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キャラ読み本格派がオススメするミステリ7選

なんとなしに本屋に寄ったら、有栖川有栖の新作が文庫になっていたので買ってしまいました。
ついでに東野圭吾の短編も買ってしまいました。

ミステリマニアではないし、有名作家の新作を追いかけているわけでもないけれど、昔からミステリ、つまり推理小説はよく読んでいます。

推理小説にもいろいろと種類があります。
「本格」とか「社会派」とか「日常」とか。
詳しい人に聞けばものすごい量の専門用語で解説してくれることでしょう。

時代も地域も、物語の素材も違うのに、ミステリはひとつのジャンルとして成立しています。
ミステリを成立させるもの。
それは、「謎」が「探偵」によって「解かれる」ことです。

「解かれること」にはついては、それほどが振れ幅がないので、世の推理小説のバリエーションは、「探偵役」の設定と「謎」の種類で出来上がっているとも言えるでしょう。

ここで、ミステリの読者は大きくふたつに分かれます。
「謎」を解くことに情熱をかける“推理派”(勝手に命名しましたが、呼び方があれば教えてください)と、「探偵役」とその周辺の人間模様を楽しむ「キャラ読み派」です。
わたしは読むのは本格ものが多いですが、9割方キャラ読みで、アリバイとかトリックとかをきちんと理解するのは諦めています。
それでも十二分に楽しいのが、それぞれの作品のすごいところです。


さて今回は、ミステリマニアじゃないキャラ読み派のわたしがオススメする、推理小説7選です。
出してみたらほとんど本格派でしたが、ミステリのジャンルについても、ごく簡単に触れています。

1.コナン・ドイル『バルカヴィル家の犬』
本格ミステリ。旅行もの。
有名なシャーロック・ホームズの長編のひとつで、ホームズとワトソンが郊外のお屋敷にまつわる謎に挑みます。
ホームズがワトソンを助けに現れるシーンが、かっこいいと同時に、「これだからホームズは」とため息をつきたくなるのが最高です。

2.アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』
本格ミステリ。旅行もの。
こちらも有名な名探偵エルキュール・ポアロの長編のひとつ。
イスタンブルからヨーロッパへと走るオリエント急行内で殺人が起きる、密室殺人ものでもあります。
これほど美しい「謎の解き明かし」を、これまで読んだことがありません。

3.篠田真由美『原罪の庭』
本格ミステリ。密室殺人。
建築探偵桜井京介の事件簿シリーズのひとつで、京介のワトソン役のひとり、蒼の幼少期の事件の物語。
現代日本が舞台で、猟奇殺人や虐待というテーマも絡むため、社会派のかおりもします。
陰惨な事件なのに、根底が暖かいんですよ。あと蒼くんがかわいいので。

4.東野圭吾『名探偵の掟』
本格ミステリ。メタミステリ。
探偵とワトソン役の刑事が、「自分たちは推理小説の登場人物である」ことを知っているタイプのメタミステリ。
「本格ものあるある」を馬鹿にしたり嘆いたり罵ったりしながら、与えられた役割をこなしていくという一風変わった作品で、好きな人はとても好きなタイプです。
「密室殺人」て宣言する身にもなってくれ、と思っててもやらなきゃいけない名探偵、お疲れさまです。

5.有栖川有栖川『双頭の悪魔』
本格ミステリ。隔離された理想郷系。
江神二郎シリーズの3作目。
登場人物的には、大学生の青春ものとしても読めます。ええ、完全にキャラ読みです。
江神さんが(どうしても「さん」付けをしたい)助けに来てくれるシーンが最高にかっこよくて、そのシーンだけ何度でも読んでしまいます。

6.有栖川有栖『鍵のかかった男』
社会派。過去の謎系。
火村英生シリーズのひとつ。
火村シリーズは本格ものと社会派と両方あって、これはどちらかと言えば社会派。
かつ、「殺人!また殺人!!」とかではなく、過去を掘り起こしていく系という点で、ちょっと珍しいものです。
短編はトリックメインになりがちですが、長編なので火村とアリスのコンビのよさを十分噛みしめられます。

7.篠田真由美『センチメンタル・ブルー』
日常系と本格もの。
建築探偵桜井京介シリーズの、蒼君の高校生活をメインにした短編集。
もとが本格もののシリーズなので、殺人も含まれますが、日常系もいくつか入っています。
日常系の特徴は、謎が日常の些細なこと(殺人や犯罪に至らない)です。
あの小さかった蒼くんが、ちゃんと高校に行ってる……と親戚の子供の成長を見守る 視点で楽しめます。


以上、ものすごく偏ったおすすめ小説でした。
どうやらひとつの作家を掘り下げるタイプで、広く浅くとはならないようですね。

こうやって見ると、ホームズやポアロの時代は、探偵役は「職業探偵」でしたね。
それがだんだん、「頭の切れる学生」とか「大学教授」とかになっていきます。
それでもミステリマニアであるとか、専門が犯罪系であるとかの関わりがありますが。
そして現在は、「日常の困りごとを解決してくれる、身近な人」が探偵役として活躍しています。

この流れは実は、文学の「主人公」の変遷にも似ています。
神話時代は、主人公は「神」でした。
それが「半身半人」になり、「英雄」や「勇者」になり、「王族」「貴族」へ。
「特別な才能のある優秀な人間」になり、「普通よりできる人」になり、「普通の人」「落ちこぼれ」が、物語の主人公になるようになりました。

ミステリの「探偵」も、どんどん手の届く人になってきています。

ミステリの共通項は、「探偵役」が「謎」を「解くこと」です。

わたしたちは、「犯罪」や「やっかいごと」という謎を解いてくれるヒーローを、常に求めています。
ヒーローは、かつては「犯罪の専門家」「警察」でした。
「神父」だったこともあります。
そういう人が扱う事件は、ワクワクするけれど、一般人である読者には縁のないことです。
せいぜい、ワトソン役になれるかどうか、といったところでしょう。

それが今や、「近所のお店のお兄さんやお姉さん」が、平凡な人の困りごとを解決してくれるようになりました。
あるいは、あなた自身が「探偵役」になることも、あり得るのです。
次のヒーローは、あなたかもしれません。

ヒーローに助けてもらいたい願望と、ヒーローになりたい願望。
その両方を叶えてくれるのが、推理小説なのかもしれません。

それぞれのリンクは今度改めて貼りますね。お待ちください。

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