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すれ違いのはじまり?

愛ちゃんとの毎日はとても楽しいものだったが、半同棲のような生活に息苦しさを感じることもあった。

私は煙草を吸わないのだが、愛ちゃんは愛煙家だった。煙草を吸う女性は嫌いではないが、付き合う人に煙草を吸ってほしくなかった。なぜなら、煙草で汚れて肺がんになった肺を見たことがあったから。

大学生のとき、看護学校の成果発表会を見に行った。かわいい看護師さんのたまごと、仲良くなって合コンしたいという不純な動機だったのだが、とんでもない展示を見てしまった。

そこにあったのは肺がんで摘出した肺のホルマリンづけやその他の病気で摘出した、もろもろの臓器。生物の先生を目指していたこともあり、看護師さんのたまごと仲良くなることよりも、展示を見ることに夢中になった。喫煙していない肺はピンクできれいだった。長いこと喫煙している肺は、タールで汚れ黄ばんでいた。肺がんで摘出された肺は赤黒く変色しており、煙草はやめた方がよいと訴えかけてくる。

私は高校の時、煙草をいたずらしたことはあったが、むせて苦しくなってしまい、習慣化することはなかった。

愛ちゃんは、煙草を吸わない私に最初は遠慮していたが、だんだんと躊躇うこともなく紫煙をくゆらせるようになった。私はそんな横顔も好きだったのだけれども、蛍光灯がかすんで見え、蚊がポトリと床に落ちてきたときは、さすがに体は大丈夫なのか心配になった。

「たばこ、やめたら?」

「えー、やめられないよ!」

「でも…」

「でも、何?煙草吸うの嫌でないって言ってたよね。」

「愛ちゃんの体が心配でさ。」

「大丈夫だってば‼️」

嗜好品だから、ほどほどなら良いかと思ったが、心配で声をかけたのに軽く流されたことが胸にチクリときた出来事だった。

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いつもありがとうございます。私は高校の先生、妻は専業主婦です。妻は保育士資格をいかして保育所を開設したいようです。安心して子どもを預け、子どもの成長をあたたかく見守る保育所を開設するために、支援をお願いいたします。