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いま上海の人々は

みなさんこんにちは。5月を迎え、行楽を楽しむ人が増えてきました。今年のゴールデンウィークは旅行に出かけたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。新幹線や飛行機の乗車率、予約率が昨年よりも大幅に高くなったというニュースも見られました。
一方、中国・上海では未だ新型コロナウイルス感染拡大防止のためロックダウンが続いています。

上海市内の一部の地域では散歩や買い物を許可する動きも見られましたが、その後すぐに再び規制が行われ、隔離を余儀なくされています。ロックダウンの解除時期に関して、市中感染がゼロになってからとされていますが、その時期は未だ見通しが立っていません。

市民が自由に外出できないだけでなく、経済活動の面でも影響が出ています。外出禁止に伴い、工場稼働停止をせざるを得なくなり、物流が滞っています。仮に出社できたとしても、関連会社が休業しているケースも多く材料が届かない、作っても運ぶことができないという事態に陥っています。こうした状況を受けて中国国内では、Apple社の最新型iPhoneの生産拠点をインドに移されるのではないかという不安の声も聞かれるようです。

その影響は中国を超えて、諸外国や日本にも及んでおり、材料価格の高騰や材料不足に悩まされている方々も多くいます。

市民の声を記録した動画

ロックダウンが続く中国・上海では市民はどのような暮らしを送っているのでしょうか。その様子を記録した動画が話題になりました。それがこちらです。

「四月之声」(4月の声)」

と題された約6分間の動画です。モノクロの上海市内の映像に、ロックダウンに踏み切る直前まで「都市封鎖はしない」と発してきた中国当局の記者会見や市民の声、叫びの音声が記録されています。以下、市民の方々がどのようなことを訴えているのか一部抜粋し要約したものをご紹介します。

とある住宅団地の人々
「配給物資をくれ!食料をくれ!」

日本でいう自治会や町内会役員にあたる居民委員会のメンバー
「本当になにもない。心がもうすっかり疲れ切っている。」

運転手と食料を届ける公安警察の会話
「この漬物も食べてください。」
「食べ物を届けてくれて、上海の警察はとてもありがたい。これは数日ぶりの食事です。」

重い病気を持つ父親を受け入れてくれる病院を探すも見つからない人
「朝8時から救急に何度も電話をかけ、家の中や外を行ったり来たりしていますが、父親が入院できる病院は見つかりません。居民委員会からは必ず入院できる病院があると言われたけど・・・。誰も救おうとせず、誰も問題を解決しようとしない。産んだ親を大事にしたいとは思わないのか。なぜこんな仕打ちができる。

強制隔離中の人の元へ届けられたデリバリーの食事を、国の消毒係が破棄した時の会話
「いま消毒をしているので、この食事も破棄します。」
「え、どうしてですか?では隔離されている私たちはどうやって何を食べれば良いのですか?」
「それは私が知るわけがありません・・・今消毒していますので・・・」

通院していた病院から帰宅できない高齢者
「どうすればいいの?このままじゃ病気じゃなくても気持ちが焦って死んじゃうよ・・・」

食料の配給が受けられない人と居民委員会の会話
「配給はありますか?」
「配給の有無は当局からの連絡を待ってください」
「待っていたら飢え死にしてしまいますよ・・・!」

これらは3月末から4月中旬にかけて記録された音声です。これらは抜粋したもので、実際にはもっと多くの“叫び”が記録されています。中国語がわからなくても、声からその悲痛さと思いが伝わってきます。上海出身で東京在住のCHReportメンバーは、故郷を思い涙がこぼれたと言っていました。

この動画は公開からまもなく中国政府から閲覧停止とされてしまいました。しかし中国国民は他のチャットアプリ、動画共有サイト、QRコードなどを使い拡散を続けています。


市民の暮らしを揺るがす・・・

この影響を受けて実際に仕事を失った人々の様子をお伝えします。

仕事を失ってしまうと生活していくことは難しいのは明白です。一晩を凌ぐために住民が協力している様子や、せっかく決まった仕事がなくなってしまうかもしれないという不安に駆られている様子が伝わります。しかし全体をみるとあまり数は多くないようで、失業に至ってしまった人はあまり大きな声で発信していないと推測されます。

ロックダウンが解除された後、上海に訪れるのは「大失業時代」であるというニュースもあります。現時点でも給与半額や基本給のみの支給となってしまっている会社も多々あるようで、【約2億人が失業する】という試算も発表されました。

失業の増加は就職難も引き起こします。先行きの不透明感や国際貿易の滞りにより、雇用に消極的な姿勢が見られ、現に2021年に中国国内の大学を卒業した約909万人のうち、約4割が就職できなかったともいわれています。(参考文献 https://news.yahoo.co.jp/articles/9d82483099d484507920dfed02a70f75f1a753f9 )

一方で政府はこんな動画を公開・・・

生々しい声を記録した「四月之声」が市民の共感を生み、どんどんシェアされていく動きを見て公開停止の措置を取った中国政府ですが、一方でこんな動画を公開しています。

これは上海市民の暮らしや経済の様子を記録した動画です。四月之声で公開されている様子とは異なります。健康的な暮らしと滞りなく機能している物流の状況が伝えられています。

上海の方々からはリアルな状況とのギャップに戸惑い、怒りの声が挙がっています。また、この映像は3月に撮影・公開された別の動画の流用だという声もありました。四月之声のイメージを払拭するための動画が逆効果のようです。いまだ四月之声は勢いよく拡散されています。

また、上海では「移民」というキーワードでネット検索する人も増えているようです。理由は定かではありませんが、上海から出ることを検討している人が増えたのかもしれません。しかし理由はわかりませんが、インターネット上の検索数や盛り上がりを見ることができる“baidu指数“では「移民」と検索し、検索数を確認しようとすると以下のような表示になり、情報を見ることができなくなっているようです。


今回は生々しい情報となりました。新型コロナウイルスをめぐっては各国、地域により考え方や施策が異なり、そのたびに様々な議論がなされてきました。楽しい内容ではありませんでしたが、いまの上海の様子をお伝えするべきと考え、このような内容にいたしました。
また、本記事の内容は上海市民全ての状況ではありません。上海市内でも様々な状況、隔離がなされているようです。あくまで一部の様子として捉えていただきますようお願い申し上げます。

改めて、感染対策を怠らず生活しようと考える内容でした。最後まで読んでいただきありがとうございました!次回もお楽しみに。

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