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05.10 前を向く

05.10
※思考を掃き出す、今を書き留める、自分のための記録です。

めずらしく、クラフトチューハイのロング缶をプシュッとして、かれこれ一時間小説を読んでいた。時刻は25時をとうに過ぎている。

読みながらなのでまだ半分は残っているが、既にまあまあ酔いがまわっていると思う。たいてい家で飲む時にはほろよい一缶にしているから、というのもあるかもしれないが、しかし今日酔いがまわっているのは、"今日(日を跨いでいるので昨日)がいつも通りの日ではなかったから" というのが大きい。そもそも夜更かしをしている理由がそれである。

なにがあったのか、ここに書かせてもらいたい。ぼんやりとした頭でそう思って、noteを開いた。あ、そして今思い出した。そうだ、コンビニのマンゴーパフェがあるんだった。30円引きだったから、というのもあったけれど、しかし私がこれを買った一番の理由は、今宵は夜更かしをすると決め込んでいたからである。さっそく冷蔵庫から取り出してきたので、食べながら書いていこうと思う。

 ◯

昨日の午前一時、「よし…、頑張れ」と自分に言い聞かせて、神妙な面持ちで家を出た。これ以上ないほどの良いお天気だった。お昼ごはんはお腹が空かなくて食べなかった。神妙な面持ちのまま、駅に着き、電車に乗る。神妙な面持ちで乗り換えて、降り、20分ほど歩く。毎朝少し遠いよなぁと思いながら早歩きしていた道が、昨日はおそろしく短く感じた。着いてしまう、ああ着いてしまう……!と思って、いつもよりゆっくり歩いていたにも関わらず、あっという間に会社は目の前に現れてしまった。

そう、私が神妙な面持ちで向かった先は、勤めていた会社のオフィス。そこに荷物を整理し取りに行ったのだが、つまりはこれが最後の出社なのだった。だから、 "いつも通りの日ではなかった" のである。ああ着いてしまう……!と歩くスピードを遅くしたのは、大好きな会社を退社したくなかったからだったーー。


私がnoteを始めたのは、3月のちょうど真ん中あたり。うつくしい春で、新しいことを始めるのによい季節だったからというのもあるが、実は3月から体調上の理由で仕事を休み始めたことがきっかけだった。大好きな仕事ができない。空いた時間というよりもその心の穴を埋めたくて、書くという没頭できそうな作業を始めた。

私の体調の悪化は、仕事での疲労がたたり、時々ほころびが見えていたものが一気に大きくなって現れたのだった。幾つかの症状の中でも、貧血症状は度々深刻だった。とうとう駅のホームで倒れてしまった時、とても親切な女性に出会えたことは涙が出るほど嬉しかったが、その日以降、一人で電車に乗るのはこわくなってしまった。そのほかの症状を鑑みても、立ち仕事自体が難しかったため、休むしかなかった。

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私がしていたのは、ファンドレイザーという仕事。日本ではまだあまり知られていないが、NPO法人などの非営利団体の活動資金を集める、ファンドレイジングを行う職業だ。資金調達のためには、まず多くの人々に団体のことを知って頂き、活動に賛同し応援する気持ちを持って頂く必要があるから、広報・啓蒙活動でもある。

資格も特別な才能も必要ないが、体力と気力を使う。駅前に立って声をかけたり、一軒一軒のお宅を歩いて訪問したりして、チャリティー活動に対するイメージも関心も考え方も、本当に様々な人とお話をする。そのコミュニケーションのなかで、私自身も常に学ばせてもらいながら、チャリティー活動の重要性と素晴らしさを精一杯お伝えする仕事は、やりがいと成長に満ちていた。大変さもあるけれど、それでもやりたいと思う瞬間が何度もある、大好きな仕事だった。


子どもの頃から漠然とチャリティー活動に携わりたいと思っていた私は、大学一年生にして運命的に出会ったこの仕事に必然を感じた。だからこの会社に就職するつもりで大学を休学したし、一年間頑張ってきた。そして仕事だけではなくて、会社にも惚れ込んでいた。引っ込み思案で、どちらかというと自分の殻に閉じこもってしまう方が多い私。そんな私でも、次々に話しかけてくれる情熱的な人たちに囲まれて、ここは楽しい、と思えた。尊敬する上司がいて、私でもちゃんと溶け込んでゆくことができて、私の居場所はここにあるんだ、と思わせてくれる環境だった。

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3月、体調を崩して、それが中々回復しなくて、少しずつ困惑していった私。4月、どれくらいかは人それぞれだが、完全に症状が出なくなるまでは時間がかかると知って、すぐには受け入れも納得もできなかった。こんなに運命だと思っていた会社を、離れなきゃいけない日がくるなんて。しかもこんなに早く。しかも、体調上の理由で……。これほど悔しいことはなかった。どうしようもない現実を前に、私は一人、打ちひしがれた。認めたくなかった、向き合いたくなかった。大好きな上司に、大好きな仲間に、なんと伝えたら良いのか。伝えたくなかった。

