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アホウドリの真理子さんに聞いてみた2/4「アホウドリとお客さまの距離感」

「こんにちは。「ちょど研」研究員の巣内です。
前回は大石真理子さんの好きなブランドなど、パーソナルな視点から色々探っていきました。

ここからは、いよいよ「アホウドリ」の話。
アホウドリとユーザーの距離感について、探っていきたいと思います。アホウドリのブランドストーリーは、どんなものなのでしょう?

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最近のアホウドリのトピック

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巣内 では、ここからは「アホウドリ」とユーザーの関係について、お話を聞かせてください。

大石 はい。

巣内 最近アホウドリは、ドキュメントバラエティ「セブンルール」に出演したり、社歌をリリースしたり、Tシャツを販売されたりと、いろいろなトピックがありましたよね。

大石 Tシャツは、スタッフのひとりの息子さんが作ってくれて。それが、自分の顔をプリントしたデザインなんですよね。今高校一年生なんですけど、入学してすぐに入院しちゃったので、クラスの集合写真に自分が映れなくて。一人だけ黒板の前で写真を別撮りしたらしいんですけど、その写真なんですって。あのTシャツがほしいという人が結構いるんです。

巣内 かっこいいデザインですよね。まさか、スタッフの息子さんがデザインしていたとは。デザインが地で上手い人って、いますからね。

大石 コミュニケーションをデザインでとっている感じの子なんですよね。一応、販売するにあたってスタッフに確認したんです。「息子さんの顔載ってるけど大丈夫?」って。そうしたらいいよ、と言ってくれて。一応顔が隠れるように、文字を載せていますけど。

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(※素敵なTシャツ)


アホウドリのこだわり

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巣内 アホウドリの暖簾って、「ごはんとおまつりアホウドリ」って書いてありますよね。これって、アホウドリを知る上で重要な言葉でもあるなと思うんですけど、どういう思いで入ったんでしょうか?

大石 最初に一緒にアホウドリを初めた時は、私ともうひとりのスタッフの二人体制でやっていて。そのスタッフがご飯専任で、私はマルシェやイベントの営業のようなことをやってので、お互いの役割として「ごはんとおまつり」って入れたんです。

巣内 未だに、当初のイメージが残ってますよね。

大石 面倒くさがって外してない、というのもあるんですけど(笑)。実際うちって、毎日お祭りみたいな感じだな、と思っています。

巣内 食、エンタメ、地域など、アホウドリにはいろんな側面があると思うんですけど、アホウドリのこだわりは何でしょうか?

大石 料理のこだわりじゃないかもしれないですけど、なるべく無理がないように、とは最近すごく思ってます。飲食店って、大変そうというイメージが付きまとうのか、いつもみんな優しい言葉をかけてくれるんですけど、「私たちは大丈夫です!」って言いたいんです。「朝も早くて夜も遅いから、飲食店って大変でしょう?」とか「休みとかもないでしょう?」とか言われるんですけど、日曜祝日休みだし、全然大丈夫だよ、って。

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巣内 体力的にハードだというイメージがあるんですかね。

大石 でも、スタッフが人からそう心配された時に、「うち大変なんだよね」って言わせたくないし、「うちは大丈夫ですよ」って言ってほしい。自分の職場のことを、愚痴に転換しないと話せないようになるのが嫌なんです。経営者は、愚痴言いながら頑張ればいいんですけど、うちで働いてるスタッフが「大変な仕事を選んだ子」みたいに見られるのが嫌なんです。すごく稼げるとかではないけど、その代わり過剰な労働はしないというか。そこは気をつけてます。

巣内 その方が、パフォーマンスも向上しそうだし、それぞれの人生が充実しそうですよね。

大石 7:3っていつも思っていて。アホウドリのことを7やってくれているとしたら、3は自分のことができる余力があるといいなって。

巣内 前回の、器作家の池本惣一さんやSANZOKUさんのお話につながりますね。

大石 そうそう。仕事中に携帯を見まくる、とかはどうかと思いますけど、子どもの通う学校から電話がかかってきたら「すぐに出てきていいよ」と言いたいし、別の仕事を兼業してる子が「別件で電話来ちゃいました」と来たら「いいよ、話してきて」と言えるような。そうしていかないと、これから先、働いてくれる人もいなくなってくると思うし。

巣内 確かに、働く環境を整えるのは大事ですよね。

大石 フリーランスの料理人ってもともとたくさんいたと思うし、その方が効率もいい部分もあるんですけど、コロナ以降パーティーやケータリングの機会が激減したので、フリーランスの人は一気に仕事が減ってしまったんですよね。でも、例えばアホウドリに所属さえしていれば、その不安はないし。あとは、うちで働くことで、その人自身のセカンドキャリアにも繋がってほしいとも思っています。だいたいのことにおいて適当な私が、そこに関しては結構考えてやってますね。自分だけのアホウドリじゃないな、と。

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巣内 組織とか人のマネージメントの部分ですね。今はスタッフの方って、何人くらいいるんですか?

