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#109 タンパク質が腸内環境で分解・吸収されるまでの概観を易しく解説。

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、タンパク質と腸内環境の関係について易しく解説していきます!タンパク質といえば、私達ヒトを含めた生物の重要な成分であり、食事によって肉や魚、大豆などに多く含まれています。もちろん、腸内細菌もタンパク質とタンパク質の原料となるアミノ酸が無ければ行きていくことはできません。では、腸内環境におけるタンパク質の利活用はどのように進んでいくのか、その概観に迫っていきます!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

https://open.spotify.com/show/5cg5yMYD7FA9NQSSbksEVx?si=802bda6021fb4efa

タンパク質とは何か

まずは、そもそもタンパク質とは何かからお話していきます。そのために、タンパク質の部品となるアミノ酸からお話していきます。アミノ酸とは、アミノ基とカルボキシル基と呼ばれる官能基からなる分子です。

アミノ酸には様々な性質を持つものが知られていて、この性質の多様性がタンパク質の機能を多様にしています。タンパク質とは、アミノ酸がペプチド結合によって連結してできた高分子=大きな分子です。なので、タンパク質の原材料はアミノ酸となります。

タンパク質については#72と#74でも詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみて下さい。

ここまでに、タンパク質について復習を終えたところで、腸内環境への旅に出発しましょう!

タンパク質目線で腸内環境を旅する

では、今から皆さんは食べ物に含まれるタンパク質になった気持ちで、消化管を旅してみましょう。皆さんは食事に含まれるタンパク質です。イメージ出来ましたか?

私達は、食べ物として、咀嚼され、飲み込まれ、食道を通って胃に到着します。胃で、胃酸の雨を浴びて、幽門を通って十二指腸へ向かいます。十二指腸では、タンパク質分解酵素=プロテアーゼや、ペプチダーゼによる攻撃を受けて、大きなタンパク質分子から小さなタンパク質分子になります。

小腸では、消化酵素による分解を受けたタンパク質が、加水分解によりアミノ酸やペプチドに成ります。ペプチドは、タンパク質とアミノ酸の間の子のような存在で、アミノ酸がおよそ50個より少ない数連結したものです。

ペプチドやアミノ酸は、小腸における吸収によって血流に乗ったり、小腸内細菌によって吸収されたりします。一部は、生理機能を持つことで小腸に作用します。

ここで、小腸によって吸収されなかったペプチドは、盲腸を経て大腸に移動します。ここからが、腸内細菌の真骨頂です。腸内細菌は、ペプチドを代謝することによって、短鎖脂肪酸、フェノール系化合物、インドール系化合物、スルフィド系化合物、アンモニアやアミンを含む化合物に分解されます。アンモニアは腸内におけるpHを増加させます。また、ペプチドの代謝産物は大腸における免疫機能を含めた生理学的機能に影響を与えます。

ペプチドには、腸内細菌叢の組成を変化させることで、病原性細菌の存在量を増やすことが報告されています。生きる上で必須なアミノ酸をタンパク質から摂取する際、多すぎると腸内細菌叢のバランス不全を起こしてしまうということです。

そもそも何が言いたかったのか?

では、ここまでのお話を通して、この論文では何を言いたかったのでしょうか。

タンパク質は、私達や腸内細菌が生きる上で必須の栄養素であり、消化酵素や腸内細菌によって分解され様々な物質の生成に関与します。しかし、必要以上のタンパク質を摂取すると、ヒトや腸内細菌による十分な代謝を受けずに、結果として腸内細菌叢における病原性細菌の増加に繋がります。したがって、タンパク質と炭水化物の適切な比率の摂取、低タンパク質の食事が推奨されます。

今回は、いつも皆様が食べているタンパク質に注目して、タンパク質が腸内環境で分解・吸収されるまでの概観を易しく解説してみました!

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Zhao J, Zhang X, Liu H, Brown MA, Qiao S. Dietary Protein and Gut Microbiota Composition and Function. Curr Protein Pept Sci. 2019;20(2):145-154. doi: 10.2174/1389203719666180514145437. PMID: 29756574.

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