少しくらい無理をすれば、続けられるんじゃないか。この仕事を辞めたくなくて、ここで出会った人たちと離れたくなくて。毎朝毎夕、ボーーーーっと考えた。夜も眠れずに葛藤し続けた。でも、無理して続けたとして、大好きな仲間に迷惑をかけることは目に見えていた。一生懸命な皆んなの足を引っ張るわけにはいかない……。私は長い長い葛藤の末、それでも一人で決断しきれず、母やオーナーからの言葉かけもあって、ようやく退社を決めたのだった。


だけど、荷物を取りに行ったら、本当に本当に最後になってしまう……。そう思うとさみしさに耐えられなくて、オフィスに行くのも昨日まで引っ張ってしまったのだった。私はいつも平静を装って街中を歩いているが、実はまったくどうしようもないさみしがり屋で、別れというものにはめっぽう弱く、本当に本当に涙もろい。それでも昨日、なんとか自分を奮い立たせて、前へ進むための一歩を踏み出したのであった。「いつまでもこのままではいけない……。次に進まなくちゃいけないんだ。……頑張れ、自分。」と。

 ◯

まるで世界が閉ざされたように、沈んだ気持ちで2ヶ月を過ごした。私にこれからはあるんだろうか。やりたい仕事は見つかるのだろうか。正直、大袈裟だけど神様から、君は必要ない、と言われたように感じていた。私が必要とされる仕事は、この世の中にあるんだろうか……。考える度に、涙が溢れて止まらなかった。だけど、この会社で過ごした日々を思い出していたら、皆んながくれた言葉が蘇ってきた。

私が道に迷った時。
「人生に正解はない。あっても誰にもわからない。だから正解を選ぼうとするんじゃなくて、自分が選んだ道を、努力して正解にすれば良いんだよ!」

つらいことがあった時。
「人生に無駄なことなんてないと思うんだよね。だからどんな体験も、こんな経験ができて良かった、って思えば良いんじゃないかな。」

耳に蘇った言葉に、少しずつ背中を押されていった。うん、前を向かなくちゃ。未来に向かって進もうとしなくちゃ。私は、ファンドレイザーじゃなくなったら、この会社の一員じゃなくなったら、自分には何にも残らないと思っていた。そんな自分は無価値だ、くらいに。
でも、そうじゃない。1年間この会社で学んだこと、この仕事を通して吸収してきたことが、私にはあるじゃないか。この足で出会い、この耳で聞き、この目で見て、感じてきたこと。そうして自分を成長させてくれた出来事が、幾つもあったじゃないか。そのかけがえのない経験は、なによりの宝だ。経験はいつまでも消えずに、ずっと私のなかに残っている。だから何にも残らなくないよーー。そう気づかされた。

 ◯

今の私には、新たな夢の種がある。
昔から本が好きだった。今も好きで、文章が好き。伝えること、伝わることが好きだ。考えや思いが通じ合う、あの感覚が喜びだ。
そんな私に、noteというこの場所がある。
チャリティーに携わることを、諦めてはいない。
ファンドレイザーという仕事についてやソーシャルビジネスの可能性について、もっと沢山の人に知ってもらえるように、自分にできることがあるかもしれない。それを探りながら、このnoteでも少しずつ、発信していきたいと思っている。
そのために、もっと知識を深めたい。

それに新たに興味のあることも増えた。
いくつか記事を投稿している、アートだ。
この2ヶ月間葛藤に溺れ、疲弊していた私の心を、癒して救ってくれた存在。芸術家の偉大さを知った。
まだまだ知らない世界だから、これから勉強していきたい。
そうして文章を軸に、チャリティーや文化芸術に関わる仕事ができたら良いなと思っている。
どうなるかわからないけど、なるようになる!なるようにしか、ならない…!そう思う。

まずは、バイトを始めなくっちゃ……っ。
ああさみしい、ああ、本当にさみしい、悔しい、かなしい……!!!
でもこの思いをバネにして、決して無駄ではない経験を抱きしめて、私はなんとかまた飛びたとう。涙の数だけ強くなれればいいのに……って思ったことが何度もあったけど、大丈夫。涙の数だけ、強くなろうよ。きっとそれだって、自分次第だ。ひまわりのように顔を上げて、いっせーのーせで前を向く。
まだまだ人生、旅の途中だ。この会社でやり残したこと、未来で全部、やってやる。もっともっと成長したい、もっと可能性を広げたい。私はまだまだ、変わってゆけるーー。


今はそう信じて、新たな一歩を踏み出すだけだ。



※酔った勢いで書きました。
自分のための記録です。

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