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ベトナムの国民食「バインミー」、広島に専門店続々。技能実習生や留学生の癒やしの場に
パンに肉や野菜をたっぷり挟んだベトナムのサンドイッチ「バインミー」。広島市周辺ではベトナム人が営む専門店が相次いで開業しています。外はサクッ、中はモチッとしたパンを頬張ると、口に広がるのは具材のうま味。母国の味を求める20、30代の技能実習生や留学生の憩いの場にもなっていて、店内は異国情緒が漂います。扉の向こうに小さなアジアがありました。(栾暁雨)
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「ンゴーン クワー!(すごくおいしい)」。週末の昼下がり。広島市西区横川町の「ベトナムキッチン広島」は、実習生たちでにぎわっていた。バインミーはベトナム語で「パン」を意味する定番のファストフードで、屋台グルメの代表格でもある。フランスによる植民地統治のなごりで、使うのはフランスパン。肉や魚、目玉焼きに、レバーパテ、紅白なます、パクチーなどをトッピングする。食べ応えは十分だ。
横川周辺は広島市内の中でも、実習生や留学生が多く暮らすエリア。ベトナム語が飛び交う店は、2年前にオープンした。12種類あるバインミーは、400~600円台のお手頃価格。福を呼ぶ赤い壁飾りやプラスチックの椅子が並んだ店内は、少し雑然とした雰囲気で現地の食堂のよう。JR横川駅に近く、可部や廿日市、東広島からもベトナム人が訪れる。
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水産会社のカキ打ち場で働く実習生の女性(24)はホーチミンから来て3年。収入の多くを母国に送る切り詰めた生活だ。普段は節約のために寮で自炊しており、「懐かしい味」を求めて店にやってくる。つたない日本語で「休日だけは好きなものを食べてリフレッシュします」と笑う。店に来れば同郷のスタッフがいるのも気が休まるという。
オーナーのグエン・トゥイ・ユンさん(35)も元実習生。「異国暮らしは心細い。コロナ禍で帰国がままならない人たちのためにも、食べて元気になってほしい」と願う。
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広島県内のベトナム人は約1万4千人(2020年)。5年前と比べると倍増した。外国人の25・6%を占め、中国を抜いて1位になった。実習生を支援する行政書士の益田浩司さん(広島市中区)は「製造業などが盛んな広島は、実習生を中心にベトナム人コミュニティーの存在感が高まっている。料理店や食材店も増え、支え合う環境が整いつつある」と指摘する。
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広島市中区三川町の「バインミーHIRO―MY」にもベトナム人が集う。経営するのは元留学生のグエン・ズイ・ホゥンさん(29)とファム・テイ・イェンさん(30)夫妻。フォーや生春巻きだけじゃない国民食を知ってほしいと2021年秋に開店した。ハムや焼き豚などの具は全て自家製。魚醬(ぎょしょう)やニンニクが入った特製タレとチリソースが食欲をそそる。
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平日の昼は近隣の会社員、週末は市中心部に遊びに来た実習生たちが目立つ。フェイスブックで交流を広げるベトナム人たちの間では新店情報の拡散も早く、多い日で300食が売れる人気店になった。夫妻は「日本食になじめず苦労する人は少なくない。ここでは故郷の味に出合えると褒められます」と胸を張る。
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店先や屋台でのテークアウトを好むベトナムの雰囲気を感じられるのが海田町の「バインミー39」。持ち帰り専門店で、パンが並ぶケース越しに具材を挟む様子を見ることができて楽しい。近くにはアジア系の学生が多く通う福祉専門学校もある。元留学生のチャン・チョン・フ代表(37)は1食500円で食べられる学割を用意し、昼時には留学生でにぎわう。
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日本の若者にも好評だ。「バインミーHIRO―MY」に通う広島市南区の会社員女性(29)は、「具材も豊富だし野菜が多くてヘルシー。お総菜感覚で食べ飽きません」と満足そう。数年前からのサンドイッチブームやコロナ禍のテイクアウト需要も手伝い、同世代の友人たちもバインミーに注目しているという。おいしい上に見た目もオシャレ、さらに「断面萌え」すると、インスタグラムでも投稿が相次ぐ。
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ベトナム料理は日本人が親しみやすい味と言われる。暑い国らしく発汗を促す辛・酸・甘の味付けが基本だが、タイほど刺激的でなく、クセも少ない。海外旅行がまだ難しい今、お気に入りのバインミーで身近なアジアに触れてみませんか。
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