【レビューweb掲載】ジョージ・セル「忘れられた録音集」

タワーレコードのフリーマガジンintoxicate#151に寄稿したレビューがネットアップされた。

最近はあまり聞かないが、筆者の子供時代くらい(30年ほど前)まで企業とタイアップした書籍もしくは音楽ソフトのいわゆる鑑賞団体が複数存在した。
簡単に言えば、会費を払うと毎月もしくは隔月で団体や提携企業のセレクトしたアイテムが送られてくるシステム。
経済の成長過程でより質的に豊かな暮らしをしたい、そういう雰囲気をまといたいと考える大衆のニーズをつかんで先進諸国において1950年代からオイルショック前までに最盛期を迎えた。

なかには既存の音源を使うのみならず、自ら制作まで手がけるところもあり、例えば通販で有名なリーダースダイジェストはデッカのエンジニアを起用してケンペ、レイホヴィツ、ホーレンシュタインといった大物指揮者の音源を多数制作した。
そして上記リンクのセルの音源を制作したのは、やはりそうした鑑賞団体の1つのBook of the month club。1926年創立の組織で現在も書籍の事業を継続している。

1954年、1955年といえばセルがクリーヴランド管弦楽団の音楽監督に就いて10年になろうとする頃。
オーケストラをほぼ掌握し「セルの楽器」として磨きをかけつつあった。従って同時期のEPIC録音と根本的な違いはない。ただブラームス、シューマン、ストラヴィンスキーあたりは後年のEPIC録音より鋭敏で踏み込んだ動きが見られ、面白く聴ける。
1枚目のモーツァルト以降はステレオ収録。ブラームスのハイドン変奏曲以外は初CD化とクレジットされていた。

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