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ほろ酔い気分とがっかり感が同時に味わえる【リヨン②】

徹底的に贅沢をするときは、心地よい空間と体験を満喫するために入念な下調べが必要である。それは海外に限ったはなしではなくて、日本にいても同じ。職場近くでランチをする時も友人とのディナーも納得のいく食事時間を楽しみたいし、食事体験を粗末にするとその代償は自分自身に跳ね返ってくる。もちろん下調べしても、がっかりすることはあるのだが。

いつも利用するフランスのリヨン・サン=テグジュペリ空港。ここでの贅沢は必ず「OL Brasserie - Le Square」(オーエルブラッスリー・ルスクエア)。

リヨンに本拠地を置くサッカーチームOlympique Lyonのオフィシャルレストラン。店内のテレビ画面ではもちろんサッカーの映像が流れていて賑やかだ。店員は感じがいいし、一人でも訪ねても気兼ねしない。

いちばんのおすすめはSteak tartare。生のお肉にマスタードやケッパー、レモン果汁などを混ぜたもの。お店によってその味付けは異なり、生肉が好きな人はこの店に限らずぜひ食べてもらいたいフランス料理のひとつ。

これにたっぷりの揚げたてFrites。テーブルにはケチャップやマスタードやらの調味料が出てくる。

夜にフライトがあるとき、わたしはお昼のピークを過ぎた時間帯に入店して、底上げされたリヨン特有のボトルワイン(通称:pot)を注文し、タルタルを食べながら本を読む。その時間の至福といったら...。

まわりにはせかせかと、フライトまでの短い時間にさくっとランチをする人。ビジネスの打ち合わせで仕事の話をする男女。でもわたしは十分に時間がある。まだ飲んでいていいかな、いいやどうせフライトは長時間なのだ、機内食を食べるよりもレストランで美味しいものを味わっていたい、と自身に言い訳をする。

こんなふうにほろ酔い気分で搭乗口を確認しにいくと、がっくり、モニターの前で、フライトに表示されたAnnulé(アニュレ:キャンセル)の文字。それがフランス、喜びもつかの間、やれやれと思いながら、ため息混じりにカウンターで別便への手続きをする。

それでもまた大変な思いをするかもしれないのに、この味と時間を楽しみたくてまたリヨン・サン=テグジュペリ空港を利用してしまう。心に余裕があるから贅沢ができるのか、その代償をもちろん引き受けた上で。

Niveau 1 - Le Square, Zone publique, 69125, Lyon-Saint Exupéry Aéroport, France

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