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#1 エンパシーは奥深い:『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

12月に読んだ、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がとても良かった。読書が得意な方ではない私だけれど、カフェであっという間に読んでしまった。

個人的に良かった理由は主に以下3つ。

1) 多様性、エンパシーについて考えさせられるキッカケになる(主にコレ)
2) 母と子の対話、コミュニケーションの仕方の参考になる
3) 英国の教育事情が分かる

1) 多様性、エンパシーについて考えさせられるキッカケになる
「多様性」というものについては、大学時代に旅行やインターンで海外で過ごしたり、ワーホリで2年英国に住んでいたり、仕事でも海外の方と関わることが多いので、割と考えることが多いと思っている。そして、自分自身もリベラルだと思っているし、どんな国の方やバックグラウンドの方でも偏見を持たずに接するように心がけているつもりだ。
今回、この本を読んで、私が今まで「多様性」について考えていることは、どちらかというと「シンパシー」に近くて、「エンパシー」についてはまだまだ努力が必要だと気付かされた。

シンパシーとは、

「1.誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を理解して気にかけていることを示すこと」「2.ある考え、理念、組織などへの指示や同意を示す行為」「3.同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解」

とオックスフォード英英辞典のサイトには書かれているらしい。

エンパシーとは、ケンブリッジ英英辞典のサイトによれば

「自分がその人の立場だったらどうだろうと想像することによって誰かの感情や経験を分かち合う能力」

と書かれており、著者によれば、

つまり、シンパシーの方はかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似た意見を持っている人々に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくとも自然に出てくる。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。シンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。

ふむふむ。エンパシーは「知的作業」。

なるほど、コミュニケーションにおいて、たまに失敗をしてしまうことがあるけど、それは、この「エンパシー」が足りなかったんだなー。そして、「エンパシー」とやらは、日本人同士や、家族という小さいコミュニティの中でのコミュニケーションにおいても非常に重要だなと感じたのが大きな気づき。

もう一つ興味深いのは、リベラルで、20数年もイギリスに住んでいて、私よりも数倍多様性やエンパシーに気を付けているであろう著者でさえ、何気ないたった一言で相手を傷つけてしまった経験があるということ。多様性というのは、本当に深いし複雑だ。

私の娘がティーンになる頃には、日本はもっと移民を受け入れているだろうし、LGBTの方がより普通になっていたり、色んな国籍のクラスメイトがいたり、色んな家庭環境の子がいるかもしれない。今みたいに、外国の方を見たらガイジンとか、片親が日本人ではない子をみてハーフとか言うことは普通でない(=差別的でおかしい)ということがより常識になってきているかもしれない。

多様性への理解は、やはり親との会話や親の態度が大きな影響を与えると思っている。これからの未来、自分の娘や、子供たちが住みやすい社会にするためにも、さまざまなバックグラウンドの方達の気持ちを慮る、理解し合えるように親としても常に勉強し続けて、子供と会話の中でも、言葉に気をつけないといけないなと感じた。

2) 母と子の対話、コミュニケーションの仕方の参考になる
この本を読んでいて、もう一つ興味深かったのは、著者と息子さんがものすごく深いことを日々話しているなー、ちゃんと対話しているなーと感じたこと。私は親とそれほど深い会話をしてこなかった。親はわかってくれないだろうと思っていたし、実際に、私が期待するような回答が返ってきたことはあまりなかったし、今も話を振ってみても思ったように広がらない。ここまで深く話せるのは、信頼関係もさることながら、息子さんが母親を尊敬しているからだし、母親である著者の知識と説明力もあるからだろうなとも感じた。私も、娘がティーンになった頃に、ここまで深い話ができるように、コミュニケーションを丁寧にしたいし、どんな質問にも私なりの考えを伝えられるように準備をしておきたい。

3) 英国の教育事情が分かる
興味深かったのは、英国の公立学校教育で、キーステージ3(7年生から9年生)で導入される「シティズンシップ・エデュケーション」というもの。
本書によれば、

「「シティズンシップ・エデュケーション」は、とりわけデモクラシーと政府、法の制定と順守に対する生徒たちの強い認識と理解を育むものでなくてはならない」と書かれてあり、「政治や社会の問題を批評的に探求し、エビデンスを見きわめ、ディベートし、根拠ある主張を行うためのスキルと知識を生徒たちに授ける授業でなくてはならない」とされている。

こうした授業が今の日本の授業で行われているかは分からないが、こうした授業をすることで、より政治や民主化の重要性についてもっと関心をもてるようになるのではないかと感じた。

最後に、、、

年末年始に実家の田舎へ帰省した。田舎なので、東京よりも保守的で閉鎖的なのはしょうがないが、甥っ子 (7才)が「ガイジン怖い。黒い人は怖い」と言うことがあると言う話を聞いて、心配になった。もしかしたら、家族の中で、無意識にそんなような会話が出ているのかもしれない。さりげなく、甥っ子の母親(姉)にもこの本を勧めておいたが、この本を読んで、姉も何かを感じてくれたら嬉しいなぁ。

この本は、手元に置いて、子供がティーンに近づいてきたくらいに再度読み直したい。また、日頃から日本のニュースだけでなく、Guardianなど海外のユースも原文で読んで、世界情勢についても常に敏感で、自分の考えを言えるようにしておきたいと思う。

覚えておきたい英語フレーズ
Putting yourself in someone else's shoes.
「自分で誰かの靴を履いてみること」
(他人の立場に立ってみるという意味。エンパシーを表すのにちょうど良い)

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