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チャイボーグメイクに見る日中の違い

”チャイボーグ”という言葉を耳にしたことはありますか?


中国のチャイナと、サイボーグを合わせた造語で、中国美人の隙の無い完璧な美しさを表す言葉だそうです。

また、そのようなメイクのことをチャイボーグメイクといい、日本の若い女性を中心に広まりつつあるといいます。今回は、チャイボーグメイクというキーワードを使って、日中の事情や違いをみていきたいと思います。


まずはじめに、日本の近代メイクについて簡単に振り返りたいと思います。

日本では、2003年頃から始まったK-POPブームの影響で、韓国風メイク『オルチャンメイク 』と呼ばれるものが長年流行しています。動画クリエイターがメイク技法を紹介したり、本場韓国の化粧品会社が続々と日本進出しました。

今日においてもその流行は継続しており、若い女性を中心に支持されていますが、一方で新たなメイクの技法が注目されていると言います。


それが冒頭紹介した、”チャイボーグメイク ”です。

上記の記事で詳しく紹介されていますが、韓国風オルチャンメイクが柔らかい印象なのに比べて、チャイボーグメイクは強くはっきりとしたのが特徴です。


日本人女性にとってメイクといえば自国である日本か、韓国のトレンドをリサーチするのが一般的でした。その流れは自然で、憧れのK-POPアイドルの使っている化粧品に注目したり、日本の化粧品会社も韓国での流行を意識した商品を提供していたからです。

ですが、2018年頃から中国のメイクに注目する人が現れ、その頃から”チャイボーグ ”という言葉も使われ始めました。

正確なきっかけ等を断定するのは難しいですが、2018年に日中合同で製作された映画「空海」で楊貴妃役を演じた、中国の張榕容(チャンロンロン)さんという女優が美しいと日本で話題になったことも、中国風メイクに関心を持つきっかけとなったのではないかと推測されます。

2019年には、美容系YouTuberの「鹿の間」さんが、中国風メイクを紹介しています。タイトルにもある通り動画中では今後流行するだろうと話しており、彼女の他のメイク動画よりも再生回数が多いところからも、視聴者の関心の高さが伺えます。

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この頃からチャイボーグメイク への注目が一気に高まりをみせています。

2020年には、大手化粧品メーカー資生堂も自社の情報サイトでチャイボーグメイク の方法を紹介しています。


海外のメイクといえば韓国がほとんどだった状況が変わり、中国風メイクに関心を持つ人が増えているのがトレンドの一つと言えるでしょう。



一方で、そんなチャイボーグメイク の生まれた地、中国ではどのような状況なのでしょうか。

調査していくと面白いことがわかってきました。


なんと、中国風メイクやチャイボーグメイクという概念が生まれ、発達していったのはどうやら中国ではないようなのです。

詳しくみていきましょう。

まず、中国で中国風メイクと言う場合、日本のように現代メイクを指すのではなく、中国の伝統的な衣装に合わせるメイクや、中国文化にまつわるメイクという意味合いが大きいようです。


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資生堂が紹介しているチャイボーグメイクのような日常メイクではないのは一目瞭然です。


以下のグラフは中国国内で「中国風」+「化粧」というキーワードの検索数のデータです。(期間は2019年から現在まで)

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2019年秋頃に盛り上がりを見せていますが、時期や盛り上がりが短期的であることから、日本人がイメージするチャイボーグメイクの盛り上がりであるとは言いにくく、何かきっかけになるような出来事は見当たりませんでした。

その後も特に大きな盛り上がりは見受けられません。

また、中国の女性には、日常的に自分たちがしているメイク=中華風メイクという概念もなかったようです。

チャイボーグメイクや中華風メイクは、中国国内で盛り上がってきたというよりも、日本の中で発信され広まっていったと考える方が自然では無いでしょうか。


【ここまでのまとめ】

●中華風メイク、日本にとっては最新トレンド。中国にとっては伝統的な化粧。

●チャイボーグメイクは日本国内で注目され、広まっていったと考えられる。





さて、ここからは日本でのチャイボーグメイクの盛り上がりが中国に及ぼした影響についてみていきましょう。

繰り返しになりますが、日本と中国ではチャイボーグメイク、中華風メイクへの温度差があることがわかりました。


しかし、日本での流行を受けて、少しずつ中国でも中華風メイクの概念が変わってきているようです。


まず、中国化粧品会社の日本進出が挙げられます。

日本ではチャイボーグメイクや中華風メイクへの関心が高まると同時に、自然とそのメイクに必要なメイク道具への関心も高まっていきました。

もちろん日本でポピュラーな化粧品でも代用可能ですが、中国の化粧品は色彩豊かでパッケージデザインも凝った作りのものが多く、ネット上で話題になり、続々とECサイトをオープンさせています。


特に「花西子」という中国化粧品ブランドは、日本での宣伝活動にも力を入れており、日本の消費者も気軽に購入できるようになりました。特に花西子は、日本のYouTuberに使用レビューを依頼し話題になるなど、他のメーカーに比べ早い段階から日本での支持を集めています。



昨年には、ライフスタイルカンパニー株式会社が手がける日本向け中国コスメ通販サイト「COSME DELi」もオープンしました。

同サイトは安心に中国コスメを購入することができると好評で、原宿でPOP UP SHOPを成功させたり、ロフトやPLAZAなどの小売店でも販売をスタートさせています。


財務省貿易統計によると、中国から日本への化粧品の輸入は年々増加しており、2019年には300億円で、5年前より約60%増加しています。(データには日本企業が中国で生産したものも含みます)

メイクといえば韓国という時代が少しずつ変わり、このように日本での宣伝活動、様々な形での販路拡大に力を入れた結果、注目され支持を獲得しているようです。



日本向けにECサイトを展開する花知晓(flowerknows)の創設者である杨子枫氏は、「花知晓の女の子らしいスタイルの製品は、日本で自然で巨大な市場を持っています。同時に、当社の製品は日本の化粧品とは大きく異なり、製品の強みによってすぐに日本に参入することができます。」と述べています。



日本は中国に比べ、一人当たりの化粧品への支出は中国の約6倍とも言われています。トレンドや新しい化粧品に敏感な日本人にとって、チャイボーグメイクや関連の化粧品に対する関心は今後も高まっていくでしょう。


日本国内での盛り上がりが、チャイボーグメイクの元となる中国にも影響を与えたというのは非常に面白いのではないでしょうか。

メイクは流行に左右されながら、その時代ごとに変化を見せます。日本ではなかなか知ることのできないマーケット情報収集のお手伝いになれば幸いです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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