“留学をして新しい自分に出会う”は嘘だ。
“留学で新しい自分と出会おう”
“旅をして新しい自分を発見しよう”
よく耳にする言葉。
私も留学に来るまではこれを信じ、留学したらどんな知らない私に出会えるのだろうかと、未知なる自分を知る未来に胸を躍らせていました。
でもドイツに来て5か月が経つ今、これは嘘だと思うんです。
初めて出会う人と話し、新しい景色を見て、知らない街の匂いを嗅ぐ。
その中で覚える共感や感動、興奮を通じて、私は既存の私を再認識しているような気がします。
帰属意識が高くてルールに厳格な人は苦手。
多少放っておいてくれる人に愛着を感じる。
生活環境ががらりと変わっても、生活スタイルは大して変わらない。
決まった時間にご飯を食べないし、夜中に星を見に散歩する。
関わる人の幅が広がっても、やっぱり一人が好き。
一人でいるほうが素直な感動を誰にも邪魔されないで、自分の気持ちを“自分と”共有できる。
唯一変わったと言えば、ドイツに来てビールが飲めるようになったところぐらい?
ミュンヘンのビールは本当に美味しい。
どの国のどの街を歩いていても、曲がりくねった狭い道が好きだし、たばこの煙は嫌いだし、初対面は苦手。
食にはそんなに興味がないし、どちらかと言うと「団子より花」。
心躍る瞬間は、昔から変わらず“海が見えた時”と“猫を見つけた時”。
今までよりも遥かに多様な人やものに触れる環境で自分として生きることで、今まで当たり前のように寄り添ってきた既存の私自身を再確認している、そんな風に思うんです。
もちろん、多様な考え方・多様な文化に触れることで物事を見る目線や他人に抱く印象は多少なりとも変化したし、
過去の私より幾分か寛容になった私がいることも感じています。
でも根本は変わらず
むしろ、知り合いがほとんどいないこのミュンヘンの地で一人生きていくことによって、私ってこんな人間だったなあと自分と向き合うことができているように思います。
集団に積極的に参加したり、ズボラな自分に厳しくなれたり、苦手な人とも上手く関わっていく、
そんな風に“変われた“自分との出会いを少しばかり期待していた留学前の夏ですが、
今はワイワイが苦手な自分も、永遠に洗濯物をたたまない自分も、「無理だ」と思った人とは一線を引く自分も、私らしくて大いに結構。
変わらない自分でこれからも行ってみたい場所に行ってやってみたいことをやって、
この鼻で色んな街の匂いを嗅ぎこの目で色んな景色を見てこの頭で考えたことを、少しずつ積み重ねていきたいなと思います。
もしかすると、そう思えるようになった自分こそが“新しい自分”なのでしょうか。
そう考えるとあの文言も、正鵠を射ているのかもしれませんね。
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