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歌舞伎俳優が本屋さんになったわけ③

みなさん、こんにちは。銀座 蔦屋書店で日本文化を担当している佐藤昇一です。普段はお店でお客様をご案内したり、本を選んだり、フェアやイベントを行ったりしています。最近は、美術展や出版なども企画しています。

先日、noteへはじめて投稿をしてみました。まずは簡単に自己紹介をと思いましたが、長くなってしまったので分けることにしました。今回はその第3回、最終回です。ようやく本屋さんになります!

前回までの簡単なまとめ

普通の大学生だった私は、歌舞伎のことをまったく知らないのに、なぜか国立劇場の歌舞伎俳優コースを受験し合格してしまいます。どうにか終了し、中村又五郎さんに弟子入り、中村蝶之介という芸名をいただき初舞台。約18年の修行を経て、家族の将来を考えて廃業を決意。ここに大学中退、役者しかしたことがない39歳の中年男性の転職活動がはじまりました。(第1回のまとめ)

予想通り、苦戦する転職活動。それでもあきらめずにエントリーし続け、物販の仕事に就きます。しかし定着はできず、転職を重ねることに。最初は、地方の地酒や特産品の物販事業、次は画廊での古美術の営業職。そして最後は、大企業の社長室で新規事業を担当。初めての管理職も経験しました。職を転々として自信を失いそうになりながらも、家族や友人たちの励ましで先へと進むのでした。(第2回のまとめ)

役に立つことができる仕事につきたい

いくつもの職を経験したこの期間は、自分を歌舞伎俳優から社会人へ変換する時間だったといえます。様々な業種、企業を経験して、一般社会での働き方を集中して体感できたこと。数度の転職活動をとおして、自分を見つめなおすことができたこと。二度と経験したくはないけれど、必要なときでした。

これまでの転職は「変わった経歴の自分を雇ってくれる会社を探す」というイメージでした。でも次は、自分に合った、そして役に立つことができる職に就きたい。歌舞伎俳優をを辞めたときには白紙に近かった職務経歴書がびっしりと書き込まれているのを見て、少し自信と欲が湧いてきました。

これまでの実績から自分の適性を分析した結果、目指すべきは「売って売って売りまくる営業」「停滞した新規事業を無理動かす事業推進」だろうと考えました。ここからは、ひたすらそのキャラクターで、面接を受けまくりました。うまくはまったのか、いくつかの企業に内定をいただくことができました。

めずらしい求人

あとはお世話になる会社を決めて、お返事をするだけ。そんなとき、あるエージェントさんが転職サイトに載せた自分の履歴書を見て、メッセージをくれました。

「日本文化にくわしいひとを探しているんですが、興味はありませんか?」

ずっと自分の歌舞伎や日本文化についての知識は、ビジネスでは役に立たないものだと思っていました。お客様にすぐに覚えてもらえる、面白がってもらえるくらいのことだと。

びっくりして、応募条件を目で追いました。

日本文化に関わる仕事についていたことがある

あります。この間までやっていました。

江戸文化に知見がある

あります。むしろ、専門です。

画廊やギャラリーでの勤務経験がある

あります。長くはないけど、勉強させていただきました。

英語もしくは中国語が話せる

まあ、話せます。上手くはないけれど、日常会話くらいなら。

そうです。これが「銀座 蔦屋書店 日本文化コンシェルジュ」の求人でした。

元歌舞伎俳優の本屋さん

これらの条件を見たとき、自分の経歴にあまりにぴったりしていて、目を疑いました。歌舞伎俳優だったとき、歌舞伎の元となる芸能や風俗などの文化を勉強したこと。古美術の画廊につとめていたこと。英語に強い大学に通っていたこと。

そして、蔦屋書店という事業ともマッチしていました。物販事業で店舗勤務を経験していること。そして、実は本と本屋さんが大好きで、役者時代、新橋のTSUTAYAでアルバイトをしていたこと!

「ぜひ、お願いします!」

こうして、世にもめずらしい「元歌舞伎俳優の本屋さん」が誕生したのです。

最後に

ここまで読んでいただくと、「普通の本屋さんとちがう」と思われるかもしれません。まったくそのとおりです。その理由は、自分の仕事「コンシェルジュ」と働いているお店「銀座 蔦屋書店」がとってもユニークだから。そしてそれゆえに、普通の本屋さんでは経験できない「売って売って売りまくる営業」「停滞した新規事業を無理やり動かす事業推進」という目標も目指すことになるのですが・・・。

でも、語りはじめると長くなってしまいますので、続きはまたの機会に。ひとまずは「歌舞伎俳優が本屋さんになったわけ」、これにて完結です。

長々お付き合いいただきまして、ありがとうございました。これからも続けていきますので、たまにのぞいてくださると、うれしいです。

フォロー、サポートくださったみなさん、それぞれに感謝をお伝えしたいのですが、まだ慣れていないためどうしていいかわからないので、ここでお礼を言わせてください。ありがとうございます!

現在、お店は休業中ですが、WEBは動いていますのでこちらをご覧になってみてください。世にもユニークな本屋さんの一端がうかがえると思います。

みなさんとお店でお会いできる日が来るのを楽しみにしてます!

*歌舞伎についてくわしくないひとのために、敬称や専門用語などをできるかぎり、一般的な言葉におきかえています。お許しください。

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佐藤 昇一
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