大石 私を入れて11人です。

巣内 サッカーチームですね。

大石 そうそう!私、宮本恒靖さんみたいな立ち位置なんですよ。でも、そろそろこのチームに監督がほしいなって、最近思っています。自分が監督になってみんなの配置を決めるか、私も含めてマネージメントしてくれる人がいた方がいいのか、考える時期だなって。みんながまだそんなに走れなかった時は、指示が簡単だったんですよ。子どものサッカーと一緒で、「ボールが飛んできたらとにかく前に蹴って」って言うだけでいい、みたいな(笑)。今は、みんながそれぞれ走れるようになってきたから、そうはいかなくなってきた。

巣内 面白いですね! でも、もし監督みたいな人が来たら、真理子さんは3割で新しいことをやりたくなりそうですね。

大石 そうなの! 最近動画をやりたいとずっと思っていて。商店街を一日歩いて、そこで買ったの材料でお弁当を作る企画とか、やりたいんです。

巣内 アホウドリっぽくて、面白そうですね。遊び心があって。

大石 そうなんです。あ、大事にしていることをあえて言葉に表すとしたら、そういう面白いことを考えたり、お客さまのことを考える余裕を、スタッフの心の中に残しておく、ということですかね。毎日忙しすぎると、お客さまのことを考えるゆとりがなくなっちゃうので、そうはならないように。

ユーザーの呼び名

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巣内 ブランドのユーザーは、そのブランドによって「お客さま」「ファン」「ユーザー」などそれぞれ違うと思うのですが、アホウドリでは何と呼んでいますか?

大石 「お客さま」って呼んでます。招かないから「ゲスト」でもないし、「お客さん」ってほどカジュアルな距離でもないし。みんな「お客さま」って呼んでる気がします。

巣内 アホウドリのお客さまって、どんな方が多いですか?

大石 うちは、社員食堂の運営もやっているんですけど、そちらのお客さまは、CGパースの会社さんと、学童を運営している団体さんですね。あとは、一番多く依頼していただくの、CM撮影や雑誌撮影の現場への仕出しとか。付き合いがまた改めて生まれてきたのは、お弁当を買いに来てくれるご近所の方たちですね。

巣内 ご近所の方と付き合いがまた生まれてきたというのは、コロナ禍、ということもあるのでしょうか?

大石 それもありますね。最近印象に残っているのは、出産をした方からの、一週間のご飯を作ってくださいという依頼でした。「おかずだけ買えませんか?」って問い合わせが来て、「やってないけど、どうしてですか?」って聞いてみたんです。そこで断らずに、つい聞いちゃうのが私なんですけど…。2週間前に子どもが生まれたんだけど、コロナで実家の親も呼べなくて、自分で準備した食事ではもう間に合わないし、赤ちゃんには添加物のないものを食べさせたいから、という相談だったんです。その人のことは、お客さまっていうよりは「大変なお母さん」って呼んでましたね。

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(※産後のお母さんへのサポートごはんの、ほんの一部)

巣内 エピソードが記憶されると、呼び名が生まれるんですね。

大石 そうですね。「あの優しいお父さん」とか。一口にお客さまと言っても、結構リピーターの方が多いから、エピソードを一個受け取ったり、キャラクターが見えてきたりすると、呼び名がついていきます。

アホウドリとお客さまの関係

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巣内 アホウドリのお弁当やご飯って、どんな人たちに向けて作っていますか?

大石 「働く人向けのお弁当」と言ってますね。仕事という意味だけじゃなくて、毎日身体を動かす人、と定義づけをしてます。

巣内 お客さまとのやりとりで、嬉しかったことはありますか?

大石 テレビの「セブンルール」に出てからは、結構嬉しいことが続いています。一度、娘さんが研修医として病院にお勤めで、コロナで大変で食べる暇もないけど美味しいものを食べさせたいと、わざわざ買いに来てくれた方がいました。「娘が食べたいと行ったから買いに来ました」って。明日も身体を動かさなきゃいけない人のためのお弁当、だとも思ってるから、嬉しかったです。忙しくなってきて、生きる気力が失せてくると、人ってまず食欲が落ちるじゃないですか。セルフネグレクトの入口が、どうでもいいやって、食べることをしないことだと思っているんです。だから、忙しい人が、アホウドリのお弁当を食べたいと思ってくれたことが、嬉しかったです。

巣内 疲れている人が明日も頑張れるような、気力になるようなお弁当ということですね。

大石 そうです。あと、最近嬉しかったのは、配送業者さんからお中元をいただいた時ですね。関係を築こうとしてくれていることが、嬉しかったなぁ。いつも事務的な関係で、電話先でしかやり取りしたことなかった人が、配送の車に乗ってきて初めてお会いしたことがあって、その日も嬉しかった。みんなでテンション上がりましたね。「あの◯◯さんですか!」みたいな。

巣内 仕事内での関係性が濃いですよね。それも、食だからなんですかね。

大石 社食とかも、コロナだしもう止めるって言われるかなと思ってたんです。でも、「食堂はいつからやってくれるの?」とか「食堂があるどうかで、出勤するかリモートにするか変わってくる」と言われた時も嬉しかったです。今のこの時期だと、外に出ることはリスクでもあるんですけど、それでも、会社に行こうというひとつのきっかけになってくれているのは、素直に嬉しいです。ご飯が美味しいから行きたい、っていう。

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巣内 お客さまとの関係性の話をたくさん聞かせてもらいましたが、アホウドリというお店を通じて、お客さまとどういう関係になりたいですか?

