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俳優ゆうたろうさん インタビュー前編・学校に行かなかった選択「後悔していません」

 ドラマや映画などで活躍目覚ましい俳優のゆうたろうさん(23)。さまざまな機会に広島市で過ごした中学時代の不登校の経験を語っています。「マスクや眼鏡で顔を隠さないと外を歩けなかった」という当時の心境や、学校や友人となじめない若い世代へのメッセージをあらためて聞きました。(新本恭子)

ゆうたろうさん プロフィール
1998年、広島市中区生まれ。古着店「サントニブンノイチ」の店員だった2016年、17歳で芸能活動を開始。21年はNHKの連続ドラマ「古見さんは、コミュ症です。」などに出演した。アパレル大手「ジーユー(GU)」のイメージキャラクターを務める。

―SNSで積極的に自分を発信しているゆうたろうさんに、自信がなかった時期があったのですね。

 小学生の頃は明るいお調子者で、友達が多いタイプでした。それが中学に入って周りにうまくなじめなくなってしまったんです。中1の途中から学校に行かなくなりました。その挫折で、自信を失ってしまったのだと思います。

中学時代のゆうたろうさん(ゆうたろうさんのインスタから)

 中学校では小学生時代に仲が良かった子たちと離ればなれになって、入学式の日から疎外感がありました。初めて人見知りを自覚しましたね。
 そんな僕にも話し掛けてくれる子たちはいたんです。そのグループに交じっていると、悪気はないんだけど、もう少し踏み込んだらいじめに発展しそうなノリがあって。それに自分を合わせるのが本当は嫌だった。常に空気を探ってキャラクターを作るのもしんどくて。遅刻がちになり、ずるずると学校に行かなくなりました。
 1週間も行かないと「忘れられてるんじゃないかな」「転校生みたいに扱われるんじゃないかな」「もう僕は必要とされていない」という気持ちが膨らんでいって。当時、将来の夢ややりたいこともなかったので、学校に行く理由がなくなってしまったという感じでした。

 ―周りの反応はどうでしたか。

 先生は「いじめられてたの?」と、すごく心配してくれました。でも、「学校になじめない」「前向きになれない」という理由での不登校は、あまり理解はされませんでした。体育祭の見学のためだけに登校するとすごく気を使われて…。ありがたいことなんですが、特別扱いがプレッシャーになって、実はさらにしんどくなってしまいました。
 救われたのは家族の反応でした。これまで通り、すごくフラットに接してくれました。特に母は「ゆうたろうの人生だから。後悔したとしてもあなたの選択だから、自分がそれでよければいいんじゃない」と。僕に寄り添ってくれ、気持ちが和らぎました。

―理由を追及されるのは苦しいですよね。

 そうなんです。「行きたいけど行けない」「一歩踏み出せない」っていうのは自分が一番よく分かっているんですよ。朝早く目が覚めて、学校に行く準備をしたけど、正門で引き返したこともありました。「行かなきゃ」と思えば思うほど自分の心から遠ざかっていく感じがありました。
 もし、学校に行かないという選択を家族から認めてもらえなかったら、もっと苦しかっただろうなと思います。今も家族とは、楽しいこともしんどいことも包み隠さず話せる関係です。当時の僕も、東京で仕事をしている今の僕も知っているのは家族だけ。家族と話ができる時間は大切にしています。

―学校に行っていない間、どう過ごしていたんですか。

 ずっと家にいました。外出は半月に1回くらい。しかもマスクにメガネで前髪も下ろして、真っ黒な服装で。自意識過剰かもしれないけど、人の目線が怖くて、後ろ指をさされているんじゃないかなという不安がありました。本当に自分に自信がなかったんです。
 家ではしばらくの間、一日の半分以上寝て、テレビを見て、また寝て、という生活をしていました。でも、さすがに時間がもったいなくなり…。父に「頑張って学校に行くから」と交渉して、スマホを買ってもらいました。結局、学校には通えなかったんですけどね。

 2歳上の姉が教えてくれてファッションや音楽の世界が少しずつ広がり、さらにスマホでSNSを始めたことで外につながりもできていきました。当時、自分からの発信はほぼしていないんですが、ツイッターのプロフィルを基に誰かとやりとりをすることはあって。自分に自信がなかったので、顔や名前を出さずにコミュニケーションできる関係が、すごく心地よかった。年齢や性別を意識することなく、話が合う人とつながれるのがSNSのいいところですね。
 実は中3の時、同じ学校の同級生で、僕と同じく不登校の子とSNSでつながったことがあったんです。苦しさやもどかしさを分かり合えたし、僕もナチュラルな自分でいられました。毎日のようにLINEでやりとりしていましたね。オフラインで会っていなくても常にオンラインで支え合っている―。そんな存在もSNSを通して見つけることができました。

 ―今、同じように学校に行けずに苦しんでいる子たちに伝えたいことはありますか。

 不登校という選択をした自分を、絶対に責めてほしくないです。甘えればいい、ということではなくて、学校に行く代わりに自分が何をしたいかという気持ちが大切じゃないかな。

 僕は、学校に行かなかったという選択を後悔はしていません。もちろん今なら学校で国語や英語の授業を受けたいし、その知識を、台本を読んで「どう表現しよう」と考えている今の自分に届けたいと思うくらい。でも大人数が苦手とか学校は窮屈だとか、人それぞれの事情がある。
 今はSNSでいろんな場所や人とつながることもできる。きっと前よりも頑張り過ぎずに学べる環境を、見つけやすくなっているんじゃないかと思います。まずは自分に合った居場所を見つけてほしいです。

後編に続く⇩⇩⇩