと変化していく。
というのも、物語が進む中で、寅子の父・直言(岡部たかし)、はる(石田ゆり子)そして直道が次々と亡くなっていく中で、成人の寅子と花江が残された家族を養い育てていかなければならなくなった。寅子は外に出て働くことで稼ぎを得て、花江は家事全般を担い、かつ、子どもたちの世話をする。二人は女性であるが、これはあたかも夫婦で分業しているかのようである。
実際、寅子が仕事に全力を傾ける姿と家庭を顧みない姿とは表裏一体に描かれており、それに対する家族の不満も噴出する。本来、対等であるはずだった関係性の変化も、その過程で生じたものであった。
第15週の終盤では、花江をはじめとする家族が「家族会議」にて寅子に本音をぶつける。同時に、寅子の新潟への転勤が決まることで、家族との関わり方を見つめなおすこととなった。第16週以降は「新潟編」となり、花江とは「別居婚」状態となるが、こうした状況を経て二人はどのような関係性の変化を遂げるだろうか。これからも興味深く見守っていきたい。
ちなみに、伊藤沙莉と森田望智とは、いずれも朝ドラへの出演経験があるが、それ以外の共演作として、NHKドラマ10「これは経費で落ちません!」第7話がある。伊藤は、経理部の後輩キャラ的存在・佐々木真夕としてレギュラー出演していたが、森田は、仙台工場社員・藤見アイとしてゲスト出演した。
「寅に翼」の花江とは対照的な、キャピキャピのギャルを演じていたのだが、いずれの役柄も同一人物が演じていたということに気が付いたのは、つい最近のことである。きっかけは「これは経費で落ちません!」を観返していたためである。森田は、最近では一部で「憑依型女優」とも呼ばれるなど、さらに注目が集まっている。今後の活躍が楽しみである。
「虎に翼」は、歴史的な女性の実話をもとに、昭和初期の社会での挑戦と成長を描いた感動の物語である。主人公・寅子と花江の関係性の変化や、新旧朝ドラのキャラクターの交差といった見どころ満載の本作は、多くの視聴者を魅了しています。ここで紹介した実力派俳優たちの演技も光り、これからの展開にも目が離せない。
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