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はい、石下です。あの日の取材絵日記~怪獣レモンサイダー(尾道市向島町)の巻

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 尾道市向島町のサイダーの工場をことし4月に取材した。90年近く続く工場を高齢夫婦から引き継いだのは、森本繁郎さん(44)。新商品の開発にも力を入れると言っていたが6月、さっそく連絡があった。「瀬戸田町産のレモン果汁10%入りのサイダーができました」

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 工場を訪ねると、薄い黄色みがかったサイダーが作られていた。王冠で栓をしたガラス瓶には「怪獣サイダー」の文字。作業をしているのは、森本さんと妹の藍さん(43)。そしてもう2人、瀬戸田町のレモン農家片岡孝之さん(41)と、山波町の山岡由明さん(29)が作業用のネットをかぶり、飲料を運んでいた。

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 原料のレモンを見せてもらうとゴツゴツ、黒い斑点。まるで怪獣。「怪獣レモン」と名付けて売り出し中だという。両手で持っても大きく10㌢以上。片岡さんがもともと飲料用にと農薬を控えて育てていたそうだ。どうやったら大きく育つんだろう。方法は、秘密だと言われて笑ってしまった。

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 怪獣の口の中からレモンがのぞくようなユニークなパッケージも作り、中にカードなどが入っている。値段はなんと1個千円。高めだが、それでも買う人はいるそうだ。福井県立恐竜博物館や尾道市のふるさと納税にも出品したそう。次の発売は11月末、楽しみにしている方、もうすぐです。


 大阪で人材派遣会社を経営していた山岡さんは、新型コロナウイルス禍で在宅ワークなども増え、働き方を見直した。お金の稼ぎ方も、これでいいのかと考えた。ひとまず帰郷し、始めたのが農家の手伝い。そして、海外から来たという働き手の言葉に気付かされた。「日本にはこんなにきれいな土や水があるのにみんな気付いてない

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 伝統的なものや自然の中にこそ、本当の価値があるのかもしれない。それを発信していく仕事がしたい―。そう考えて、農産物加工品プロデュース会社「瀬戸内百姓」を立ち上げた。


 山岡さんは「農業、林業、漁業…。昔ながらの工場で作業している様子など、商品が手元に届くまでのストーリーを届けたい」と考えを練る。次はどんな物語が詰まった商品に出会えるのだろう。何だかわくわくする。


 怪獣サイダーは、180㍉㍑、350円。尾道市の土産物店や飲食店などで取り扱っている。同工場の「マルゴサイダー」と6本ずつのセットで4680円(送料別)。https://gotokosensho.base.shop(石下奈海、絵も)

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