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本棚という地層を掘り起こす

人によって、「自分をよく表しているもの」は違うでしょう。
洋服、楽器、庭…… その人が大切にし心を注いでいる物には、その人の歴史が現れます。
本棚を見ればその人のことがよくわかる、というのはわたしの持論ですが、本棚は持ち主の姿を表す鏡です。本の種類、量、収納の仕方、あるいは“本がない”ということですら、その人の性格や好み、性質を表しています。

人生がときめくお片づけも、ついに本棚のターンになりました。
わたしは大の本好き、しかもどちらかといえば収集癖のあるほうなので、気に入った本は物理的に手元に置いておきたい派です。ここ数年は電子書籍も大活躍していますし、手元の電子書籍リーダーhontoには300冊以上の本が入っていますが、本気で気に入った本は紙でも購入してしまいます。
わたしが使っている本棚は、壁の上までびっしり入るタイプのものが2台ですが、それでは入りきらずに、気がつけば机の上やほかの収納だなの隙間も本で埋まっていました。それを今回、一気に棚卸し。合計2日の一大作業となりました。

本棚の整理は、ある意味で趣味のひとつで、年に一回は行っています。特段時期を決めてはいませんが、思い返してみれば小学生の頃から、自分の本棚の中身を吟味しては、並べ方や組み合わせを試行錯誤して調整してきました。毎年の本棚の整理、そして過去3回の引越し(今回で4回目)で精査されてきた本たちは、精鋭中の精鋭、わたしを形成する歴史の層です。

本棚は鏡、といいましたが、むしろ地層といったほうがいいかもしれません。
上のほうはまだ空気にさらされていて、風や雨で飛ばされたり、追加されたり、混ざったりします。下のほうの層は圧縮され、不純物が取り除かれ、場合によっては化石ができています。そして、時代によって堆積した土の種類が異なり、時代ごとの特徴を伝える一方で、その土地ならではの傾向というものも、どの時代を通しても観察できるのです。


…… という書き出しで、文章を書き始めました。気がつくと、4000字を迎えてもまだ終わらない。何かを伝えようとするよりも、発掘しているうちに湧き出てきた思い出に翻弄されて、ただひたすら思い出を語っていました。
本棚という地層を発掘していると、うっかり温泉を掘り当てることがあるのですね。一旦湧き出ると止まりません。

全体を俯瞰してみると(というより、断層を横から見ると)、「ここは○○期、こちらは××期」とはっきり分かる横の層と、「この土地の傾向で、どの層にも△△が埋もれている」という縦の傾向が見えます。

例えば、数はわずかになってしまったとはいえ、わたしの最下層にある本たちは、岩波書店のハードカバー箱入り『やかまし村の子供たち』や、懐かしい赤い表紙の岩波少年文庫の『クマのプーさん』などの物語があります。
そこに英国系の児童文学の層が積み重なります。そこから枝分かれするように、日本の児童文学やファンタジーの層が現れ、もう一方の分岐には、英文学の層が乗っかってきます。
英文学の層の上には、さらに日本の小説が積み上がり、それと横並びに広がる層は、やっぱり児童文学・ファンタジーの上層と混じり合って、境界線が見えなくなっているのです。

一方で、いわゆる実用書も目立つ層として存在していて、こちらは「ハーブ期」「料理期」「手芸期」「語学期」「お菓子期」「着物期」「旅行期」と、比較的わかりやすく層が変わっていきます。全体として共通する傾向は、「ヨーロッパ」「伝統」「個性的」などのワードです。実用書の層は、隣の文学層とたまに混じり合って、例えば「ピーターラビットのお料理ノート」とか、「映画のレシピ」のような本があちこちに見られます。

ひとつひとつを語りだすと本当にキリがない。
それだけ、本には思い出とこだわりが詰まっています。
しばらくの間、こうやって発掘していった本棚の層について、いろいろと語っていこうと思います。「カタヅケニッキ」のときめきだけを抽出した部分になりそうですね。
もし「○年ごろの層が見たい」とか、「××についての層が見たい」とか、ご要望があれば、それに沿って書いてみるのもおもしろそうです。なにかリクエストがあれば、コメントででも教えてください。


うん、ちゃんと2000字以内に収まりましたね!
よかったよかった。

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