大石 親子!

巣内 (笑)。どっちが親ですか?

大石 私が親(笑)。基本は私、「食べなさい、ちゃんと!」みたいな感じなんです。社食もお客さまが固定だから、スタッフもみんな「◯◯さんは、今日魚食べたけど野菜全然食べてなかった」とか「今ダイエットしてるみたいだから、残したのかな」とか報告し合うんですよ。それって、親の会話ですよね。

巣内 あったかいですよね。僕だったら、自分が作ったら「残さず食べてよ」とか思っちゃいそうです(笑)。

大石 お母さんってね、残されると、怒るよりもくよくよしちゃうんですよ。「美味しくなかったのかしら」って。スタッフも、そうやって一個一個悩んでるんですけど、「お口に合わなかったかな」って考えること自体が、私は「いいじゃん、優しいじゃん!」と思うんです。

巣内 それでみんなが一喜一憂してるのが、すごくいいですね。それは、アホウドリのご飯は美味しいわけですね。

大石 スタッフの中には、「全部食べてくれなかったから、私のご飯はだめなんだ」という自己否定の方向に行きがちな人もいるんですよ。でも、人は結構気分で食べないこともあるし、「どうしたら食べてくれたかな」って考えること自体が、社食という寮母さん的な意味では正解だから、って伝えるようにしてます。その時点で仕事できてるんだよって。

巣内 優しい。絶対いいスタッフさんたちですよね。


お客さま向けの施策

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  巣内 お客さまに向けて、アホウドリで新しく始めようとしている施策などはありますか?

大石 最近ニーズがあるんじゃないかなと思ったのは、一週間くらいの作り置きをしてほしいと思う人は、結構いるんじゃないかなって。でも、今はコロナだから家にはなるべく来てほしくないわけですよね。だから、お店で作ってパッケージングして配送できたら、ひとつの仕事になると思うんです。飲食店だったら衛生面も安心してもらえると思うし。

巣内 さっきの、産後のお客さまみたいな形ですね。おかずだけストックとしてパッケージングして届ける、とか。アホウドリのご飯は卸とか配達とも相性良さそうですよね。

大石 多分コロナってしばらく収まらないから、家族も孤立していったりするじゃないですか。年長の親や、出産した娘に対して、遠く離れた家族が「ちゃんと食べてるかな」って心配する、そういう時の「贈り物としての日常食」というのが出てくるんじゃないかなって。アホウドリがお母さんの代わりをする、みたいなニーズがあるんじゃないかなと思うんです。遠くの親戚よりも近くの他人というけど、その近くの他人としてのベストパフォーマンスをやりたいなって。

巣内 その新事業は人が必要ですね…!多分、もう11人(笑)。

大石 でもね、働き手もだいたい想像できてるんですよね。40歳以上で採用を限定したら、絶対いい人が集まると思うんです。

巣内 なぜですか?

大石 アルバイトやパートの採用って、40歳を過ぎると急に職種が減るんですよ。ファミレスとかスーパーのレジ打ちとか、限られた仕事になってくる。でも、40歳から60歳くらいのアクティブな女性って、子育ても一段落して、セカンドキャリアの歩み始めの時期なんですよね。私が考える、食における「お母さん」の立ち位置って、家庭でやってきたことが強みに変わるから。そういう妄想はしてます…きっと実行したら一気に動き出しちゃうから。

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巣内 じわじわスタッフが増えてくスピード感が、いいんでしょうね。

大石 そうなんですよね。新規事業をやりすぎても、今いるスタッフも余裕がなくなるし。

巣内 以前、真理子さんと話した時に、「お弁当とか社食を効率化しすぎると、自分たちがやりたいことと離れていくから、そこのバランスが大事だ」みたいなことをおっしゃってましたよね。アホウドリのビジネスモデルが、基本的に「丁寧」だから、そこを仕組み化しすぎるとよくないのかなって。

大石 そうなんです。でも多分、うちが唯一仕組み化できるキーワードが、「一度仕事から離れた人をもう一度呼び寄せる」ことでもあるのかなって、最近思います。うちのスタッフって、もとはアホウドリのお客さまだった主婦の人が多いんですよね。それと同じように、やる気と能力のある人たちと、うちのやりたいことが合致して、もう一回アホウドリ作る、みたいなやり方が、唯一の方法かなと思ってます。AKB48の仕組みから、HKT48とかが生まれていったみたいな方式ですね(笑)。

巣内 そうやって、要町界隈が賑わってくるといいですよね。ありがとうございました!次回は、いろんなユニークな施策をやっている「アホウドリの企画の作り方」について聞いていけたらと思っています。

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ちょど研サムネ_2


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