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#209 【便秘集中講義】第13回:Latilactobacillus sakei とスタキオースによって便秘を改善する話。

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便秘集中講義の最終回も差し迫って参りました第13回は、Latilactobacillus sakei菌とスタキオースを併用することで便秘を改善するというお話です。Latilactobacillus sakei(サケイ菌)は、その名が示すとおりお酒からその名前が来ている、あまり知られていないけどありがたい細菌です。スタキオースも、あまり馴染みのないプレバイオティクスですが、先行研究では便秘症状の緩和や乳酸菌の増加に関与することが報告されています。サケイ菌とスタキオース、マイナーなプロバイオティクスとプレバイオティクスは、どのような効果を便秘に対して発揮してくれるのでしょうか。そんな研究成果は、2023年1月5日にオンライン発表の"Latilactobacillus sakei Furu2019 and stachyose as probiotics, prebiotics, and synbiotics alleviate constipation in mice"に掲載されています。

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Latilactobacillus sakei

Latilactobacillus sakei (サケイ菌)は、旧名がLactobacillus sakeiの乳酸菌です1)。名前の通り酒の製造に有用なサケイ菌は、清酒の酒造過程で微酸性化になった状態に繁殖するとされています2)。

グラム陽性で通性嫌気性細菌のサケイ菌の中で、本研究で用いたサケイ菌Furu 2019株は、中国の発酵豆腐から単離されました。

スタキオース

今回の研究で使用するプレバイオティクスは、オリゴ糖の1つとしてフルクトース、グルコース、ガラクトース、ガラクトースの4糖を単位とており、消化酵素や胃酸の分解を受けずに腸内細菌により利用されるとされています3)。

前述の通り、先行研究ではスタキオースが乳酸菌やビフィズス属菌により利用されて、短鎖脂肪酸の存在量を増加させることが示されているプレバイオティクスです。

試験のデザイン

本研究では、SPF雄ICR系マウスによる便秘モデルマウスの確立を行い試験を行います。便秘モデルマウスの確立には、止瀉薬として知られるジフェノキシレートを胃内投与することで行います。

試験には、リン酸緩衝食塩水を胃内投与する2群(内1群は対照、1郡は便秘モデル群)、スタキオースの胃内投与群、サケイ菌の胃内投与群、スタキオースとサケイ菌の胃内同時投与群を用意します。胃内投与は21日間に渡って行われました。

排便に関係する便の移動速度、便の重量、水分量、血中の神経伝達物質、ホルモン値、短鎖脂肪酸、腸内細菌叢の測定を行うことで、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクスの評価を行いました。

プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスのいずれにおいても便秘改善効果を確認

試験の結果、スタキオース投与群、サケイ菌投与群、スタキオース+サケイ菌投与のシンバイオティクス群のいずれにおいても、便秘症状の緩和が確認され、特にシンバイオティクス群においては便の重量や便の数などが通常レベルに改善されていました。

また、遺伝子発現量の解析を行うと、水分子の輸送体であるアクアポリンの発現量などに影響を与え、シンバイオティクス群において正常マウスとほぼ同様の水準を示していました。

さらに、腸内細菌叢を解析した結果、シンバイオティクスの投与によりAkkermansia、Bacteroides、Alistipes属の相対存在量が回復する傾向にあることが示唆されました。

また、糞便中の短鎖脂肪酸の量も、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクスのいずれの群においても増加することが明らかとなり、例えばシンバイオティクス投与群ではプロピオン酸と酪酸の増加が確認されました。

このように、シンバイオティクス投与によって、腸内細菌叢を変化させるのみならず、含有される代謝産物としての短鎖脂肪酸の増加や、便秘症状の大きな改善が見られることが確認されました。

Bacillus coagulansとラクチュロースのシンバイオティクスでも確認されていたように、便秘の改善にはシンバイオティクスが有効であるという知見が溜まってきましたね。

以上、Latilactobacillus sakei とスタキオースによって便秘を改善する話をしてきました。

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次回は、2週間続いた便秘集中講義の最終回です!お楽しみにしていてください。本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Guo Y, Song L, Huang Y, Li X, Xiao Y, Wang Z, Ren Z. Latilactobacillus sakei Furu2019 and stachyose as probiotics, prebiotics, and synbiotics alleviate constipation in mice. Front Nutr. 2023 Jan 5;9:1039403. doi: 10.3389/fnut.2022.1039403. PMID: 36687730; PMCID: PMC9849682.

1) Zheng, Jinshui et al. “A taxonomic note on the genus Lactobacillus: Description of 23 novel genera, emended description of the genus Lactobacillus Beijerinck 1901, and union of Lactobacillaceae and Leuconostocaceae.” International journal of systematic and evolutionary microbiology vol. 70,4 (2020): 2782-2858. doi:10.1099/ijsem.0.004107

2) 乳酸菌、灘の酒用用語集、灘酒研究会、Access: 20230320.

3) スタキオースn水和物, スタキオースn水和物、富士フイルム和光純薬株式会社、Access: 20230320.

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