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十勝清水にんにく〈北海道清水町〉

海外では中国、国内では青森県産が圧倒的なシェアを誇りますが
北海道、中でも十勝が「一大にんにく産地」だった時代があることを知っていますか?
かつての産地としての勢いを取り戻すべく2009年に、にんにく栽培を開始し、昨年10周年を迎えた清水町で、生産のこだわりから加工のギモンまで丸ごと教えてもらいました!

そもそも どんなふうに育つ?

収穫を2週間後に控えた畑を訪れると、初めて見るにんにくの葉が大地を埋め尽くしていました。
清水町蔬菜(そさい)振興会にんにく部会の部会長である、宮川司(みやかわつかさ)さんにお聞きします。
「栽培から11年がたち、技術は確立できていますが『良いものを作る』という面では毎年難しさがありますね。前年秋に種を植えてから、夏の収穫まで一度も土の中の状態を見ることができないので、その年の出来は掘ってみるまでわかりません」。

ビートやじゃがいも、小麦といった基幹作物がある中、次世代を担う高品質・高収入のブランド農産物として清水町が改めて着目したのが、にんにくでした。
他産地との差別化と循環型農業の取り組みとして、生産農家全戸が町内産有機肥料「しみず有機」を使用し、化学肥料に頼らない栽培を実践。
また農作業を進める上での点検項目〝十勝型GAP〟に則って、防除や施肥などを見える化し、安全・安心を守っています。

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収穫したにんにくを、1片ずつばらした鱗片が翌年の種になる

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十勝清水にんにくは有機肥料「しみず有機」を使い、元気な土で育てた“とれたんと”(※)の一品
※「とれたて」と「たんと(たくさん)」を組み合わせたJA十勝清水町の登録商標ブランド

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「家庭菜園での栽培も、にんにくの1年(ページ下)を参考に」と宮川さん

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品種は“福地ホワイト”。JA十勝清水町が生産する優良種子(ウイルスフリー由来種子)で栽培

十勝清水にんにくの1年
8月 土づくり
9月 種の植え付け(JAで管理する種を、生産農家に供給)
10月 出芽
12〜3月 越冬(雪が布団代わりとなり、しばれることなく栄養を蓄える)
4月〜6月下旬 成長(5月頃、5〜6片に分球)
6月下旬〜7月下旬 収穫

どうして一年中流通できるの?

十勝清水にんにくは、清水町、足寄町、池田町の3JAで生産を手掛けています。
6月下旬〜7月下旬の約1カ月間、各町で収穫の最盛期を迎えますが、すぐに出荷できるわけではありません。重要なのが、日持ちに欠かせない〝乾燥〟の工程です。
選果・加工施設〝十勝清水にんにくファクトリー〟に一連の設備が揃っていると知り、お邪魔しました。

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選果や加工、黒にんにく製造も行うJAの施設

生産者の方々は各々自前のハウスで、ここでは専用庫を使い35℃で1カ月乾燥。
その後、生産者さんから運ばれてくるにんにくと合わせて、乾熱処理を行います。
50℃弱で約12時間、熱を加えることで病気を防ぎ発芽が抑えられて貯蔵性が高まるそう。
処理を終えると、冷蔵貯蔵庫へ。
作物は収穫後も呼吸を続け、時間が経つほど呼吸数が増えるため鮮度が下がりますが、5年前に導入した新しい貯蔵庫は、空気調整により作物の呼吸を最小限に抑制。
マイナス2℃の庫内で鮮度低下を抑え、安定品質のにんにくを年中出荷しています。


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しっかり時間をかけて乾燥させることが、保存性を高める重要なポイント

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1カ月乾燥後、乾熱処理設備に移して半日加熱。出荷までは冷蔵保存する

ギュイーン!!!シューッ!!!
奥から木工場を思わせる音が聞こえてきます。
出荷に合わせ、貯蔵庫から出したにんにくの最終仕上げ。
根を切り、専用の研磨機でお尻の部分を整え、強力なエアで土の付いた皮を取り除くのは全て手作業。
ついに現れました!私たちが口にしている真っ白なにんにくです。
ここまで、ほぼ1年。
また、他の作物は一粒の種から10倍、100倍と収穫できますが、にんにくは一つの球から5〜6個しか採れない鱗片を種にして育てるため、生産効率が良いとはいえず収穫後の手間暇も考えると…。
「大変ですね」と、思わず心の声が口に出てしまいました。
すると宮川さん、「最初は右も左もわからなくて苦労だらけだったけど、部会の19人全員が同じ苦労を味わいながら踏みとどまって、やめずに作り続けてきて。みんなで青空教室を開いたり情報交換したり、未知なるものだから『助け合って頑張ろう!』みたいな絆があるんですよ。それに」。
それに?
「新しい挑戦って大変だけど、楽しいんだよね」と言って笑いました。

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サイズはS、M、L、2Lの4規格。
白く丸く、一片一片揃っているものが上級品

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2010年度わずか1.4tだったにんにくの出荷量は、2018年度実績で97tと約70倍に。さらなる増産を目指している

謎めく黒にんにくの色は?

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ズバリ!黒の秘密は「高温多湿な環境での熟成」にあります。
JA十勝清水町の強みと言えるのが、自社で〝黒にんにく〟を製造していること。
早速、熟成中のにんにくを見せてもらおうとしたところ、熟成庫に入ることができるのは職員の中でも専任者のみとのこと…。
研磨機とエアで仕上げた真っ白なにんにくを、65〜70℃の庫内で寝かせること30日間。
温度と湿度の働きで熟成が進み、徐々に色が白から黒へ変化していきます。
庫内から出してさらに2週間、自然熟成することにより臭いや辛みが抜けて甘みがアップ。
生産から加工まで、JA十勝清水町の一括管理の下、化学的な添加物を一切使わない〝北海道十勝熟成黒にんにく〟の完成です!

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白にんにくに比べ、抗酸化物質とポリフェノールを多く含む発酵食品(写真右230gパック1980円/税込2138円)

黒にんにくは、白いにんにくにはない独特のむっちりした食感と甘さがあり、そのまま食べる方も多いですが初級編としては料理の隠し味に使うのがオススメです。
使い方はあめ色玉ねぎのイメージ。
中華系の炒め物やパスタ、カレーなど加えるだけでいつもの味に旨みとコクが増しますよ。

町一体となって皆さんが目指しているのは「北海道でにんにくといえば、十勝清水にんにく!」。
その目標に向けた次の一手は、栽培面積の拡大と作業効率の向上です。
10年という節目を越え、栽培11年目に突入。
「大変だけど楽しい」が、この先まだまだ待っています。


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\全員ごはんが止まらない!にんにく入り三升漬け/
宮川さんは奥さん、長女&3兄弟の6人家族。
毎年仕込む手作りの三升漬けは、一般的なにんにくナシのものもストックしていますが、にんにく入りの方が早くなくなるそう。
スライスして市販の三升漬けに加えてもOK。
また、オリーブオイルで香りを立たせた「鶏肉と野菜のアヒージョ」も宮川家の定番。


取材・文・編集/青田美穂
撮影/石田理恵

十勝清水にんにくは帯広・釧路地区を中心としたコープさっぽろ店舗でお求めいただけます。
また、北海道十勝熟成黒にんにくは全道のコープさっぽろ店舗(一部を除く)、8月第4週の宅配システムトドックでご案内いたします。

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