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【公演レビュー】2022年9月24日/若林かをり〔フルート〕シャリーノ作品集

「Lux in Tenebris 音楽×写真×空間」

シャリーノはポリーニがモーツァルトの協奏曲を録った際のカデンツァ提供などで現代音楽ファン以外にも名が知られ、またコンスタントに作品の録音が発売される文字通り現代作曲界の重鎮。
幅広い領域を創作する総合型だが、際立つのはフルート独奏の作品で演奏、録音機会ともに多い。
一方、フルート奏者若林かをりはキャリアの初期からシャリーノ作品を愛するエキスパート。2017年のシャリーノ作品によるリサイタル「フルーティッシモ!」が第72回文化庁芸術祭新人賞を受賞している。
そして2021年9月、コジマ録音からシャリーノ作品集をリリース。これは「Lux in Tenebris/闇の中の光」のタイトルのもとドイツ在住の写真家タイナカジュンペイの写真集と組み合わせた共同プロジェクトアルバムで「レコード芸術」誌2021年11月号特選となった。

今回の公演は松本永の空間演出のもと若林かをりの演奏の背後にタイナカジュンペイの写真が立ち上り、アルバムの世界観を文字通り追体験できる構成。
シャリーノの作風は創作領域同様幅広いが、フルート作品に限れば明暗や寂と破が瞬時に変化する楽想。若林かをりは作品を掌中に収めており、高い解像度で曖昧さを残さず吹き切る。
音楽、モノクロフォトの鋭利な構図、写真が漆黒の空間に映し出される際の眩影の3要素が響きあうさま、そこに一体化して表現しきる奏者の技に引き込まれ、意識の眼が覚醒した。

本来もっと語りたい公演なのだが、実は前日セントラル愛知交響楽団を聴くために名古屋に遠征したところ、帰りの東海道新幹線が線状降水帯の影響で運休。幸い知立からの夜行バスが取れて当日朝帰京できたが、ちょっと仮眠した後に慌てて会場へ向かったので集中しきれず。非常に残念かつ申し訳ない状況での鑑賞になった。いつかリベンジを切に願う。

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